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スコウスの!オリジナル超長編連載小説『THE・新聞配達員』

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真田の真田による真田のための直樹。 人生を真剣に生きることが出来ない そんな真田直樹《さなだなおき》の「なにやってんねん!」な物語。
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#妄想小説

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その100

100.   お守りがわりの新聞を持って・・・ 遠藤さんが可愛かった。 背が低くてポニーテールで 色が白くてちょうどよいムニムニ感でいて 柔らかそうだった。 目が切れ長で一重で 表情はあまり変えないけど 楽しそうに仕事をしていた。 黒縁の眼鏡。 26歳くらいだろう。 私達より少しお姉さんな感じがした。 最高だ。 ここのところ最高だと思える 女の人によく出会う。 一体いつになったら私は、 運命の人と出会うのだろう。 会った瞬間抱きしめ合ってしまうような人。 きっとこの

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その98

98.   京都のお侍様 「のぞみちゃんやん!ってことはここやな!」 「すごーい!真田くんやん!久しぶり!って言うか、よくここが分かったね?」 「うん。おばちゃんに住所聞いてんけど、まさか一発で当てるとは・・・」 「えっ?一発?」 「うん。203を一発で引き当てた。」 「あー。やっぱ分かりにくかった?ここに書いたんやけど、分からんよね、ぜったい。」 のぞみちゃんがドアの外に出て 木のドアの上の方を手で優しく摩った。 うっすらと鉛筆で書いた汚い字が見える。 たし

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その94

94.   最後のハイタッチ ちょこちょこと後ろから付いてくる 由紀ちゃんが可愛い。 おかげでいつも通りに新聞を配れない私。 ぎこちない体の動きが自分でもよくわかる。 カクカクとまるでロボットのようなしなやかさ。 各関節にはうっすらとネジの跡が見え隠れする。 隠しきれない心の古傷が私をロボット化する。 自転車すら上手く止められない。 サイドスタンドがうまく出せずに倒れそうになる。 いまさら由紀ちゃんに緊張する気の弱い私。 いつも通りに配れないから余計に疲れる。 でも後

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その92

92.   絶望の快感 3月の第2日曜日の夜。 佐久間さんの家に来た。 手ぶらだ。泊まりに来た。 明日が人生で最後の新聞休刊日だからだ。 明日というのは世間一般的な今晩の事だ。 泊まるといっても ご飯をごちそうになって ワインをごちそうになって ピアノを聴いたり弾いたりして 檜で出来たお風呂に入って 一番上の3階の大広間で寝るだけだ。 殿様の気分で。 いや、 アトリエの穴蔵で寝るのがいいかもしれない。 芸術的パワーを頂けるかもしれない! よし!そうしよう! それが本当

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その91

91.   新聞配達員の後輩は新聞配達員 3月6日。 新入りがやって来た。2名だ。 1人は大野が居たお店の食堂の真上の部屋に入り、 もう1人は竹内が居た部屋に入った。 私にとうとう後輩が出来たのだ。 早いものだ。もう東京に来て1年が経とうとしていた。 そういえば部屋の目の前にある木は桜だ。 お寺の横で見事に咲いていた桜を思い出した。 今はつぼみがちらほら見え始めていた。 咲く頃にはもうここには居ないだろう。 さて見事に散る予定の私と 2年生の花を咲かせる予定の坂井で、

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その90

90.   存在の耐えられるだけの軽さ 今思い出した。 存在が軽すぎてすっかり忘れていた。 私と優さんで達成感を共有していたその時の事、 竹内が勢いよくお店に入ってきた。 おや? いつになく、めかしこんでるではないか。 ちょっと小綺麗にしている竹内。 私は目を細めてから聞いた。 「竹内。どうしてん、その格好?デートか?」 「いや、お店にお金払いに来たんだよ。」 「貰いに、じゃなくて、払いにか?なんのお金や?」 「え、いや、学費が足りなくなるから不足分払えってさ。真

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その88

88.   バイトだとLv7のままだけど社員に採用されたら一気にLv30からのスタートになる話ィ! 佐久間さんの家の集金が終わって お店に戻った。 「ただいまですー!戻りましたー!真田ですー!」 興奮気味に言った自分に自分自身が驚いているが、 あまり驚いてもいられない。 この自分は特別だという気持ちが このままずっと続いてくれれば、 もう何でも出来るような気がしているからだ。 早く! 早く何かしなければ! 曲作りだ!いや相棒のギターが居ない。 詞を書こう! 絵も描こう

