2022ファジアーノ岡山にフォーカス19 J2:第15節~24節「天秤と選択」Part1(千葉戦~群馬戦~大分戦)

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逝去したイビチャ・オシム氏のご冥福をお祈りいたします。

1、オシムの力

15節:ジェフユナイテッド千葉vsファジアーノ岡山(Away)

 千葉に深い関りがあったことで、当時の選手などが集まりオシム氏の追悼の式典が行われた。岡山に関わる選手も呼ばれていたようで、本当に多くのサッカー関係者に愛された存在であったことを強く感じる。私が千葉を応援していたこともあり、尊敬する監督の1人である。

 試合の方は、この試合から岡山がスタイルチェンジに踏み切った。正確には、踏み切ったように映った。この前の試合までは、ロングパスを主体としたサッカーを展開していた。この試合でもそのスタイルで、鬼門とも言える千葉の地で、リーグ戦初勝利を狙って行くと思っていた。

 しかし、開始してからロングパスを蹴り込まず、後で繋ぎ前に運ぼうとするサッカースタイルであった。全面が見えないことで、15ミッチェル・デュークへのマークが厳しかったのか、そういったサッカーなのか、突然の方針転換で、判断できなかった。対する千葉はまさに千葉のスタイル。フクアリでの千葉は、とにかく守備が安定している。フクアリでの千葉に対して、岡山はシーズンごとの特色があるが、毎試合そのスタイルができず、為すすべなく敗れてきた。

 ただ、今季の岡山は例年以上に、スペシャルな選手が揃っていて、1梅田 透吾や27河井 陽介といった主軸選手の怪我の影響は大きいとはいえ、それによって連敗を重ねるというように依存はしない分厚い選手層である。よってスタイルチェンジこそしたが、苦しいゲーム展開であっても複数失点が少ないことが示すように負けない安定感と、無得点の試合が少ない高い得点力もある。

 そうであっても鬼門フクアリにおいては、やはり勝てない。オシム氏のために勝利を捧げるという鬼気迫る千葉の前に、決定機をほぼ作れず、岡山の新スタイル?の影響もあり、手堅く後半の終盤戦に入ろうという場面であった。岡山が、得点を奪うために全力プレーをしかけようと、交代カードを準備していたところで失点してしまった。

 ここからギアをあげて攻めて行こうという場面であったために、慌てて3枚投入して、同点から逆転するためにギアをあげていこうとする。しかし、本当に守備が堅いチームは、その攻め手すら許して貰えない。後ろで回す事で、前線の選手のエネルギーは残っていて、5柳 育崇を入れて、パワープレーを仕掛けるも攻めきれず、そのまま1-0で敗れた。

 鬼門フクアリの相性の悪さや、新スタイルに挑戦?した影響ももちろんあったが、やはり、オシム氏の見えない力が、千葉の守備をより堅くした。そして、岡山も、3連勝中のスタイルを変更してでも新たなスタイルに挑戦する決断をした。

 中国の三国志には、こういった言葉がある「死せる孔明生ける仲達を走らす」。本当に影響力のある人は、死後でもその影響力がある。オシム氏が千葉や日本サッカー界に残したものは、測り知れない。「考えて走る」という言葉も、言葉の形態や意味などは、変化していくかもしれないが、その形を変えても日本サッカーを前進させていく言葉として語り継がれていくだろう。

 オシム氏の偉大さを強く感じたと同時に、オシム氏のDNAが残っている千葉の強さと、オシム氏への感謝の気持ちを強く抱いた。連勝こそ止まったが、どこか清々しいものがあり、負けた悔しさ以上に、千葉のように岡山も次に向けて少しずつ進むしかない。そういった気持ちになった試合であった。

2、明確な意図

16節:ファジアーノ岡山vsザスパクサツ群馬(Home)

 この試合でも後ろでしっかり繋ぐという意思統一がチームとして共有されていた。千葉の戦い方も関係していた点は、完全に否定できないとはいえ、繋ぐことに力を入れたことで、木山 隆之監督の意図が見えてきた。

 ここ3連勝していた時期は、ロングパス主体で、15ミッチェル・デュークの高さやスピード、運動量といった部分を軸に戦っていた。この結果、15ミッチェル・デュークへの依存度が高くなったことで、下がった後のチームパフォーマンスの著しい低下がチームの課題となっていた。

 合わせて、ロングパスを主体にして、リトリートするというよりは、前線から最終ラインまで、囲い込んで奪うという4-3-3でも採用していたような高い運動量を擁する守備スタイルの方針が少し残っていた事で、全体的にオーバーワークになっていた。

 そこで、ロングパスを控えめにすることで、チームとしての消耗を抑える事で、先制逃げ切りから90分間のトータルで計算して戦うスタイルの模索。合わせて、その負担を抑える事で、チームとしての怪我のリスクを下げる狙い。これは夏場に向けて、厳しいピッチコンディション下で戦うことを考えると避けては通れない道であった。

