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読書の旅|日記|2022/3/14

三月十四日(月) 曇り時々晴れ

読書を思う存分楽しむ一日の始まり。

河原町まで電車で向かう。
今日の荷物は本二冊とフィルムカメラ。

まずは丸善京都本店に立ち寄る。大型書店に行くと読みたい本が次々と増えて困る(困らないけど)。ちくま文庫「梶井基次郎全集」を買いたくなったが付箋だけで我慢した。地下二階では河原町地下古本市が催されていた。二週間前にも訪れたが並べられている本が一新されていて全ての本を一つずつチェックする羽目になった。小林秀雄全集が各巻300円で売られていてここでも本を買う衝動を抑えるのに苦労した。

丸善を堪能した後は、丸太町にある「月と六ペンス」というブックカフェに訪れようと北上した。しかし京都市役所前あたりで今日が定休日であることを知り、一旦鴨川に向かう。あまり天気が思わしくなかったが、途中晴れてきたため川沿いに腰をおろし、読書に耽ることにした。トーマス・マン「トニオ・クレーゲル」を読んだ。鳥の囀りや川のせせらぎに身を包まれながらする読書は格別で少し微睡んだ。ただ今日はやけに川が汚かった。水は茶色く濁っており、ペットボトルやサッカーボールなどがどんぶらこと流れてきた。それにも関わらず鴨たちは和気藹々と泳いでいた。

鴨川沿いから少し逸れた細い道を歩いていると桜が咲いているのを見つけた。今日の暖かさをより一層感じさせてくれるような鮮やかな桃色。持ってきたフィルムカメラで夢中になって撮る。しばらくして後ろを振り返ると、次に撮りたい人たちで軽く列ができていたので、そそくさと逃げた。

せっかく丸太町通りまできたので、以前から行きたいと思っていた「誠光社」を訪ねることにした。ここは本のセレクトショップみたいなところで、店内は本好きにはたまらない幸せな空間が広がっていた。見渡す限り興味をそそられる本だらけ。そして本の並べ方がとても面白く、いつまでも眺めていられる。本との一期一会を楽しむのに打ってつけの本屋だ。僕はここで柿内正午「プルーストを読む生活」、澁澤龍彦「快楽主義のための哲学」、ロラン・バルト「テクストの楽しみ」に心を惹かれた。一時間ほど探索して、結局武田百合子「富士日記」の上巻だけを買うことにした。レジで店員さんに「上巻だけでよろしかったですか?」と確認され、危うく「やっぱり全巻買います!」と言いそうになったがなんとか堪えた。

そのまま鴨川を下り、読書をするため「六曜社」に立ち寄る。ブレンドコーヒーと煙草で読書に集中する状態へと精神を調律する。先ほど買った「富士日記」を紐解き、武田百合子の文章に意識を溶け込ませた。読んでいて、人の日記を読むことが楽しいって不思議だなと思った。

今日は本のことだけで頭をいっぱいにできる幸せな一日だった。今日のような日が定期的に過ごせれば、それだけで生きている価値があると思えるほどによかった。帰りはマイルス・デイヴィス「Kind of Blue」を聴きながら歩いた。今日みたいな気持ちの良い夜になんだかしっくりときた。

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