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神聖かまってちゃんとかけて大森靖子と問う。その心は?|鯨records

コロナウイルスの影響で様々なライブが中止になって、ふと思ったこと。

最後に行ったライブなんだったっけ。

わたしが最後に行ったライブは、バンド神聖かまってちゃんと大森靖子を中心としたアイドルグループZOCの対バン、パーフェクトミュージックの主催イベント"impulse × impact"であった。

2月23日に赤坂BLITZで行われたこのライブは言わずもがな最高だった。そして、この二つの音楽グループが表現は異なるものでありながらどこか共通するメッセージを訴えているように感じた。なんとなく、この界隈に明るい人であれば【メンヘラ枠】で纏められてしまいそうな音楽性ともいえるが、たった5文字ではこの2つのグループの爆発力を抑え切ることはできない。

【はみ出しもの】が作った音楽の行方

神聖かまってちゃん・ボーカル“の子”の「お前ら〜〜〜!!!ノーコー接触しようぜッッ」というなんともこのご時世ギリギリな煽りに、フロアの熱は最上級に。では果たして神聖かまってちゃんとはなんぞ?という方はぜひ他の方の記事も読んでみてほしい。

の子は整った顔はしているが、小柄で、かなり、挙動不審だ。
それも一因であったか、の子は中学校時代にかなり壮絶ないじめを受けていたようである。高校は中退。引きこもり、23歳までニートだったそうだ。くわえて躁鬱病・境界性人格障害を患っている。
そういうバックグラウンドのある人間なのだ。
の子は、苦しみと卑屈が根底にある表現者だ。

苦しみと卑屈が根底にある表現者」という言葉はまさにの子そのものを本当にピッタリ現した言葉だと思う。いじめや人生への絶望の負の部分を、綺麗な色でなくても、パレッドの全ての色を使って表現した、そんな曲を神聖かまってちゃんは創り出す。

わたしと神聖かまってちゃんの出会いは、高校生の時に好きだった男の子がバンドで「ロックンロールは鳴り止まないっ」をカバーしていたことが始まりだった。どこか切ないイントロのシンセサイザーの音は、ステージを見つめていた当時のわたしの青春そのものである。

▽ロックンロールの熱さと、少年時代特有の儚さが融合して出来上がった、神聖かまってちゃんのキラーチューン。

本題に入る前に、大森靖子率いるZOCについても少し触れたい。まずは公式の出している各メンバーの紹介コメントを見てほしい。

藍染カレン
毎夜ぼっちで踊ってた熊本のワンルーム・ロンリーダンサー。 学生時代の2年間、細く長い手足、美しい顔を誰にも見せず真っ赤な部屋で暮らし、ようやくアイドルに。

​戦慄かなの
自らの実体験を元に児童虐待に対する NPO 法人「bae(ベイ)」を立ち上げ、コラムを書き、華麗に踊る、少年院帰り。 各方面でブレイク中のファビュラスドールフェイス。

香椎かてぃ
治安担当。絵を描くことと踊ることに人生を救われた、孤高の横須賀バカヤンキー。 絵は「ニューヨーカーの挿絵のよう」と評されるハイセンス。

巫まろ                    10年間アイドルを貫き、人生を音楽に捧げ、ぁまのじゃくでキャッチー、めんどくさくてわかりやすい乙女心と向き合ってきたマロテスク・シンデレラがZOCのニュープリンセスとして降臨。


西井万理那
現在活動休止中の二人組ユニット「生ハムと焼うどん」として、「完全セルフプロデュースアイドル」をうたい、2016 年に は誰もが無理と笑った 3000 人規模の TOKYO DOME CITY HALL ワンマンライブを成功させる。 その後、活動休止を発表。
栄光と挫折を経験し、常識にひれ伏さない女。ジャニオタ。

特に戦慄かなのは、【少年院アイドル】として深夜番組にマツコデラックスをはじめとする有名人と出演するなど、地上メディアでも活躍しているのでみたことある方も多いのではないだろうか。そして最後に、共犯者・大森靖子である。

共犯者 大森靖子
"超歌手"を自称し、女の子のややこしい感情を丁寧に"かわいい"として肯定する歌を作り歌い続けてきたシンガーソングライター。ZOC及びZOC全楽曲の創造主。
つんく♂・TKを敬愛し、プロデューサー、メンバー、同志を意味する“共犯者"としてZOCの支配領域を拡張してゆく。

