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3月に読了した本の紹介〜後編〜

こんにちは、砂肝です。

前回の記事に引き続き、3月に読了した本との経緯について語りたいと思います。

6. 安部公房『カンガルー・ノート』

6冊目は、安部公房『カンガルー・ノート』。

朝起きると脛にかいわれ大根が自生していた男が、診察してもらいに病院を訪れるが、医者によって自走ベットに括り付けられ、そのまま坑道や賽の河原など、冥府を巡る旅をする物語。ブラックユーモアに溢れた安部公房最後の長編。

読むに至った経緯

カミュ「異邦人」を続けて2回読んだ後だったので、気分としては漠然と日本の小説を読みたくなっていました。なかなか決めれずに迷っていると、以前大学の先輩に安部公房作品のオススメで本書を教えてもらっていたことを思い出しました。

「砂の女」「箱男」などを読み、安部公房の世界観が私に合っていることはおおよそわかっていましたが、あらすじに書かれていた「かいわれ大根が脛に自生した男」というパワーワードに意識を持っていかれ、内容を吟味せずにその勢いで読み始めてしまいました。読み終えた感想としては正直なところ、物語の展開が前衛的過ぎて、作品のなすがままに振り回されてしまった感じがします。読んでる自分も自走ベッドに括り付けられて、旅をさせられているような心地でした。今度読む時は、作品に引きずられっきりになるのではなく、『死』というテーマを意識した上で、読み返してみようと思います。

7. 辰濃和男『文章のみがき方』

7冊目は、辰濃和男『文章のみがき方』。

よしもとばなな や 村上春樹など様々な作家の文章論などを引用し、著者自身の経験も交えて、良い文章を書くための秘訣を語る、実用的なアドバイスに富んだ一冊。

読むに至った経緯

この本はBOOKOFFで偶然出会いました。ちょうどその頃からブログ的なことを始めたいなという思いが芽生え出していて、そのためにはある程度の文章力をつける必要がありました。そこで本書を見つけたのですが、文章力を向上させたい私に「文章のみがき方」というタイトルは魅力的で、安易に飛びついてしまいました。しかも100円だったので。結果としては、その安直な行動は間違っていませんでした。この一冊で、上手い文章を書く作家、文章家にたくさん巡り会うことができ、これからの読書の幅も広がりました。

8. フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

8冊目は、フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』。

世界大戦によって汚染された未来の地球で、賞金稼ぎのリックが火星から逃亡してきたアンドロイドを狩る物語。「人間とは何か」という哲学的な問いを考えさせてくれる海外SF小説。

読むに至った経緯

私の好きなアニメの一つに「PSYCHO-PASS」という作品があります。登場人物同士の会話の中で、著名な哲学書や文学作品の言葉がよく引用されていて、本書はそこで引用されていた作品の一つです。槙島聖護という特に好きなキャラクターがこの作品を引用していたので、当時中学生だった私はすぐに影響され、本屋に直行しました。それ以来、本書は私の愛読書です。今回読み直したのは、noteを始めたことがきっかけです。初めての記事を投稿するなら、愛読書の紹介記事にしたいなと思い、久しぶりに本書を読み返しました。

以下に本書の書評記事を載せておくので、良かったら読んでみてください。

9. 平野啓一郎『私とは何か』

9冊目は、 平野啓一郎『私とは何か』。

人間の基本単位を「個人」から「分人」へと捉え直すことで、対人関係などの悩みに新たな視点を与えてくれる一冊。

読むに至った経緯

平野啓一郎「空白を満たしなさい」を読んで、著者が提唱する「分人主義」という考え方をもっと知りたくなったので、本書を購入しました。小説を書くことと向き合いながら構築されていった著者の思想を、この一冊で体系的に知ることができます。シンプルなのにハッとさせられるような考えがたくさん紹介されていてオススメです。最近とても推している作家さんでもあります。

本書も以前に書評記事で紹介しているので、良かったら読んでみてください。

10. フランツ・カフカ『変身』

10冊目は、フランツ・カフカ『変身』。

ある朝突然一匹の巨大な虫になってしまった男とその家族の話。

読むに至った経緯

本書は以前にも読んだことがあったのですが、当時は読んでも文字の上を視線が泳ぐだけで、あまり印象に残りませんでした。けれど、最近カミュ「異邦人」を読んで、不条理文学というジャンルを私が好むことに気づきました。カフカもそれに分類されるそうなので、もう一度挑戦してみたくなり、再読しました。今回は以前とは違って、じっくりと味わうことができましたが、漠然と何かを掴んだだけで上手く言語化できそうにありません。読むたびに捉え方が変わりそうな作品なので、これからも末長く付き合っていこうと思います。

最後に

3月は10冊の作品を読むことができました。正直言うと、もっと少ない冊数をゆっくりと深く読み込みたいのですが、新しい物語や知識を求めてしまう好奇心にはどうしても抗えず、色々と読んだことのない作品にも手を出してしまいました。じっくり読む再読の作品とさらりと読む初見の作品を、毎月半々で摂取するのが良いのかもしれません。

ちなみに最近は、谷崎潤一郎「痴人の愛」を読了して、その文体の虜になってしまったので、そのまま二回目をじっくりと読み込んでいます。この感動を熱く語りたいので、読み終えたらまた記事にまとめて投稿しようと思います。

砂肝でした。

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