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2023ファジアーノ岡山にフォーカス38『 人と空間との先に~継続と自覚~ 』J2 第27節(A)vsロアッソ熊本


 いつか得点を決めて欲しい。そう願っていたが、その願いはなかなか叶うことなく、長期離脱を強いられる大怪我を何度も経験し、ファジが新たな選手を獲得するために、怪我の間に登録を抹消されることもあった。期限付き移籍も経験して、本当に苦しみに苦しんだ選手。それが、この試合の主役(ヒーロー)となった。

 本稿では、その主役については、もちろん触れるが、メインは「両チーム」にフォーカスを当てていくことを本論としたい。岡山と熊本のサッカースタイルの違いやその中で、繰り広げられた両チームの熱戦の先に決勝ゴールがあったのだ。それでは、よろしくお願いいたします。



2023 J2 第27節 ロアッソ熊本vsファジアーノ岡山
えがお健康スタジアム

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1、「人」と「空間」


 90分間通して、両チームのサッカーを意識的に見比べて見ると、両チームが、それぞれどういった意識を持って、戦っていたのか。見直すことで、より明確となる。これは、90分間通して一貫しているので、試合のどの時間を見ても不変の事実であり、両チームのサッカーの違い、武器の選択の違い、プレーの選択の違いは明確であった。


1-1「人」を意識する岡山

 岡山の選手達の意識として、はっきりあったのが、ボールホルダーに対して厳しく守備をするという意識だけではなく、攻撃する時もボディコンタクトを恐れず(狭い所でも怯まず)仕掛けて行くという、ハリルホジッチ元日本代表監督の言葉を借りると「デュエル」を恐れないというか「前提」としたプレーの選択をしている。

 先制点のシーンは、これが色濃くでたシーンで、接触プレーと狭い所を前進できた事で生まれた得点だ。ここで「スペース」がないと判断して、サイドチェンジするチームや横パスやバックパスで組み立て直すチームもいると思うが、岡山は、「行ける」と判断すれば、積極的に「チャレンジ」していく。

 この仕掛けは、熊本に対しては、非常に有効であって、90分間通して、優位に戦えた点である。そして、特筆すべきは、「デュエル」に勝てたことで「コントロール(支配)」できた点にある。

 熊本の選手を抑えて、その「スペース」を「コントロール(支配)」して「コントール(掌握)」することで、着実に攻撃で前進したり、相手の攻撃を封じることができていた。

 このように、岡山は、90分間通して、「デュエル」を恐れず戦い続けて、「スペース」を「コントロール」してきたのだ。

 また、22シーズンに比べて、「パス」の「比率」も増えており、ドリブルやロングパスに依存せず、崩せるようになった「攻撃の幅」が、今季の岡山が継続して、取り組んで来たことである。この試合では、その部分での成長した姿を存分にプレーで体現できたのではないだろうか。

大木 武 監督(熊本)
「初めから少し、岡山さんの迫力に圧倒された部分がありました。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第27節 熊本 vs 岡山(23/07/24)試合後コメント(監督)
より一部引用。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/072404/coach/

 この後、「岡山」のサッカーの説明のように「熊本」のサッカーに言及した上で、両チームが、どう戦って行ったのかを2〜4章の3篇構成で、試合を振り返っていきたい。


1-2「空間」を意識する熊本

 実は、岡山と対極にあるサッカーであったのが、熊本のサッカーである。岡山は「人」を意識してプレーしていたが、熊本は「空間」つまり「スペース」を意識してプレーしていた。

 そのため、熊本の「デュエル」を伴うプレーは必要最低限であり、「デュエル」を選択した時のプレーの成功率は低く、イエローカードを掲示されてしまうシーンもあったぐらいだ。

 逆を言えば「デュエル」を「得意(武器)」としない「別の武器」を持った選手を中心に編成していたということで、実際に、岡山と違った守り方や攻め方を行っていた。

 それは、1-2の冒頭で述べた「空間(スペース)」を意識した攻守での選択を熊本は、選択してきていた。攻撃のスペースは意識し易いかと思うが、シンプルに全選手が、岡山の選手が「間(スペース)」にポジション取りや動き出しをすることで、岡山の守備ブロックの「無力化」していた。

