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慰めとランドリー


深夜2時。


あなたの地元で、ごうごうと音を立てて回るコイン式の洗濯乾燥機を。すっぴんでもぬけの殻のように眺めている女がいたら、それはわたしかも知れない。


ぐちゃぐちゃにネットにつめた衣服が、窮屈そうにみえる。コインランドリーに来たのは、実は初めて。


わたしの放り投げた洗濯物たちが、ガタゴトと大きな音を立てるたびに不安になる。服入れ過ぎたかな、なにか変なもの入れちゃったかな。


今日はすっごく嫌なことがあった。


というか、わたしが、誰かを嫌な目に合わせてしまった。


形としてこの世に残しておきたくないことだから、あえて文字にはしない。でもわたしは、決定的に、今、傷ついている。



だからといって、誰かに心配されたいかまってちゃんな年齢でもとうにない。わたしは大人だ。大人だとい言い聞かせる。自分の中で「消化」する時間を作りたくて、ここに来た。うわやっぱ入れ過ぎて洗濯ネット破れてるし。なんかわたしのランドリー変な音しちゃってるんだけど大丈夫かな。


耳にはめたイヤホンから流れる音楽はずっと同じ曲。考えごとをしないために聴き始めた音楽なのに、書き始めたら、思考の邪魔にならないように普段から聞き慣れたものを身体が自然と求めてしまっていた。


性別関係なく、類は友を呼ぶはほんとだと思う。恋人も親友も、同レベルの人が常に隣にいるとしたら。わたしはきっと昔よりずっと変わることができたと思っていたのに、「他人」という鏡を介してみる自分が、とっても辛かった。わたし全然変われて無かったのかな。絶対に変わってやると決めたあの日からの努力は全て水の泡で、変化したような気にだけなって、結局底辺で足掻きつづけていただけだったのかな。



期待と幻滅がセットなことなんて、義務教育では習わなかったよ。




選んできたつもりにだけなって、自惚れていただけだったとしたら。それはわたしにとって、一番恐れていることでしかないのに。



明日が来るのが、こわい。




無機質なランドリーの音の中で、今はただ、太陽が昇るまでのわずかな時間をあてもなく彷徨っている。




今日という日まるごと。ネットに入れてびちゃびちゃになるまで洗濯できればいいのに。




宵の隙間は貴方の側に。

2020.8.8

suu









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