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小さなピンク色のカフェ La Charlotte de l'Isle

 友人とシェイクスピア書店で待ち合わせをして、サン=ルイ島にあるカフェに向かう。
 ドゥブル橋を渡り、ノートルダム寺院の前を歩き、ジャン23世広場を横切り、サン=ルイ島を渡る。この日は見える景色のすべてが晩秋の色に染まっていて、絶好のお散歩日和だった。
 カフェのあるサン=ルイ通りには、夢のような色彩とキュートなドアを持つ小さな店が軒を連ねている。クレープの店、アイスクリームの店、ピクルスの店、ジャムや紅茶の店……どれも思わず立ち寄りたくなる魅力的な店ばかりである。
 お目当てのカフェは通りのはずれにあった。ピンク色の外装は、そのままパリ本のジャケットにしたいようなかわいらしさ。下調べをしてくれた友人によると、木曜日から日曜日の午後からのオープンらしかった。
 店内も、小さなテーブルが5つばかりのキュートなスペースのみ。だが、シャーロッタおばさん手づくりの、という形容がピッタリのおいしそうなケーキが一杯である。
 友人はエスプレッソ、私はすみれの紅茶、そして、ケーキは二人ともスパイスミックスケーキをオーダーする。
 やがて運ばれて来た私たちのケーキと飲み物は、小さな丸盆におままごとのセットのように可愛らしくコーディネートされていて、私たちは物語の住人になったような気分になる。
 ガラスのディキャンタに入った水用のグラスはリキュールグラス(多分ね)、すみれの紅茶が入ったティーポットは鉄瓶、ティーカップは湯呑茶碗(これも多分)、珈琲ポットは小さな同性の片手鍋風、珈琲カップはぐい吞み、ケーキは花柄のエレガントなお皿に盛り付けられていて。一見、とてもちぐはぐな取り合わせだが、違和感はなく、むしろこういう風にコーディネートできるのね、と目からウロコの新鮮さがあった。
 あっという間にケーキを平らげた私は、我慢できずにもう一皿オーダーする。今度はキャロットタルト。まさに人参そのもののタルトで、底には薄くチョコレートが敷かれていた。
 こうして、ポットサービスの珈琲とお茶を何倍もおかわりしながら、私たちは物語の中のお茶時間を過ごしたのだった。
(今はオーナーが変わり、店も改装されたと聞きました)。

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