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続・青いエアメール・アエログラム
フランソワ・トリュフォー監督作品の中には、しばしば手紙が登場する。その手紙は、言葉よりもときに饒舌だ。そして、ナレーションに導かれて呼び覚まされ、立ち上がる感情は、言葉よりも豊かでデリケートだ。
そして、トリュフォーの作品に限らず、フランス映画は手紙の使い方が実にうまく、心にくいほどだ。
フランス映画と言えば、エリック・ロメール監督の『冬物語』の中に、こんなセリフがある。
Je suis
青いエアメール・アエログラム
アエログラム・スィル・ヴ・プレ。
私がパリで頻繁に使ったフランス語の一つは、このフレーズだったと思う。巴里滞在一週間も過ぎる頃になると、ヴァン・タエログラム・スィル・ヴ・プレに変化して行ったが、それはアエログラムにすっかりはまってしまった私が、まとめて購入するようになったからだ。もっとも私の場合、知っているフランス語はほんの少しだったので、必要最低限の言葉だけを覚え、使っていた。だから、見方を
ノートルダム寺院の虹
“My heart leaps up when I behold A rainbow in the sky:”
──William Wordsworth
セーヌに浮ぶ船のようだと友人が評したノートルダム寺院。
その優美な姿の向こうにかかる虹。
虹は私にとってのラッキーサイン。
ワーズワースの詩のように、私の心は踊る。
昔も、今も、これからも!
10月の巴里は
Salon de The de la Mosquee
ある日の午後、リュウ・ド・ラ・クレを歩いていた私は、このあたりにエキゾチックなアラビアンカフェがあったはず、と思い、イスラム寺院の塔を目指して歩いてみた。すると、リュウ・ド・ラ・クレから歩いて5分ほどのろころの角に、それらしい入り口が見えた。ここが巴里最大のイスラム教寺院・モスケの一角にあるカフェである。
モザイク模様に覆われた美しい壁面の回廊、中庭のカフェスペースなど、すべてがエキゾチックで
続・La Charlotte de l'Isle
或る日の午後、メトロの7番線に乗り、Sully-Morlandでおりてみた。この日はここからセーヌを渡り、サン=ルイ島まで歩いてみようと思ったのだ。だが、地上に上がってみると、さっぱり方角が分からない。道路案内を見ながらどっちの方角かなぁ、と思案していたら、若い女性が「どうかしましたか」と声をかけてくれたので、「サン=ルイ島に行きたいのですが」と言うと、「この道をまっすぐに歩くと橋があるので、そ
もっとみる小さなピンク色のカフェ La Charlotte de l'Isle
友人とシェイクスピア書店で待ち合わせをして、サン=ルイ島にあるカフェに向かう。
ドゥブル橋を渡り、ノートルダム寺院の前を歩き、ジャン23世広場を横切り、サン=ルイ島を渡る。この日は見える景色のすべてが晩秋の色に染まっていて、絶好のお散歩日和だった。
カフェのあるサン=ルイ通りには、夢のような色彩とキュートなドアを持つ小さな店が軒を連ねている。クレープの店、アイスクリームの店、ピクルスの店、ジ
何かしらのおまじないが必要な街
日曜日の夜、夕食を食べるために、友人と二人、セーヌ河沿いにあるお気に入りのカフェへ行った。ドゥブル橋の近くにあるこのカフェの窓からは、ゴシック建築の最高傑作と言われるノートルダム寺院が見える。道往く人たちの多くはカメラ片手の観光客で、午後8時とはいえまだ明るい巴里の街は、ノートルダム寺院や橋を渡る人たちをロマンティックに映し出していた。
私たちはロンドンから帰って来たばかりで、自分が思う巴里と
『記憶の絵』を読んだカフェ
朝おきると地図を見て、今日はどこに行こうかな、と考える。それが予定のない日の私の朝の日課だった。
ある日の私は、St-Paul方面へ出かけようと思い立った。目的は、駅近くにある「ホテル・ジャンヌ・ダルク」を訪ねることである。森茉莉が住んでいた同名のホテルとは随分離れた場所にあるので関係ないだろうとは思っていたが、ホテルを訪ねれば何か手掛かりを得られるのではないかと思ったのだ。
メトロの5番線
ジョージ・ホイットマンの日曜日の朝のパンケーキ
シェイクスピア店のオーナー、ジョージ・ホイットマンが日曜日の朝に焼くパンケーキのことを、友人が教えてくれた。シェイクスピア書店の2階はフリーで泊まれるホテルになっていて、世界各地からやって来た人たちにベッドが無料で提供されている。これは、そんな彼らにジョージがふるまう日曜日の朝ごはんである。
是非とも食べてみたいと思った私は、ジョージに「日曜日にパンケーキを食べに行ってもいい?」と尋ねたところ