 方針転換に踏み切るほど、27河井 陽介と41徳元 悠平の1試合での負傷交代のダメージは、チームとして大きかった。しばらくロングパス主体の攻撃を続けることによって、しばらくは好調を維持できていのかもしれないが、15ミッチェル・デュークが離脱する期間や過密日程を考慮すれば、そこに向けての対策することは極めて自然である。

 ただ、それが、すぐに結果に繋がる。もしくは、正解かどうかは、その後の戦い方次第である。少なくともこの試合では、繋ぐ事に意識が行き過ぎて、後で回すだけになっていた場面も散見された。中盤でのアグレッシブなプレーは、千葉戦と群馬戦でも共通していて出来ていた。

 千葉戦では、手堅く戦った結果、ギアをあげきる前に、試合を終えられてしまい不完全燃焼であったので、この試合では、前に運ぶことにも力を入れていた。繋ぐスタイルに適性の高い11宮崎 智彦の今季初スタメンで、縦に入れて行く点の強化を図って来た。23ヨルディ・バイスの群馬のプレスの上を浮き球によって通すパスも取り入れ、できる限りの修正をしてきたように映った。

 一定の成果がでたことで、サイド攻撃やセットプレーで好機を作るも決めきれなかった。逆にCKを直接決められてしまい。今季初の連敗を喫した。ゴール前に押し込む部分と、高い位置でのプレーする部分での課題を残したことで、一定の手応えを掴めた試合となった。

3、岡山の武器

17節:ファジアーノ岡山vs大分トリニータ

 試合で、力を入れてきたポゼッション。ペース配分とパスを回して主導権を握って、自分達の形で、ゴールを破る。90分間で、自分達の時間を長く作って戦う。そういった方針であったのかも分からないぐらい大分にボールを保持するだけではなく、前からプレスや中盤の守備網を突破されて、サイドや裏のスペースを突かれて、危険な形を作られた。

 ただ、この試合で、初スタメンで守護神を任された35堀田 大暉のファインセーブの連発で、大分の攻撃を凌ぎ、無失点に抑えたことで、終了間際にリザーブスタートとなった7チアゴ・アウベスが劇的な決勝ゴールを決めて、逃げ切りに成功した。木山 隆之監督からこの試合の開始前に「今日は、チアゴが決めて勝つ」という趣旨の事を7チアゴ・アウベス本人に伝えられており、奇しくもそういった形で勝利することとなった。

 一度は、ネットを揺らされて失点したかと思われたが、GKがキャッチした所に体にぶつかったことで、こぼした所を押し込まれたことで、旧キーパーチャージという判定に助けられた部分もあって、試合後の抗議で、3三竿 雄斗のイエローカードが掲示されて少し後味の悪い終わりにこそなってしまったが、岡山の粘り強い守備と、大分の主導権を握るポゼッションの攻防は見応えのある一戦であった。

 岡山のポゼッションに対する拘りというのは、開幕当初からの木山 隆之監督の目指すサッカーの理想的な形として、形を変えつつではあるが挑戦してきた形である。しかし、DFラインで繋ぐ段階に留まり、結局は、ロングパスを軸とした形へとなっていた。今後も中盤を経由して、ダイレクトパスなどを交えつつ、前線に運ぶ。もしくは、前線での崩しの手段として磨いていくこととなると思うが、現状は、そういった特色のあるチームの完成度と比べると、岡山の完成度は、スタート地点に近いのが現状である。

 一方の大分は、声とジェスチャーを屈指した細かいコーチングにより、パスの方向やポジショニングの修正が常に行われて、他のチームでは、選ばないボールロストの危険性のあるパス回しも難なく繋いでいた。いや、簡単に繋ぐように見えるが、岡山の23ヨルディ・バイスや5柳 育崇の力強い守備の安定感のように、レベルが高いからこそできるブレないポゼッションを体現されていた。

 この差は、大きくシュート数を見ても岡山の6本に対して、大分は14本と倍以上も打たれたが、それでも勝利できた。35堀田 大暉の安定感ももちろん大きかったが、26本山 遥と6喜山 康平の中盤の安定感、23ヨルディ・バイスと5柳 育崇の対人守備の強さといった守備の力。そして、全てを無にする7チアゴ・アウベスの個の力や15ミッチェル・デュークの異次元のフィジカルの強さ。

 こういった個の力と堅い守備が、岡山の武器であると改めて感じた試合となった。それでもやはり、35堀田 大暉のファインセーブがなければ、大量失点で負けていても不思議ではない内容であった。それだけ大分のパスによる組み立てと崩す力は、高いものがあった。2巡目の対戦では、この差をどこまで縮めることが出来ているかで、岡山の立ち位置は、そのまま順位になっているかもしれないと感じた試合。

