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すくみ足の自動検出:ウェアラブルデバイスはこう使われる

▼ 文献情報 と 抄録和訳

長短期記憶ニューラルネットワークを用いた足底圧データからのパーキンソン病における歩行のフリーズの予測と検出

Shalin, Gaurav, et al. "Prediction and detection of freezing of gait in Parkinson’s disease from plantar pressure data using long short-term memory neural-networks." Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation 18.1 (2021): 1-15.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] すくみ足(Freezing of gait(FOG))は、進行期のパーキンソン病(PD)における歩行障害であり、転倒リスクの増加やQOL(生活の質)の低下と関連しています。すくみ足は、予測・検出システムを用いて、視覚や聴覚などの外部からの介入によって軽減・防止することができる。すくみ足の検出・予測に関する研究の多くは、慣性計測ユニット(IMU)や加速度計のデータに基づいて行われていますが、足底圧のデータはすくみ足エピソードに特有の微妙な体重移動を捉えることができる。すくみ足の検出・予測には、様々な機械学習アルゴリズムが用いられていますが、センサーデータのような時系列データを扱う場合には、長短期記憶(LSTM)の深層学習手法が有利。本研究では、LSTMを用いて足底圧データのみからFOGを検出・予測できるかどうか、特にリアルタイムウェアラブルシステムでの利用を想定して検討した

[方法] 足底圧データは、PDの参加者11名があらかじめ定義されたすくみ足を誘発する経路を歩いた際に、圧力を感知するインソールセンサーから収集された。すくみ足が生じた場面にラベルを付け、16の特徴を抽出し、データセットのバランスを取り、正規化(z-score)を行った。結果として得られたデータセットは,長短期記憶ニューラルネットワークモデルを用いて分類された.検知用と予測用にそれぞれ別のモデルを学習した。予測モデルでは、すくみ足以前のデータを対象クラスに含めた。モデルの評価には、Leave-one-freezer-outクロスバリデーションを用いた。また、モデルの特異性を判断するために、すくみ足以外のすべてのデータでモデルをテストした。

スクリーンショット 2021-12-03 4.31.22

✅ 図. 足底圧-Scanシステム:a 単一の足底圧力インソールセンサー、b 靴に装着したセンサー、c 足底圧力サンプルフレーム(kPa)、紺色は圧力ゼロを示す。

[結果] 最も優れたすくみ足検出モデルの平均感度は82.1%(SD 6.2%)、平均特異度は89.5%(SD 3.6%)であった。非活動状態(立っている状態)のデータを無視して、活動状態(寝返りや歩行)のみでモデルを解析した場合、特異性は93.3%(SD 4.0%)に向上した。このモデルは,フリーズエピソードの95%を正しく検出した.最良のすくみ足予測法は、クロスバリデーションにおいて、平均感度72.5%(SD 13.6%)、平均特異度81.2%(SD 6.8%)を達成した。

[結論] 実験室で収集したすくみ足データをもとに、足底圧データをすくみ足の検出・予測に利用できることが示唆された。しかし、すくみ足の予測性能を向上させるためには、より多くのすくみ足経験者を対象としたトレーニングなど、さらなる研究が必要である。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

受診行動や健診行動における、1つのパラドックスがある。
それは、「受診・健診してほしい人ほど、受診・健診行動が少ない」だ。
すなわち、健康に対する意識が低い人、老化によりヘルスリテラシーが下がった人は、自らの状況を検知したり、健康情報にアクセスしたりする行動を取ることが少なくなる。

✅ ヘルスリテラシーとは?
対人的な場合であれ、書物やインターネット検索の場合であれ、健康や疾病について、情報の入手から活用までの一連の行動にはそれなりの技量が必要です。そのような技量、能力をヘルスリテラシーと呼んでいます。リテラシーという言葉は、もともとは、簡単に言うと、文字の読み書きの能力を指します。そこでヘルスリテラシーを簡単に言うと、「自分にあった健康情報を探して、わかって(理解し、評価した上で)、使える力」ということになります。
>>> 参考サイト

ウェアラブルデバイスが拓く未来の1つは、以上のパラドックスを解消しうる。
これまで、受診や健診に至る事前に「自ら症状に気づき、不安を持つ」というプロセスが必要だった。
それを、ウェアラブルデバイスがやる。
「ウェアラブルデバイスが症状に気づき、アラートし、受診行動を迫る」というプロセスに置き換えられる。
そのことによって、健康への意識が低い人、高齢者など、取りこぼされがちだった人が救われることになる。

だが、手放しで喜ぶことはできない。
これが進むことで、補助輪をつけた自転車がバランス需要を奪うように、自動運転技術が人間の運転技術を不要にするように、ウェアラブルデバイスの自動検出は人間の危機感知能力や意思・意欲への需要を下げることになる。
一言でいえば、人間の能力が下がる。#ララバイエフェクト
利便性が上がるほど、自動化が進むほど、人間の能力が下がってゆく。
大きな、大きな、パラドックス。
パラドックスの解消が、パラドックスを産んでいる。
良いことと、悪いことは、表裏である。

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