2022ファジアーノ岡山にフォーカス20 J2:第15節~24節「強さへの渇望」Part2(仙台戦~長崎戦~金沢戦)

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連敗を2度止めた岡山。大分に続き元J1の強豪クラブとの連戦。

4、「仙台式堅守速攻」

18節:ベガルタ仙台vsファジアーノ岡山

 長らくJリーグをチェックしてきた私からすると、仙台が、何故J1で戦えて来たのか。そう考えていた時期も正直ありました。ただ、長く見て行く中で、仙台というチームのサッカーの魅力や強さが少しずつ理解できるようになってきました。もちろん、仙台の良さは、仙台を長く応援してきたサポーターや関係者、選手、監督の方がより深く理解されているとは思います。ただ、私は、岡山サポですが、そういった良さを知りたい。好きになりたいというスタイルということもあり、今回の対戦は、本当に楽しみでしたし、本当に仙台戦をJ2ですが、実際にTV越しでも観戦できた良かったと思える試合でした。

 まず、仙台の独自の応援スタイルであるチャントの中でも、「レッツゴー」のイメージが強い。あのリズムは、チームに勢いを生み出す。それは、コロナ渦の声を出せない拍手でもその勢いは伝わってきた。サポーターにも色々な応援スタイルがあって、純粋に応援歌もありますが、私は「レッツゴー」が好きです。

 岡山戦の前の2試合で、4得点を続けての8得点。その爆発力は、やはりサポーターの後押しは、大きいと個人的には感じている。実際の攻撃スタイルJ1式堅守速攻スタイルという感じで、4-4-2で、バランスを巧く取った守備組織からの個の力と組織の力で、サイドからの切れ味鋭い攻撃や、細かくパスを繋ぐ攻撃、精度の高くしっかりミートされたミドルシュート。本当に仙台の攻撃は多彩で、守備を安定させた上で、これだけの攻撃ができなければ、J1を戦えないと感じる試合でした。

 ただ、そうした仙台に対して、岡山も部分的な強みを活かして互角に戦うことができた。攻守での総合値や完成度、サポーターの後押し。こういった部分で、岡山が勝つことは厳しいが、岡山からも参戦したサポーターの後押しと、岡山には、前から奪う強度の高いプレスがある。実際に、高い献身性を武器に、前から奪ってシュートに繋げることができたシーンもあった。

 攻守において、岡山の強みであるロングパスを主体とした攻撃や、サイド攻撃。仙台の攻撃もできる僅かな隙をついて、1点を狙うことで、シュート数も仙台が15本、岡山が13本と迫る事ができたが、最後の部分でパワー不足であったのも事実であった試合であった。一方で、仙台は崩してシュートまで行くという部分で、岡山に勝っていたが、岡山の重心が後ろにある守備と、J2式のシンプルなロングパスや前からの守備からのカウンターへの消耗の影響もあったのか、ゴールを破れず、スコアレスドローとなった。

 両チームの良さが出た試合であったが、岡山は、個の力でしっかり蓋をすることで、仙台の攻撃に対して、最後の所への侵入を阻止し、攻撃を凌ぐことができた。ただ、守備に力を割いた部分も大きく、人数をかけた攻撃や、ボール奪取後の精度の部分で、得点を奪うまで至らず、良さは出せたが、同時に力不足も感じた試合であった。

5、「ゾーンデュフェンス」

19節:V・ファーレン長崎 vs ファジアーノ岡山

 仙台に対して、ある程度戦えた岡山。長崎戦こそはと思ったが、この試合でもJ1経験のある長崎の力を感じる試合となった。長崎からボールを奪う事ができてカウンターを仕掛ける場面での岡山のボールロストが目立った。一見すると、岡山のミスのように感じるが、これは、ゾーンデュフェンスの狙いである。一定距離感に保って、守備の担当エリアを決める事で、隙があるようでない距離感を保つことで、少し寄せる事で、ボール保持者に対して、守備のアクションを素早く起こせるだけではなく、ボール保持者にプレッシャーをかけることで、ミスも誘発させることができる。

 言葉で説明すると簡単ではあるが、これを実現するためには、緻密で細部に渡る約束事を浸透させる必要があり、勝てるチームにするにはかなりの時間を要する。そして、前から奪う、囲い込んで奪うという回数が限られる事から、どうしても受動的な守備となってしまう。そういった意味で、高い完成度と攻守における高い個の力が必要とされるため、序盤戦に苦戦する傾向にある。