 岡山の選手が、接触プレーやタックル、空中戦といった「人」つまり「対人守備」でボールを「コントロール(掌握)」しようとする狙いを回避することで、そのチャンスすら与えず、シュートまで持っていっていたが、熊本は、岡山とは違い、「空間」を「コントロール(支配)」することで、試合を「コントロール(掌握)」しようとしていた。

 そして、守備では、「人」ではなく「空間」をした守り方。「スペース」を埋める「ポジショニング」や「パスコース」を予測する「ポジショニング」をすることで、岡山の直接的な攻撃を失敗させることで、流れを「コントロール(掌握)」していこうという守り方をしていた。

 ダゾーンで、確認していただければ、どの時間帯でも同じで、囲い込んでも人にいかない(ボールを岡山から直接奪おうとしない)。本当にチャレンジできそうな時か必要な時しか「デュエル」に挑戦しない。

 熊本としては、ピッチを広く使って、「スペース」を広げて、その間を素早いパスワークで崩していく攻撃と、自陣のスペースを埋めつつ、パスコースにポジション取りをすることで、蜘蛛の巣ように岡山のパスを絡めとるという狙いを持っていた。

8上村 周平 選手(熊本)
「今日は押し込んでから逆に変えながら進入していくことは意識していて、前半もそれがチャンスにつながっていました。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第27節 熊本 vs 岡山(23/07/24)試合後コメント(選手)
より一部引用。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/072404/player/

 この両チームの明確なスタイルの違いの戦いの内容や結果を次章では触れいて行く。


2、スタートダッシュと主張~前半~


 岡山は、最初の10分だけ人数をかけて、強度の高いプレスを仕掛けて、先制点を狙って行くという作戦を準備していた。いくらフレッシュな状態とは言え、最初は厳しく行くという方針でなければ、これだけ岡山がハイプレスをかけていくということはできないはずだ。

 それもその筈である。この試合では、FWが48坂本 一彩→8ステファン・ムーク、右WBが16河野 諒祐→17末吉 塁へとメンバーを変更されていた。このメンバー変更の意図は、前からプレスをかけていくという狙いそのもので、そういった強いメッセージが込められている。

 ただ、それを90分間続けるには、ピッチコンディションは厳しく、最も効果的な時間に仕掛けるという事で、最初の10分だけという条件で、仕掛けていたことが、予測できる。その時間の内に先制できなかったのは残念だが、この時間帯での岡山は、ボールホルダーに対して、違う選手がトライし続け、苦し紛れのパスをハイライン(前掛かり)になった後方選手が、インターセプト(パスカット)して、そのまま2次攻撃に繋げることができていた。

 十分効果を上げた立ち上がりであったが、先制できなったことで、ここから我慢の時間が仕入れられる。岡山は、守備の重心をおいて、ボール奪取する機会を待つ戦いにシフトした。

 ボールホルダーに対して、ボール奪取の機会を窺う岡山と、ボールホルダーのパスミスを誘発させる守り方の熊本、そういった関係性での両チームの攻防が見て取れた10分以降の戦いであった。

 その攻防の末に両チーム1点ずつ決めたが、それもまた両チームの狙い通りの得点であった。

 岡山の得点は、狭い所と強さと巧さで、前に前進すると、最後は俊敏性と意外性と創造性に富んだ14田中 雄大の技有りのターンからのシュートが決まった。

↓14田中 雄大の得点シーンから流れます。
※注釈:閲覧している端末によっては、公式動画(YouTubeの画面)に飛びますので、ご注意下さい。※

 熊本の得点も岡山のDFの人数が揃ってそうな中にスペースを見出すと、岡山に守備のチャレンジをさせることなく、僅かなパスコースとシュートコースを見つけて、得点まで繋げた。

↓14竹本 雄飛の得点シーンから流れます。
※注釈:閲覧している端末によっては、公式動画(YouTubeの画面)に飛びますので、ご注意下さい。※

8上村 周平 選手(熊本)
「僕自身は前節よりは攻撃しやすく感じました。自分のところで言えばシュートも打てたし、点も取れたので、そこはポジティブな点です。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第27節 熊本 vs 岡山(23/07/24)試合後コメント(選手)
より一部引用。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/072404/player/

