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物語

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#物語

少年と猫

少年と猫

あるところに心優しい少年がいました。
少年はとても優しかったので、捨てられているものをほっておくことが出来ず、家に持ち帰っては、おとうさんとおかあさんに怒られてしまうのでした。

かたっぽだけの小さな靴や、
ぬいぐるみ、漫画の本に、壊れかけの傘、
「どうか捨てないで」という声が聞こえるようで見つける度に拾っては、
自分の宝箱にこっそりしまっておくのでした。

ある時、少年は薄汚れて弱りかけた子猫が

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二人の記憶

昔々、あるところにとても美しい少女がいました。
その美しさのうわさは村の外まで広がって、あちこちから男たちが一目彼女を見ようと集まってくるほどでした。
しかし少女は決して家から出ようとしませんでした。

男たちは、実際には一度も見たこともない少女を巡って争い始めました。

するとある男がやってきてこう叫びました。
この家に住んでいる少女は淫売だ!
何人もの男をとっかえひっかえ寝ているのだ!
騙され

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捨てられない男

捨てられない男

むかしむかしあるところに、ゴミ屋敷に住んでいる男がいました。その男はどういうわけか女の人にとってもモテたので来る日も来る日も別の女の人たちが入れ替わり立ち替わりやってきて、ゴミを捨てて帰るのでした。女の人たちはみんなそろってこう言いました。
「あなたはわたしがいないとダメなのね」
女の人たちがいくらゴミを捨てても、いくら部屋を掃除しても、男はゴミを外から持ってきて、またすぐにもとのゴミ屋敷に戻って

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顔のない男

顔のない男

あるところに顔のない男がいました。
自分に顔がないことがわからないように、
男はいつも仮面をつけていました。

会う人によって笑った仮面や怒った仮面、
おどけた仮面や泣いた仮面をその都度付け替えていたので、
誰にどの仮面をつけて会っていたのか次第にわからなくなり、
男はついに誰にも会いたくなくなってしまいました。

顔のないまま外に出てみようか、
ある時男は思いつき、仮面を外して外に出ました。

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