Part2に続く。

文章=杉野 雅昭
text=Masaaki Sugino

ファジ造語

チアゴ・タイム
 7チアゴ・アウベスのプレーの一つ一つにサッカーを楽しむという遊び心があり、そこに技術が伴った左足の凄さを称えて「悪魔の左足」と、呼ばれている。その左足を活かして、何処からでも何時でも狙っていて、7チアゴ・アウベスが出場している時間帯は、岡山の大きな得点源と言える。

本山丸(イメージは真田丸)
 大阪の陣で、大阪城に迫る徳川の軍勢に対して、真田丸は、大阪城の弱点を補う出城として築かれた。23ヨルディ・バイスと5柳 育崇の弱点は、釣り出されたときや、スピードであるが、26本山 遥かが主に、そういった守備対応をすることで、3選手の良さをお互い引き出すことで、守備が安定して、堅守を構築に繋がっている。

参考
2022ファジにデータでフォーカス2
「中盤の真田丸(本山丸)」
2022 J2第2節 岡山 1-1 徳島 レビュー

は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6905499896963403777

ヤバス要塞
 語呂を意識して、5柳 育崇の「ヤ」と、23ヨルディ・バイスの「バとス」の二文字を抽出して、「ヤバス要塞」と、表現した。防衛において重要な地点の砦。砲台もある砦のことも指す。高い対人守備だけではなく、ロングパスの精度やセットプレーの得点力があり、まさしく要塞と言える。攻守で強みを発揮できる「ヤバス要塞」として、難攻不落を目指す。

梅田アウォール
 ファジの最後の壁。ファイアウォールに比喩した表現。戦術や個の力、連動性といった攻撃で、ゴールを狙ってくる様々な攻撃をシャットアウトする。そして、バックパスの受け手として、フィードや組み立てる一人として、パス交換(情報通信)。後方からの冷静なコーチング(情報の発信)。多くの情報を整理し、最的確な決断ができるGKである1梅田 透吾の良さを表現したファジ造語。

0バックシステム
 攻撃的で積極的なオーバーラップや得点力のあるCBである5柳 育崇や23ヨルディ・バイスのCBの2選手と、SBが本職である26本山 遥といった流動性のあるDFラインを形成することで、攻守において、自由に動くことで、攻守での手厚い状態を作り、数的不利になりがちな局面で、数的有利の攻撃シーンを演出し、守備でも積極的なアクションで、事前にピンチの芽を摘み、流動性から生じる集中力と緊張感から、カバー&フォローで、リズムを作り出す戦術システムのファジ造語。

木山ファジVer1
 2022シーズンの開幕からトライした新システムの4-3-3。超攻撃的なサッカーで、7チアゴ・アウベス軸とした、自由と個の力を前面に展開していく。選手のコンバートやルーキーの積極起用で、勢いと爆発力があった。攻撃だけではなく、前からの守備でも効果的で、嵌める・奪うから得点に繋げることのできた試合もあった。ただ、対戦チームの対策が進む中で、勝ち点3が遠く、順位を下げて行く中で、4-3-3の戦術的アップデートの一時中断からの路線変更を余儀なくされた。

木山ファジVer2(アップデート予定)
 10節という節目で採用された4-4-2。4-2-2-1-1とも言える形で、4-2-3-1とも言えるが、ダブルボランチを採用することで、攻守での安定感が高まった。有馬ファジの4-4-2とは違い攻撃的な選手と、ロングパスの得意な選手が多く、速攻を主体として、速さ・強さ・高さを前面に出して、ゴールに出したことで、今季のメンバーに寄せた4-4-2である。今後どういったマイナーアップデートで、Ver1(4-3-3)の土壌を活かして、勝ち点3に繋げて行くのか注目される。

筆者紹介
 某ゲームから野球派からサッカー派へと移籍。当時チーム名が、ジェフユナイテッド市原であった現ジェフユナイテッド千葉に興味を持つ。オシム(監督)と阿部 勇樹(選手)を中心にJリーグと代表をチェックしてきた。2008年より地元クラブであるファジアーノ岡山のサポーターデビュー。そこから、多くのファジの試合を見てきた。忘れることのできないエピソードが年々増え、シーズンを重ねる毎に想いは強く深くなり、2021シーズンは、初めて号泣。心からサッカー好きで、戦術の奥深さや、プレーの凄さなど、サッカーの本質での攻防にフォーカスを当てて、客観性と冷静さを意識した文章を投稿している。そのレビューへと突き動かす原動力は、サッカーへの情熱。熱さと冷静さを兼ね備えたフォーカスを今後も目指して、投稿を目指していくことで、サッカーの魅力の発信と、サッカーを通じた交流による、感動の共有と縁の繋がりが、楽しみ。ただ、たまに調子に乗り過ぎて失敗する悪癖もあるので、治したいとは思っている。そんな私ですが、noteやSNS、スタジアム等で、交流できたら嬉しく思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

代表作
2021ファジアーノ岡山にフォーカス46
J2:第42節:ファジアーノ岡山 vs ジェフユナイテッド千葉
「有難う有馬さん、有難う椎名さん、有難うファジ」
は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n511a1b501907

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