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死を待つ人々の家での仕事について~世界一周旅日記~ インド編 【第六章:第14話】雲と地平線の間

7月18日(死を待つ人々の家)

『死を待つ人々の家』
ここでは、マラリア、結核、コレラ。
これらの病気の人たちが、
男50人、女51人生活をしている。

感染のおそれもあるが、
健康体で免疫力の強い状態であれば、
大丈夫だということだ。

僕は男の人達のお世話をする。
ほとんどの人が自分で歩くことができない。

シャワーを浴びるときにも2人がかりで、
1人のブラザーが頭側から両手を抱え、
1人のブラザーが足側から両膝を抱えてシャワー室まで運んでいく。

(骨、折れないかな?)

心配しながら、
抱えて、
シャワー室へ運んでいく。

思ったより重い。

万が一、
僕の手が滑ってしまったり、
僕が転んだりしてしまうと、
大変なことになる。

僕の不注意がその人の人生を縮めてしまうことだってある。

彼らは、
もちろん、
『安心している。』
というわけではないだろうが、
彼らは、
自分で自分の体を動かすことができないのだから、
どうしても、
僕たちに任せるしかない。

彼らは、僕たちに命をあずけているのだ。

仕事をしながら、
責任の重さ、というものを感じる。

もちろん、
僕達、
ブラザーとシスターは、
ほとんどが若いので元気に動くことができる。

(多分、彼らにもそういう時期はあったのだろう。)

ふと、
自分の老後を考えてしまう。


彼らは食欲が旺盛だ。
食事のカレーをもりもりと食べる。

今日、
洗濯物をしていたら、
2人のブラザーが担架を運んでいる姿を見かけた。

担架の上には白いシーツがかけてあり、
その白いシーツが少しふくらんでいる。

僕はそれを見て、
自分が、
どういうところで仕事をしているかを改めて認識した。


7月19日(食事介助)

今日は、
食事介助をした。

まず、
ベッドに寝ているおじいさんをおこしてあげる。

背中に手をあて、
寝ている状態から座っている状態にしてあげる。

おじいさんが苦しそうにうめきながら起き上がろうとする。

(大丈夫かな?)
と思い、
手の力を弱めてゆっくりと起こす。

そしてスプーンを使って、
おじいさんの口に食事を運んでいく。

おじいさんをいそがせないようにゆっくりと。

スプーンを口の近くに持っていくと、
おじいさんは、
スプーンの上にのっかっているご飯とカレーを口に含み、
モゴモゴと食べる。

口の中のものが全て無くなると、
おじいさんは口を半開きの状態でつきだし、
(次の1さじをくれ。)
という表情をする。

そうすると、
僕がまたスプーンを口のところに持っていってあげる。
おじいさんが、
またモゴモゴと食べる。

不謹慎な話だが、
なんだか赤ちゃんのようで可愛い。

おじいさんが食事を食べ終わったので、
おじいさんを、
座っている状態から寝ている状態に戻してあげる。

(んっ?近くの人が呼んでいる。)

その人の方を見てみると、
ベッドの上にカレーとご飯がこぼれている。
食事中に、ベッドにこぼしてしまったようだ。

(このままだと横になれないからベッドを拭いてほしい。)
ということらしい。

僕は、ジェスチャーで、
(ちょっと待ってね。)
と合図し、
近くのブラザーのところに行き、
フキンを借りる。

そしてそれを持ってきて、
ベッドのご飯をふき取る。

するとその人は、
(ウンウン)
とうなずきながら笑顔で、
僕の頭をぐりぐりとなでて、
胸の前で十字をきった。

僕も胸の前で十字をきった。

その後、
洗濯をしながら、
他のブラザーと笑いながら雑談をしていた。

そうすると、
昨日と同じく担架を運ぶ2人のブラザーが横切った。
白いシーツが担架の上にかけられ、
シーツがふくらんでいる。

僕達から笑顔が消えた。

「最近、多いね。」
さっき一緒に雑談をしていたブラザーが言った。
僕は2日目なので、
この状況が多いのか少ないのかは分からないが、
男50人、女51人。
合計101人しかいないのにこのペースか。

せめて、
今日、食事介護をしたおじいちゃんだけが、
あのような姿になるのだけは見たくないな。

いつかは・・・・。
ってことは分かってる。


<次号に続く>

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