やる気の出ない人を動機づけるために必要な2つのメッセージ
「水を飲みたがらない馬を川辺に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」
教育の現場では昔からこのように表現されることがあります。
私が教師として現場に立っている頃、よく親御さんから「先生、うちの子やればできる子なんです。やる気を出させてあげてください。」とご相談いただきました。
かなり難易度の高い相談ではあるものの、親としては我が子にやる気を出してほしい、本気になってほしいと願うことは自然なことでしょう。
私も精一杯それに応えようと、様々な方法を駆使してやる気を引き出すサポートに尽力しました。
そして、ある一つの結論に達したのです。
それが、
水を飲みたがらない馬に水を飲ませる方法は、2つしかない
という結論でした。
今回は、このやる気を引き出す2つの方法について、お伝えしていこうと思います。
2つの方法とは、
①強制的に飲ませる方法
②自発的に飲むように促す方法
です。順番に見ていきましょう。
①強制的に飲ませる方法
これは非常にシンプルですが、極めて強引な方法です。
馬を水辺まで連れていくことができたら、馬の首をつかんで水の中に押し込みます。
苦しくなるので鼻や口から少量の水が入るでしょう。
長い時間行っていては窒息してしまいますので、これを繰り返し少量ずつ体内に摂取させます。これで、少なくとも脱水症状で倒れてしまうことだけは避けられます。
良いか悪いかではなく、このままでは死んでしまうという状況においては馬が水を飲みたいか、飲みたくないかは関係ありません。
方法は問わず飲ませる、という選択肢一択です。
この『無理やりでも飲ませる』という強い意志の力は、時として大きなエネルギーを生み出します。
教師が生徒に対して本気で叱るという行為も、好き好んで叱っている教師などいません。
しかし、
『今私が叱らなければ、この生徒はいつか必ず後悔する』
という強い信念のもと、鬼の形相で叱るのです。
これは、自発性を促しているわけではないため緊急措置といった印象は否めませんが、
やる気が出る出ないではなく、
やらなければならないことなのだから何が何でもやらせる
という選択肢を持っておくことで、モチベーターの選択肢を増やすことにつながります。
②自発的に飲むように促す方法
こちらは、相手に対してインセンティブ、もしくはディスインセンティブを与えることによって、『飲んだ方がいい』と思わせる方法です。
自発的に飲ませる方法は、更に2つに分かれます。
②-A:飲むといいことがある
②‐B:飲まないと悪いことが起こる
②-A:飲むといいことがある
仮に勉強をしてほしいとすれば、子供にとっていいことがない限り主体的に取り組む可能性は低いです。
そして、この『子供にとっていいこと』というのが難しい。
例えば、
『お小遣いが欲しい』
これもいいことですし、
『困っている人を助けることのできる力を身につけたい』
これもいいことです。
本人がやる気になれるのであればなんでも構わないが、モチベーションには内発的なものと、外発的なものが存在します。
誰かに与えてもらう動機が外発的、自ら生み出すものが内発的という考え方です。
これに乗っ取って考えれば、
お小遣いが欲しい → 外発的
困っている人を助けることのできる力を身につけたい → 内発的
ということになります。
良い悪いはありませんが、内発的な動機の方が持続性があり、爆発力も強いのです。
そして、内発的な動機付けを行えるかどうかは、本人にかかっています。
周りの誰かから与えてもらえるものは外発的な動機付けに過ぎず、自らが
『あんな風になりたい』
『こうなったら幸せだ』
というイメージをもてるかどうかが重要となります。
親としては、子供が内発的動機付けを行うための手助けまでしかできないので、多くの経験を積ませて、選択肢を広げることで本人が興味をもてることを増やしていくというのがひとつのアプローチになるでしょう。
②-B:飲まないと悪いことが起こる
これは恐怖のイメージで動機づけを行うパターン。
あまり多様することはお勧めしませんが、こちらも強い動機を生み出すことができます。
受験勉強であれば、
『もし今勉強せずに、楽して過ごしたら、来年友達が皆イキイキと大学生活を送っている中、自分だけは予備校に通いながらプレッシャーと勉強付けの日々を送ることになる。絶対に嫌だ!!!!!!!!!』
これもひとつの動機づけですね。
何度も言いますが、動機づけに良い悪いはないです。
やる気が引き出され、主体的に動けるのであれば結局なんでもいいです。
水を飲みたがらない脱水症状の馬に無理やり水を飲ませようとしているとき、
『それは良くない!飲むまで待てばいい!』
と言いつつ手遅れになるくらいなら、サッサと他の作戦を考えた方が得策でしょう。
ネガティブなイメージで恐怖をあおり、行動を促すというのも立派な動機付けのひとつであることは頭に入れておきたいです。
結局最後は本人の取り組み次第と言えばそれまでですが、動機付けを上手く行うことで相手を動かすことはできます。
・行動すると良いことがある
・行動しないと悪いことが起きる
まずは、これに気付かせることから始めてみてはいかがでしょうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?