 まさに両チームの駆け引きや狙いというのが、色濃くでた前半となった。


3、譲れない主導権と執念~後半~


 後半となると、自分達のやりたいサッカーを体現することが難しくなってくる。双方とも選手を5人フルに投入することとなった後半。基本的に、前半の流れを踏襲したものとなっていたが、疲労が顕著であったのは、岡山の方である。

 人に行くという事は、プレーの強度も高く、それに伴う疲労も熊本以上である。こないだの湘南戦の敗退のように、基本的に岡山は、全員守備全員攻撃の意識が高いチームで、後半は足が止まっても不思議ではないぐらい疲労していて、気持ちで戦うが、最後は、プレーの質で敗れるという事を何度も繰り返して来たのが、岡山である。

 対して、熊本は、チームのバランスを意識して、組織でのボール奪取を狙っている事もあり、巧くペース配分できる戦いができている。ただ、サッカーである以上、相当な距離を1試合で走らないといけない事に加えて、「頭(知性)」も使うスポーツなので、精神的な疲労は、どうしても避けては通れない。

 両チームともこの部分のクオリティは、前半よりは落ちていたかもしれないが、気持ちで正確なプレーや強度の高いプレーを維持していたが、前述した通り、流れは熊本の方にやや傾いていた。

 これは、両チームの体感としての認識としてどうであったかは別であると思うが、両チームとも自分達のスタイルを崩さず戦えていた。

 両チームともクオリティを維持するために、選手交代のカードを切ったが、ここで、岡山は、気持ちで戦える選手を軸に投入している。熊本もよりフレッシュにして行く中で、よりアグレッシブなサッカーで、ゴールに迫る意図を感じられた。

 岡山の選手交代の動きが早かった事からも前半のスタートダッシュを含めて、チームとしてハイペースであった事が感じられた。19木村 太哉や48坂本 一彩、6輪笠 祐士の強度の高く、気持ちも籠ったプレーは、チームとしての粘りを維持することができた。16河野 諒祐の冷静なプレーも熊本としては、嫌であったであろう。サイドの攻防でクロスまで行くシーンを何度か作れていた岡山。

 41田部井 涼の精度の高いCKから決定機を作るも決めきれない。18櫻川 ソロモンが裏へ抜け出しそうなシーンもあったが、熊本も最後の所は、1田代 凌駕の思いきりの良い飛び出して防ぐなど、繰り返しになるが、両チームともハードに気持ちも落さず、プレー強度も落さず戦えていた。

 そして、こういった膠着状態で、良く言われる事は、気持ちが強い方が、勝つという事である。誤解しないで、欲しいのは、熊本に気持ちが足りなかったのではなく、この試合では、上手く気持ちを結果に反映できなかったという捉え方が正確と言える。

記者(インタビュアー)
--6戦勝ちがない状況ですが、次節の長崎戦に向けて修正、改善すべき点は?
14竹本 雄飛 選手(熊本)
「やっぱりいまはメンタルだと思います。勝っていないのでどうしてもマイナスになって、「失点したらどうしよう」という考えにもなってしまうと思うんですけど、全員が「やってやる」という気持ちにならないと、この状況は覆せないと思います。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第27節 熊本 vs 岡山(23/07/24)試合後コメント(選手)
より一部引用。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/072404/player/

 そして、勝負を分けたアディショナルタイム。劇的な展開が待っていた。


4、この時のために~決着~


 アディショナルタイム。その時がやってきた。87分に22佐野 航大と変わり、そのまま左WBに入った32福元 友哉。本当であれば、右サイドであるが、この試合は、左サイドであった。この木山 隆之 監督の判断が、決勝ゴールを生んだ。

 スペースを埋める事ができていた熊本であったが、32福元 友哉が、サイドの裏でフリーとなっていた。ボールホルダーの岡山の選手の周りに岡山の選手が2人、そこに熊本の選手が3人という同数で、ボールを巡る攻防が行われていた。そこからパスが出てきたことで、32福元 友哉が受ける。