 昨季と今季の長崎はまさにそういった感じで、終盤に無類の強さで勝利を重ねたが、序盤から中盤にかけて苦戦する傾向にある。そのため評価の難しいサッカーであるのも事実である。この試合では、その術中に嵌り、ほぼ長崎のゲームで、岡山のチャンスは限られた。そこが繋がっていれば、特に14田中 雄大のミスの多さは気になった。運動量の多い選手なので、細かいプレーが乱れるのは致し方ない部分こそあるが、こういった強いチームに得点を奪って勝利するためには、止める・蹴るという部分でも正確性はより求められる。

 仙台戦でもそうであったが、15ミッチェル・デュークでの前からの守備強度やフィジカルを活かした攻撃は、こういった強いチームに対しても攻守で戦える可能性をチームに生み出す事ができる。また、90分間プレーできるようになった試合が増えたのもロングパス比率を下げて、繋ぐところを繋ぐように変更したのも大きい。

 ここ3試合では、自分達で持つ意識を2連敗した試合より下がっていたとしても、個と組織でハイレベルのチームとの対戦であったこともあり、そういったシーンは劇的に減った。同時に、押し込まれた状況下で、前からある程度圧力がかかる状況下でもしっかり繋いで、自陣深く出のボールロストしない組み立てができるようになってきているとも感じる。

 そして、有馬ファジの武器であった16河野 諒祐が主に攻撃でオーバーラップして、11宮崎 智彦が相手チームのプレスからの抜け口としてキープレイヤーになること。23ヨルディ・バイスと5柳 育崇の連携の向上に伴う安定感の向上。これは、攻撃より守備面で、抜群の安定感に繋がっている。

 振り返れば、序盤戦の失点では、ミス絡みの失点が多かったが、ダブルボランチを採用することで、パスコースと後ろの人数が増えたことで、組み立てやボール奪取力やセカンドボールの回収率のアップ。ここが軸となり、劣勢化でも3試合無失点という試合にすることができた。そして、35堀田 大暉の獅子奮迅の活躍は、左利きの梅田 透吾と言える活躍も大きい。

 J1経験クラブに内容で負けていても試合では負けない。そういった粘り強さを発揮できた一方で、そういったチームにはまだ勝てない。そうチームの未熟さを感じた試合となった。ただ、負けなかった事で、チームとして守備への自信と、自分達のスタイル、岡山らしさ、木山ファジらしさ。そういった部分が見えてきた中で、個も光った試合となった。

 ただ、長崎の松田 浩監督は、後日解任されており、J1を目指す難しさとゾーンプレスの難しさを感じるトピックであった。

6、「紆余曲折」

20節:ファジアーノ岡山 vs ツエーゲン金沢

 20節にして新しい組み合わせ。木山 隆之監督が率いる今季の岡山の選手層の厚さを感じる一つの武器と言える。ただ、選手層が厚ければ良いという問題でもなく、起用法が悪ければ、選手のモチベーションも下がるし、選手間のトラブルや監督への不信が溜まる事で、チームがバラバラになることもある。

 今季の岡山は、そういった選手同士のコミュニケーションは、観ていて冷や冷やする場面もあったのも事実で、プレーだけではなく、選手間のリアクションや仕草、全てが見ていて、心に響いてくる。良くも悪くもサッカースタイルや年齢だけではなく、国籍や正確でも様々な選手が、揃っている事を強く感じるシーズンとなっている。

 コロナの影響もあったが、来日が遅れた8ステファン・ムークや9ハン・イグオォンもその選手達もチームに溶け込み、チームの中で輝きを放つまではとても時間がかかった。8ステファン・ムークもまさかの退場からのスタートでしたし、9ハン・イグオォンもコンディションだけではなく、外国籍選手は4人までというルールによって、リザーブ入りもできなかった。

 この2選手だけではなく、7チアゴ・アウベスも一時期はメンバー外になることや、15ミッチェル・デュークもエースとして期待されていたが、最初のゴールを決めるのに時間がかかった。23ヨルディ・バイスも5柳 育崇とタイプが似ている部分があることもあって、噛み合わないこともあった。

日本人選手にしても16河野 諒祐は、持ち味の攻撃参加する場面に顔を出せず、得意でない守備や自陣での軽率なプレーが目立ってしまった時期もあった。ルーキーが活躍する一方で、引退も頭によぎったというベテランの6喜山 康平。キャプテンではあるが、なかなかゴールマウスを守れなかった13金山 隼樹。

