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今宵、行きつけのあの店で

行きつけのお店って、みんなあるのかな。あるのならば、聞きたい。行きつけのお店が、変わっちゃう時ってどんな時なのか。わたしは変わってしまった。この街に来た理由になっていたくらいに好きだったお店に、ついに行かなくなって4ヶ月が経つ。いまは、また違うお店に通っている。そんな話を、今日は、その新・行きつけのお店で書いている。


わたしはもともと、とあるbarにハマって、この街に来た。というか、bar通いの末にハマった、4つ上の男との恋愛のために。

もう4年も前の話になる。そしてこの恋は、全然良い思い出じゃ無かった。でも、当時のわたしには確かに必要で、そのご本人と縁が切れても、わたしはそのbarに通い続けた。


そこの常連のメンバーも少しづつ変わって、お店のコンセプトも少し変わった。そして何よりわたし自身が一番変わったんだと思う。誰かと揉めたわけでも、お金が急に厳しくなった訳でもないのに。わたしはもうあのお店にいくことはないだろうと、一人で感じている。


あの時、わたしが必要としていた言葉は、今のわたしが必要としている言葉ではない。だから、それを与えてくれる人も空間も、異なるものになってしまった。4年の月日で培った関係を失うのは寂しいが、わたしは自分の居場所を自分で認知できるくらいには成長した。


行きたい場所が変わった。

そのカフェは、オーナーであるお姉さんの気分で開かれる。基本毎日営業していて、カフェなのにディナータイムから日付が変わる頃までが基本の営業時間だ。小さなカウンターと、3つのテーブルだけが置かれた小さな店内をふんわりと照らすオレンジ色の灯り。正直、店内が混み合っているところはあまり見た事がなく、ただわたしにとってはそれがまた良かった。

以前、仮病を使って会社を初めておサボりした日に来たのもここだった。



わたしは、このカフェの存在を世の中で二人にしか教えていない。一人は替えの効かない親友と、もう一人は恋人。だから、このカフェに来る可能性のあるわたしの知り合いはわたしを傷つけない。実家以外の、絶対的安全地帯。大好きな場所。


わたしのイチオシはチーズケーキだ。もともと、そんなにチーズケーキには興味がなかったのだが、ここのチーズケーキは格別だ。食べられる宝石。少し固めで、どちらかと言うと甘さ控えめ。そのぶん、添えられたフルーツのコンポートが絶妙なバランスで糖分を補ってくれる。死にたくなるほど悲しいことがあって、食欲がなかった日には、わたしはここのチーズケーキを食事にしたくらいだ。

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ひとは、必要な時に必要な場所に呼ばれる。それは運命の導きで、人だけでなく場所と出会う瞬間でもある。光の透け方や、音の響き、匂い。全部がひとつの束になって、貴方のことを、きっと待っていた。だから、今いる場所--それは仕事でとか自分の自由意志で選んで向かっている場所じゃないかもしれないけれど--と貴方は強い縁で結ばれていて、例えば誰かのたったひとつの言葉とか、そんな些細なことが。貴方との出会いを求めていたのかもしれない。それでもその何かのために、貴方は引き寄せられて、そこに居るのだ。だから、自信を持ってそこにただいるだけでいい。居場所って、そういうものだと思う。










2021.01.11

すなくじら














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