 当初は、クロスかパスを入れて行く意識であったが、ボールコントロールがずれた事で、シュートへと判断が切り替わった。見返してみると、熊本の守備対応もまるで、そのシュートコースへと誘導してしまうような対応になってしまい。そのコースをを消す事ができていなかった。

 ここまで、粘り強く守れていた熊本の綻びがあったとはいえ、そうして出来たシュートコースから、迷わず右足を振り切ったシュートは、ここにしかないコースの軌道を描いて、ゴールに吸い込まれて、ゴールネット揺らした。

 会場にこだました悲鳴とも聞こえる歓声が、スタジアムに画面越しで、まるでその場にいるかのように、そのゴールの感動が伝わって来た。書いていても涙がでてくる。32福元 友也のゴール。

 過去にも天皇杯で、得点を決めた後の彼のプレーは、まさにこれからビックな選手になっていく。そういった予感めいたプレーができたいた過去の32福元 友哉のプレー。しかし、その直後に大怪我をして、復帰した後も満足にプレーできずに、再び怪我で離脱する。そういった繰り返しであった。

 今季は、レンタルから復帰した32福元 友哉であるが、サイドへとコンバートされていた。岡山の強力なFW陣が揃っていることで、来るかもしれない出場機会を少しでも増やすための、木山監督の判断であった。

 天皇杯で、右WBでの32福元 友哉は、デビューした。90分間通してのクオリティやプレー強度こそ維持できなかったが、前半のキックの多彩さを観て、そのキックの技術からシュートの巧い選手であったのだと初めて知った。

 しかし、思わぬ形でチャンスが巡ってきた。藤枝戦で7チアゴ・アウベスが、負傷交代してしまった。サイドでの起用で想定されていたが、FWでの起用。バーに弾かれる惜しいシュートもあったが、ゴールに着実に近づいていた。

 19木村 太哉の復帰に伴い、FWではなく、再びサイドの起用が主戦場となってきた32福元 友哉。そして、その時を迎えたのである。右ではなく、左サイドであのゴールが生まれた。しかも、値千金の決勝ゴール、そして、今季の岡山のベストゴールとも言える芸術的な得点であった。

↓32福元 友哉の得点シーンから流れます。
※注釈:閲覧している端末によっては、公式動画(YouTubeの画面)に飛びますので、ご注意下さい。※

 あの時の32福元 友哉が、リーグ戦で、点を決められる選手へと成長を遂げた瞬間であった。そして、同時に、これからは、このゴールと同じ、いやそれ以上の得点への期待を背負って戦う32福元 友哉の伝説が、ここから始まるのだ。

 大袈裟かもしれないが、岡山を長く観てきた人であれば、そういった想いが強いのではないだろうか。ずっと待っていた得点が、最高の形で生まれた。これからの32福元 友哉の活躍を信じて、これからも応援していきたい。

 そして、最後まで32福元 友哉を主役にするために、チーム一丸となってこのリードを守り切って、岡山は、勝利を手にした。それは、この試合の主役が32福元 友哉となった瞬間でもあった。

32福元 友哉 選手(岡山)
「今年はサイドバックやウイングといろいろチャレンジさせてもらっているが、それでも自分がエースになると思ってやっているし、そういった中で得点を取ってチームを勝たせることができたのは良かった。離脱も長く先が見えなかったりしたこともあるが、それでもトレーナーを始め支えてくださる方がたくさんいたので、そういった方々にも少しは恩返しになっていたら良いなと思う。これからも決めて、より感謝の思いを伝えていきたい。」


5、頂の目指し方~自覚~


 現実的に考えた時に、今季での「頂」を目指す上では、強化部のサポートというのは、前任者が主導で行って来た補強と比べて、物足りない。これは、紛れもない事実である。しかし、もう「市民クラブ」として、J1を目指すタイムリミットが迫っているのに、勝負をしかけない死に物狂いの補強に動かないのか。

 それは、やはりサポーターと同様にファジアーノ岡山というクラブも「資金力」に頼った方法では「頂」に到達できないという「自覚」が芽生えたからであることは間違いない。

 つまり、真相としては、「自信満々」というか確かな手応えを持って、迎えた開幕であり、そこからの戦いであった。ただ、それでも「頂」を目指す上では、足りなかった。木山 隆之 監督が、育成型の監督であるという認識と、そういった選手を起用することが巧い監督という事もあり、そういった選手を中心に獲得したのは、資金力で劣る岡山の「苦心」だけではなく、少なからず「自信」もあったはずだ。