ZOCはシンガーソングライター・大森靖子を中心としたアイドルグループであるが、大森靖子の「プロデュース」という形をとっていないアイドルグループである。

個性豊かなメンバーのZOCであるが、歌う曲もさすが大森靖子作曲だけあって、【可愛い】だけじゃない。

チュープリ 撮りたいな
ネットで炎上しちゃうかな
有名になったとき
彼氏がいたら ヤバイかな           きれいに生きてなきゃ
応援してもらえないのかな
黒歴史上等な私じゃちょっと
ヤバイかな
あ ああ あいどんきるゆー
年の差ある君でも
どこかは私に似てる んでなんか
許せないとことかあったとしても
あ ああ あいどんきるゆー          あ ああ 全部好きだよ

黒くてかわいい、そしておじさんたちにもしっかりハマる(笑)。「彼氏がいたらヤバい」は確かにアイドルの一般常識だけど、ZOCならなんでもありそう。アイドルとしての計算と本人たちの元々の個性が、いい方向に絡まって一つの完璧なエンターテインメントとして成り立っている。大森靖子、恐るべし。

わたしはZOC/大森靖子と神聖かまってちゃんは「等身大の若者」の象徴となる音楽性を持っていると思う。

最近の曲で言えば、神聖かまってちゃんなら「るるちゃんの自殺配信」や「毎日がニュース」、ZOCの「ヒアルロンリーガール」は美容整形についての歌であるが、大森靖子「GIRL'S GIRL」も同様である(ZOCはライブで大森靖子の楽曲を歌うこともしばしばある)。

神聖かまってちゃんやZOCの描く「あたし」はいつも何かと闘っている。それは環境であり、自分自身のことであり、孤独ながらその不満に満ちた目でじっとこっちを睨め付けてくる。それは曲の届け手のメッセージであるとともに等身大のわたしたちでもある。あるいは、過去の、あるいっときの自分が心の隅から引っ張り出されたファンもいるに違いない。

「あたし」はいつも何かに怒っている。そしてその怒りは、若者特有の、自己の成長に対してプラスに働く怒りである。その怒りを、わたしたちは持ち続けているか、過去に経験しているかのどちらかなのではないだろうか。

非国民的ヒーロー

そんな神聖かまってちゃんと大森靖子がコラボレーションした曲がある。お互いの自宅を舞台にした映像で、それぞれの生活が入れ替わる設定だ。過去に神聖かまってちゃんのMVで使われたロケ地も多数登場している。

僕の部屋だけバグってる
夜も昼もうまく来ない
君を太陽にして無理矢理起きてる        だけどね 君が努力しちゃったら
二度とね 僕じゃ届かなくなっちゃいそうだし   目つき悪くて惨めで no no no
本当は誰も wow wow wow
傷つけたく ないだけさ
僕は何もできないかな

「非国民的ヒーロー」は大森靖子のyotubeチャンネルで2016年3月に公開された。の子にレコーディングを申し込んだ大森靖子に宛てて、の子が送ったデモのタイトル「非国民的アイドル」をの子に宛てた歌詞にするべく「非国民的ヒーロー」に変えたそうだ。

大森靖子は当時のインタビューでこう語っている。

の子くんが自分の部屋で廃人をやっているところを書き写しただけというか。「自分のことを入れよう」なんて思わなくても、の子くんのことを書けば勝手にわたしの感じも勝手に入って、ちょうど良くなると思ったので。

ちなみにの子が大森靖子に宛てた「非国民的アイドル」はこんな感じ。

君をそんなに愛せない
生き方まるで分からない
8月の中で考えていたこと
夢は I don't know 世代
つまりそれすら分からない
8月の中で考えていたこと            いいよね!君はまつげも長いし
いいよね!君は凄くやってけそうだし

お互いのことをどう思っているのかが薄々滲み出ているところが読んでいて楽しい。非国民的な救世主の起こした革命に、今まで何人の人が救われてきたことか。

一日も早く、彼ら、そして彼女たちの声が、あるべき場所で、求める人のところに、届く日常が戻ってきますように。

久々の休日なので、今日は夜ご飯をちゃんと作ります、suuでした。

2020.5.20

suu

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