 こうした選手1人1人に今季はエピソードがある。それが木山ファジであり、今季のファジアーノ岡山である。チームが1つになるには当然良い時もあれば、悪い時もある中で、悪い時期をどう戦うにある。そういった意味で、一戦必勝ではなく、一戦前進ができていたことで、チームとして着実に成長し、序盤の勝ち点0を勝ち点1や3にすることができている。1戦必勝であれば、勝つことが全てであるが、1戦前進にすることで、チームとしての成長を一番に考えてきた中で、この金沢戦があった。

 この試合の流れを呼び込んだのが、16河野 諒祐の右足である。セットプレーで、前半の成功率はなんと100%。精度だけではない武器と受け手のフィーリングがあっていたことを強く感じる成功率である。その右足からここまで全試合出場の26本山 遥のプロ初ゴールと抜群の身体能力の高さが武器の5柳 育崇のゴールをアシスト。

 7チアゴ・アウベが、PKの際に滑って外したことで、金沢が息を吹き返し1点返されるも、前から狙える時は狙って行くというボール奪取からカウンターで7チアゴ・アウベスがボール運ぶと優しいパスから8ステファン・ムークのゴール。そして、再びカウンターの形だが、人数が揃っている金沢の守備網の隙間を通す7チアゴ・アウベスの絶妙なスルーパスにスピードとパワーを兼ね備えた9ハン・イグオォンがゴール前に抜け出すと、倒れながらでも強烈なシュートを決めて、4点目。

 そして、最後は7チアゴ・アウベスが、再度訪れたPKの機会をしっかり決めて、前半だけで、5得点。後半は、チャンスもなくはなかったが、金沢の決意のハーフタイムでの4人同時交代。前半のダメージをリセットして、後半1点でも多く返して、可能であれば同点や逆転を目指して積極的に動いてきたことで、後半0-0で終えて、トータル5-1での快勝であった。

 岡山の良い所が出た試合であったが、後半に追加点を奪えなかった点を含めて、チームとして依然として、後半の起爆剤となる選手起用の部分で、課題を残した。ただ、それ以上に、金沢の選手が、退場者が出て、1人少なくなっても防戦一方にならず、繋ぐ事で、サイドまで運び、中で勝負という形を作るなど、諦めない姿勢は素晴らしかった。

 こういった試合では、プレーが荒くなってしまう事や審判の判定に対して、不満をぶつけることもあっても不思議ではないが、そういったシーンはほぼなかった。岡山の選手でもそういったシーンが何度か今季あり、残念な気持ちになることもあったが、そういった意味で、金沢の選手は、本当に最後まで紳士的でサッカーをやりきった。

 その結果、岡山は、後半得点が奪えず、そういった課題を発見することもできた。金沢としても厳しい心理状況の中でも下を向かず、選手や監督、審判、チーム何よりサッカーへのリスペストを忘れず、戦い抜いた事で、遠路はるばる岡山の地に来てくれたサポーターへ、戦う姿を最後まで示した。スコアは厳しい結果であったと思うが、金沢としても次に繋げる収穫もある試合にできたのではないだろうか。

 岡山としては、出来過ぎた試合となったが、こういった爆発力は開幕戦の時からあり、こういった試合から遠ざかっていたが、改めて高い攻撃力を持っているという事を内外に示すことができたという事で、次節を終えたら始まる2巡目に向けて、大きな1勝となった。

Part3に続く。

Part1・4

文章=杉野 雅昭
text=Masaaki Sugino

ファジ造語

チアゴ・タイム
 7チアゴ・アウベスのプレーの一つ一つにサッカーを楽しむという遊び心があり、そこに技術が伴った左足の凄さを称えて「悪魔の左足」と、呼ばれている。その左足を活かして、何処からでも何時でも狙っていて、7チアゴ・アウベスが出場している時間帯は、岡山の大きな得点源と言える。

本山丸(イメージは真田丸)
 大阪の陣で、大阪城に迫る徳川の軍勢に対して、真田丸は、大阪城の弱点を補う出城として築かれた。23ヨルディ・バイスと5柳 育崇の弱点は、釣り出されたときや、スピードであるが、26本山 遥かが主に、そういった守備対応をすることで、3選手の良さをお互い引き出すことで、守備が安定して、堅守を構築に繋がっている。

