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朗らか女将よし子さん・薬師岳山荘/9days to 彼女たちの山

【9days to 彼女たちの山】
2023年3月14日に出版した『彼女たちの山 平成の時代、女性はどう山を登ったか』(柏澄子著、山と溪谷社刊)を紹介するシリーズです。
出版前に20日間かけてSNSなどで拙著に登場する女性たちを紹介したものを、ここに再録します

残念ながら山小屋の写真、彼女の写真が手元になく、山小屋近くからの眺めを。
どこの山小屋かピンとくるでしょうか……?
私は、この角度から見る槍・穂高連峰、好きです。

今回ご紹介するのは、薬師岳山荘の堀井よし子さんです。
山に登ったことは(もちろん)ある。学生の頃、剱御前小屋でアルバイトしたこともある。という経歴ですが、前任の方から薬師岳山荘を引き継ぎ、女将になった当時はピアノの先生でした。山小屋に関しては、およそ素人だったはずです。そのよし子さんが、どうやって薬師岳山荘を営んできたか、ほんの一部ではありますが、ご紹介しました。

取材は、富山市のお宅にお邪魔して。お部屋にはグランドピアノがありました。
コロナのさなかで、取材中に何度も問い合わせの電話が入っていました。「今年は営業するのか」「泊まりたいけれどどんなコロナ対策をしたらよいのか」。まだ山小屋も登山者もコロナに慣れていなかった頃、よし子さんはひとつひとつ丁寧に説明していました。

印象的だったのは、「薬師小屋」の話になったときのことです。

以前、友人であり仕事仲間の医師・稲垣泰斗さんと私で、山小屋のコロナ対策のために、南アルプス鳳凰三山にある薬師小屋を訪ねたとき、薬師岳山荘と間違えて電話する人が多いという話を聞きました。問い合わせ電話の件数が多く、1件に長い時間がかかっていた頃なので、間違い電話を受ける側も大変だったと思います。

そのことをよし子さんに話すと、朗らかに笑いながら「そうなのよ~。それで、薬師小屋がどこにあるか調べたわ。よろしく伝えて」と。私は、伝書鳩になった気分です。

よし子さんを取材するきっかけは、朝日小屋の清水ゆかりさんにあります。彼女が山小屋の仕事を始めた頃、会議は男性ばかり。唯一よし子さんがいた話を聞かせてもらいました。ゆかりさんにとって初めての同性の先輩。

一方でよし子さんも素人同然で山小屋を始めたとき、沢山の人が手を差し伸べてくれたと。そのひとりが穂高岳山荘の今田英雄さん。よし子さんは英雄さんの話だけでなく、「娘の恵ちゃんは、聡明な子よ。元気にやっている?」と。
既に恵さんにはインタビューしていたので、帰宅後恵さんにこの日の取材の報告をしました。

山小屋に従事する方々はこうやって繋がっていて、「次は〇〇へ取材に行けば?」と紹介してくれる時もありました。
薬師岳山荘、食堂の一面ガラス張りの窓からの眺めが絶景です。ここに泊まり、夜を越え朝を迎えるのはものすごい贅沢です。
薬師岳山荘→http://www.yakushidake-sansou.com/

『彼女たちの山 平成の時代、女性はどう山を登ったか』(山と溪谷社、3/14発売)

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