 それが、打ち砕かれた時に、「資金力」を全面に出した補強ではなく、2~3年先を見据えた「将来性」の補強に動く。これも判断としては悪くない点でもある。

 ただ、そうなった時に「頂」という目標設定に対してのアプローチとしては、不十分である。まだ移籍期間はあるので、その部分に対して、岡山がどういった「解答」を出すのか。それとも、方針変更の先を見据えた「将来性」の補強に動くのか。個人的にというか、そこは皆さんが注視されている点ではないだろうか?

 さて、この章のサブタイトルの「自覚」だが、とある選手のストライカーとしての「自覚」に大きな期待を抱いている。

 それは、18櫻川 ソロモンだ。

 実は、この試合3度得点を決められる可能性があった。最初のオフサイドになったシーン。2点目は、48坂本 一彩が、GKの進路を塞いだ事に対してのファールで無効になったCKでのヘッディングシュート、3点目は、試合の最後で決めきれなったシュート。

 特に最後のシーンに関しては、迷いなく強烈なシュートを放てており、疲れている時間帯でありながら、しっかり枠内に飛んでいるように見えた。ゴールに限りなく近づいているが、それを決められない。

 そういった不満を隠せなくなってきている。いや、隠さなくなってきている所に、ストライカーの「エゴ」の「自覚」を感じられる。この部分は、実は、18櫻川 ソロモンに最も足りなかった点で、優しさ故に、味方へのパスを選択する事やシュートミスを恐れて、置きに行くようなシューとも多かった。

 こういった意識の変化が、単にメンタル的な不調な不満ではないと筆者は考えている。それを象徴するのが、32福元 友哉が、得点を決めた後の18櫻川 ソロモンの仕草だ。ハイライトに、はっきりとは映っていないが、頭に手を当てているのだ。これは、本来「マイナス」の意味を持つ行為で、恐らく「嫉妬」に近い感情であるだろう。実際に、32福元 友哉のゴールを喜ぶ輪に加わっていない。

 しかし、これは、ストライカーには、必要な面もある意識で、ストライカーの仕事は、他のストライカーより、点を決めないといけないポジションである。だからこそ、「闘争心」や「負けたなくない」という気持ちは、必要不可欠なのだ。

 頭に手を抱えて、ゴールの輪に近づかなかった18櫻川 ソロモン。チームとしては、「問題行為」とも言えるかもしれないが、ストライカーとしての「自覚」の「兆候」を筆者は、察知した。この試合のプレーが、向上したのも感情を表に出す7チアゴ・アウベスに感化さえた部分もあるかもしれないし、32福元 友哉のゴールに刺激を受けたのかもしれない。

 いずれにせよ、真の意味でのストライカー18櫻川 ソロモンの誕生の日は近いのではないだろうか?そう信じたい。そして、この試合でもしっかり守備をして、最後までゴールを狙い続けたプレーは、32福元 友哉のゴールと同じぐらい評価されるべきかと思うが、ストライカーである以上、32福元 友哉のように「ゴール」を決めるしかない。

 岡山のやりたいサッカーを体現した上で、チームとしての成長を示し、32福元 友哉の劇的決勝ゴールで、勝てていなかった熊本に勝利できた。

 今後の「頂」への可能性を残すためには、この勝利や気持ちを次節以降に繋げて欲しい。その先に、今季の昇格が無理であっても、先の景色が見えてくるかもしれない。岡山らしさ。岡山の成長。岡山の進化。そういったものを内容から結果に繋げていく。木山マジックの可能性を信じて、可能性がある限り、最後まで応援していきたい。

木山 隆之 監督(岡山)
「最後1つ取れたのは、福元も含めて日頃努力している部分が出たと思う。」

ファジアーノ岡山公式HP
J2第27節 ロアッソ熊本戦 監督・選手コメント
より一部引用
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/202307242200/

文章・画像=杉野 雅昭
text・photo=Masaaki Sugino


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