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【おすすめ本】絵本『みえるとか みえないとか』

 今日は私がお気に入りの絵本を紹介します。買ったのは3年近く前なのですが、引っ越しや断捨離があっても、この絵本だけは手放さずに持っています。


1.大まかなストーリー


 私たちの世の中でいう「普通」の主人公は、子どもの宇宙飛行士。色んな星を調査するのが仕事です。今回到着した星は、目が3つある人たちの星。自分の「あたりまえ」が「あたりまえ」じゃない世界で、その星の人たちと交流しながら様々な気づきをしていきます。地球においては至ってノーマルである主人公は、星が変わると少数派の「めずらしい」存在になり、みんなから「かわいそう」と言われたり、むやみに気を遣われたり。また、星の住人の中には、3つのうち、前を向いている2つの目しか見えない(つまり主人公と同じ)人もいれば、3つの目とも見えない人もいます。視覚に頼る主人公の日常とは異なる日常を、ユーモアを交えつつ優しい視点で語りかけてくれます。物の「見え方」や「感じ方」について考える絵本ですが、「違い」について大人も考えさせられる内容になっています。

2.人気がある理由


この絵本が子どもから大人まで幅広い層に愛される理由は、視覚障害だけでなく、「自分と違う人」や「普通とは、当たり前とは何か」をテーマにしながらも、シンプルな絵とわかりやすい言葉でそれを伝えてくれるからです。一歩間違えば押しつけがましくなりうるテーマですが、宇宙飛行士の「ぼく」が、後ろにも目がある宇宙人のいる星にたどり着く、という斬新な設定が生きていて、終始素直な気持ちで読み進めることができます。保育園や幼稚園、小学校の読み聞かせにもおすすめですし、インクルーシブやダイバーシティを考える社会人にもおすすめです。ヨシタケシンスケさんならではのユーモアが親しみやすく、難しいテーマでも心温まる雰囲気の中で楽しめるのがこの絵本の魅力だと感じました。

3.私の感想


 私は息子を育てるまで、障害を持つ人と関わってきた経験がほとんどなく、そういった人たちと自分は「違う世界」であるかのように無関心に生きてきました。この絵本は視覚障害がメインテーマですが、そもそも私たちはちょっとずつみんな違う、という原点に立ち返って、いろいろと考えさせられます。パッと見てわかる障害、そうでない障害、異なる性的指向や性自認、国籍や身体的特徴、宗教や文化、考え方、感じ方、価値観。さまざまな「違い」で構成される一つの世界で、互いが幸せに生きていくためにはその「違い」を理解しようとする姿勢がまず大事だな、なんてことを強く思いました。子どもたちと一緒に読むと、子どもならではの無邪気な視点でいろんな発想が出てくるのでとても「楽しい」です。そういうテーマを、楽しく考えられるのがこの絵本の一番いいところだなと思います。

 そして何より、『自分自身も人と違ってあたりまえ』ということを思い出させてくれます。大人も心に響くメッセージが詰まった、ぜひ家族で一緒に楽しんでほしい一冊です。


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