『Life work of Akira Kurosawa黒澤明のライフワーク』で黒澤監督の仕事ぶりを見るにつけ、私は復活した。だから、この映画を世界中の人に見せて元気になってほしいと思った。
#映画にまつわる思い出
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イギリス製リメイク映画の公開で再注目されているのが、黒澤明監督作品の『生きる』だ。そのリメイク版『生きるliving』はまだ見ていないが、日本映画専門チャンネルで『生きる 4K 修復版』を見なおした。
改めて感心したのが、台詞ではなく映像で物語を語っていた点だ。これぞ映画というシーンがてんこ盛りだった。
特に主人公が被る帽子と、役所をやめた女の子が作った白いうさぎのおもちゃが語りかけたものは多い。
主人公の渡辺は、余命半年だと悟った後で、自分の生き方を後悔する。30年皆勤で務めた役所では何もしなかった。だから、今痛むのは胃がんの胃ではなく、胸だという。
残りの半年をどう生きるべきか分からずに悩んでいるという。
毎日おもちゃ工場で働くことを楽しむ若い女性に元気をもらう。だがその理由が分からない。
「君を見ていると、胸のあたりが熱くなる。それはなぜか?」と尋ねる。
「私は毎日こんなおもちゃを作っているだけよ。ただ、これを作っていると日本中の赤ん坊と仲良くなった気がするの。課長さんも何か作ってみたら?」
それを聞いて「もう遅い」とうなだれる渡辺。
「いや、まだ間に合う。その気になれば、まだやれる!」
この時背後でハッピーバースデイの合唱が始まる。その歌声は、一度死んだミイラであった渡辺の復活を祝うかのようだった。
このシーンを見たときに、私は『乱』の現場で耳にした、フランス人ジャーナリストの質問に黒澤監督が回答した時を思い出した。
「監督は『乱』が最後の映画だとおっしゃっているが、映画を撮らなくなったら、どうされるのですか?」
黒澤監督は「生きてる意味がないね」と即答した。
一同絶句して、シーンとなった。
渡辺が見つけた生きる目的は、児童公園を作って市民の悩みを解消することだった。
黒澤監督は映画を作って、我々に元気を与え続けてきた。
監督自身、映画を作って世界中の人と仲良くなったように感じていたに違いない。
映画『生きる』が教えてくれたのは、生き生きと働いている他人を見ると、人は元気になる、ということではなかったか?
少なくとも渡辺はそうだった。
そして公園の完成を待ち望むおばちゃんたちは、懸命に働く渡辺に元気をもらった。
その渡辺が、公園の完成と同時に、その公園で死んだ。突然の死に泣き崩れるおばちゃんたちだった。
「渡辺さんは、自分が胃がんだと知っていたのだろうか?」
葬式の席で役所の部下たちが、渡辺の最後の半年を回想する。
そしてついに「渡辺さんは自分が癌だと知っていて、懸命に最後の半年を生きたのだ!」と悟る。
葬式の席は、一気に元気な決意表明の場へと変わる。
役所の人間全員が復活して、明日から変わるぞ!と宣言する。
ところが・・・。
『Life work of Akira Kurosawa黒澤明のライフワーク』で黒澤監督の仕事ぶりを見るにつけ、私は復活した。
だから、この映画を世界中の人に見せて元気になってほしいと思った。
この映画は、『乱』の単なる宣伝を目的にしたメイキングビデオではない。『生きる』の渡辺を見るように、黒澤監督の常に一生懸命な生きざまを見て、元気になってほしいと思う。
それがこのドキュメンタリー映画を38年越しで作った目的だと、皆さんに知ってほしい。