参考
2022ファジにデータでフォーカス2
「中盤の真田丸(本山丸)」
2022 J2第2節 岡山 1-1 徳島 レビュー
は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6905499896963403777

ヤバス要塞
 語呂を意識して、5柳 育崇の「ヤ」と、23ヨルディ・バイスの「バとス」の二文字を抽出して、「ヤバス要塞」と、表現した。防衛において重要な地点の砦。砲台もある砦のことも指す。高い対人守備だけではなく、ロングパスの精度やセットプレーの得点力があり、まさしく要塞と言える。攻守で強みを発揮できる「ヤバス要塞」として、難攻不落を目指す。

梅田アウォール
 ファジの最後の壁。ファイアウォールに比喩した表現。戦術や個の力、連動性といった攻撃で、ゴールを狙ってくる様々な攻撃をシャットアウトする。そして、バックパスの受け手として、フィードや組み立てる一人として、パス交換(情報通信)。後方からの冷静なコーチング(情報の発信)。多くの情報を整理し、最的確な決断ができるGKである1梅田 透吾の良さを表現したファジ造語。

0バックシステム
 攻撃的で積極的なオーバーラップや得点力のあるCBである5柳 育崇や23ヨルディ・バイスのCBの2選手と、SBが本職である26本山 遥といった流動性のあるDFラインを形成することで、攻守において、自由に動くことで、攻守での手厚い状態を作り、数的不利になりがちな局面で、数的有利の攻撃シーンを演出し、守備でも積極的なアクションで、事前にピンチの芽を摘み、流動性から生じる集中力と緊張感から、カバー&フォローで、リズムを作り出す戦術システムのファジ造語。

木山ファジVer1
 2022シーズンの開幕からトライした新システムの4-3-3。超攻撃的なサッカーで、7チアゴ・アウベス軸とした、自由と個の力を前面に展開していく。選手のコンバートやルーキーの積極起用で、勢いと爆発力があった。攻撃だけではなく、前からの守備でも効果的で、嵌める・奪うから得点に繋げることのできた試合もあった。ただ、対戦チームの対策が進む中で、勝ち点3が遠く、順位を下げて行く中で、4-3-3の戦術的アップデートの一時中断からの路線変更を余儀なくされた。

木山ファジVer2(アップデート予定)
 10節という節目で採用された4-4-2。4-2-2-1-1とも言える形で、4-2-3-1とも言えるが、ダブルボランチを採用することで、攻守での安定感が高まった。有馬ファジの4-4-2とは違い攻撃的な選手と、ロングパスの得意な選手が多く、速攻を主体として、速さ・強さ・高さを前面に出して、ゴールに出したことで、今季のメンバーに寄せた4-4-2である。今後どういったマイナーアップデートで、Ver1(4-3-3)の土壌を活かして、勝ち点3に繋げて行くのか注目される。

筆者紹介
 某ゲームから野球派からサッカー派へと移籍。当時チーム名が、ジェフユナイテッド市原であった現ジェフユナイテッド千葉に興味を持つ。オシム(監督)と阿部 勇樹(選手)を中心にJリーグと代表をチェックしてきた。2008年より地元クラブであるファジアーノ岡山のサポーターデビュー。そこから、多くのファジの試合を見てきた。忘れることのできないエピソードが年々増え、シーズンを重ねる毎に想いは強く深くなり、2021シーズンは、初めて号泣。心からサッカー好きで、戦術の奥深さや、プレーの凄さなど、サッカーの本質での攻防にフォーカスを当てて、客観性と冷静さを意識した文章を投稿している。そのレビューへと突き動かす原動力は、サッカーへの情熱。熱さと冷静さを兼ね備えたフォーカスを今後も目指して、投稿を目指していくことで、サッカーの魅力の発信と、サッカーを通じた交流による、感動の共有と縁の繋がりが、楽しみ。ただ、たまに調子に乗り過ぎて失敗する悪癖もあるので、治したいとは思っている。そんな私ですが、noteやSNS、スタジアム等で、交流できたら嬉しく思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

代表作
2021ファジアーノ岡山にフォーカス46
J2:第42節:ファジアーノ岡山 vs ジェフユナイテッド千葉
「有難う有馬さん、有難う椎名さん、有難うファジ」

は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n511a1b501907

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自分の感じた事を大事にしつつ、サッカーを中心に記事を投稿しています。今後とも、よろしくお願いいたします。