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その87

87.   『 特別 』と『 変 』は同じだった件 2月のような風が吹いたので 風に今何月かと聞いたら12月だと言われた。 どうやら12月に生まれた風が今私の耳元を 吹いているようだ。 そんな誰にも話せない変な独り言を頭の中で 言いながら私は由紀ちゃんの目の前に居た。 「チョコレートだとさ、すぐに無くなっちゃうと思ったからさ、だからさ・・・これにしたんだぁ。」 「わー。ありがとー。」 由紀ちゃんが何回も髪をかきあげながら 照れて手元だけを見つめながら言う。 ハンカチ

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その86

86.   コンビニに佐久間さんが来たけど私だって気付かなかった話 コンビニのアルバイトはもう 寝坊ばかりするようになった。 でもクビにはならなかった。 週5日シフトに入る予定が週3日になった。 蓄積した疲労が抜けない。 朝刊が終わってお腹いっぱいご飯を食べたら なぜか寝てしまう。ビールを飲んでないのにだ。 ダメな私。 酒を飲まずして眠れるものなのかと 自分の体を不思議がった。 疲労はやはりアルコールで取るのが一番だと 幼い頃父親から教わっていたからだ。 晩酌する父の膝

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その85

85.   ギターリストが魂ではなくギターそのものを売った日 クリスマスはみんなでカラオケに行った。 私がみんなのリクエストに応える形で盛り上がった。 由紀ちゃんがJUDY AND MARYの そばかすを歌ったときは声がそっくりすぎて みんなびっくりしていた。 由紀ちゃんにあげたクリスマスのプレゼントも 由紀ちゃんからもらったクリスマスのプレゼントも 両方マグカップだったので、ふたりで笑った。 お正月もみんなで神社に初詣に行った。 念願の浅草だ。おみくじは末吉。 全てが

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その84

84.   舞台の下で名芝居を打った大根役者さなだまる 早稲田から神楽坂まではたったの一駅だ。 これはもう覚えた。 前に佐久間さんのピアノ発表会で来た場所だ。 あの時はかなりの弱虫で 景気付けにビールをたらふく飲んでから来たので あまり覚えていない。 今こうして、 ゆっくりと街並みを眺めながら散策すると 神楽坂は京都に似ている気がする。 路地がやたらと多く、石畳が敷かれている。 車のあまり通らない道。 閑静で小さなお店がいっぱい並んでいる。 そんな風情豊かな事を考えな

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その83

83.   ビッグスターはみな四畳半からスタートするものだ もう朝刊の時間か。 私はコタツの中にいる。 中に潜ってはいない。 ひとりだから潜らない。 もし向かいに女の子が座って居たら 潜らなければならない。 私は腰から下をコタツに入れ お尻から上は座椅子にもたれている。 そして両腕にはめずらしくギターがある。 気持ちが弱くなるとギターを 弾かずにはいられなくなる。 わずかなレパートリーを弾き終えると 適当なコードを弾く。 「おや?今のはなんだ?ふんふんふ〜ん♪」

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その82

82.   さよならメデューサ 「元に戻してください。」 私は恵比寿に居た。 咳き込みながら美容師さんが言う。 「元がどんなだったかゴホッゴホッ、忘れましたけど、ゴホッ、とにかく縮毛矯正しましょおゴホッゴホッ、ぅか?」 きっと臭いから咳き込んでるのかもしれない。 最初は風邪でしんどいような感じではなかった。 「しゅくもう、きょうせい?」 「はい。ゴホッ。ストレートパーマの強力なゴホッやつです。ゴッホ。オエッ。」 やっぱり臭いようだ。 それかゴッホのファンか。

オリジナル連載小説 【 THE・新聞配達員 】 その1

1.   進路なき人生 やっと高校を卒業した19歳の秋。 留年したのに、そのまま友達で居てくれる 同い年の友人達。 特に進路は決めていなかった。 親も先生も友人も 飼っている金魚も誰も 次に私が何をするべきかを言う者は 現れなかった。 幸運だ。 信じられている証拠。 もしくは諦められている証拠。 何をしても良いし、何もしなくても良い状態。 そんな責任と責任のちょうど間に 【何もしなくても良い】という隙間が あったなんて。 居心地が良いので、しばらくそこで考えに考える。