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2021ファジアーノ岡山にフォーカス16 J2:第13節:千葉vs岡山(Away) 「千葉のサッカーの印象と思う所、11宮崎 智彦の可能性、最初の失点と選手の言葉から見える課題」

1、 前置き

アウェイの千葉戦では、天皇杯を除いては、J2リーグ戦で未だ勝利無し。昨季は、あと少しという所まで肉薄していたが、怪我の選手が多くなってしまった事で、戦力が著しくダウンしている。とはいえ、千葉も未だホームでの勝利無しに加えて、複数得点が未だ無し。もしかすると、勝利出来るかもしれない。しかし、現実は甘くなく、守備崩壊の4失点。

しかしながら、千葉と言えば、J1で長く戦って来たチーム。それが今では、J2のチームというイメージが強くなってしまった。ライバルチームである柏が、J1とJ2を行ったり来たりこそしているが、シーズンによっては、タイトルに手が届くチーム状態の時がある。J1に上がった事がないチームであるならば、悲願として目標として応援し易いかもしれない。

もしかすると、岡山の様にJ2に停滞していたらそれも難しくなるかもしれないが、それであっても心の中で、いつかはJ1でという思いは強いはずである。しかし千葉視点に立つと、J1のチームであった誇りというのは、傷つけられているのも事実であるし、何故J1に戻れないのかという思いは、どうしても抱いてしまうだろう。

J2歴が長くなって行く中で、千葉の代表的な選手というのが少なくなってきている様に思う。J1のナビスコカップ(当時)を制した時の黄金期には、イビチャ・オシム監督の時。当時は、千葉の試合が楽しみでよく見ていた。圧倒的なプレースキック精度を誇ったアベッカムこと阿部 勇樹、脅威的な運動量を誇った羽生 直剛、阿部からプレースキッカーの座を奪った水野 晃樹、粘り強い守備の水本 裕貴、高精度のキックと驚異的な攻撃参加の回数を誇ったイリアン・ストヤノフ、利き足が頭で有名となった巻 誠一郎、遠藤 保仁のPKを唯一2度止めたGK立石 智紀などなど、錚々たるメンバーであった。

千葉の黄金期は、イビチャ・オシム氏を日本代表監督に引き抜かれた事で、徐々にチームは崩壊していった。あまりにも大きすぎたイビチャ・オシム氏の存在が、その反動となって、多くの選手の流出に繋がり、チームとしての基盤を失い、選手・監督・フロント・サポーターの意識のズレというのが、生じてしまう事となり、チームとしての勢いといううねりを作れないでいる。

千葉のサッカーを取り戻す。もしくは、千葉のサッカーを作り上げる。そこに毎シーズン挑戦し、監督や選手の入れ替わりがあったが、なかなか千葉のサッカーを作れないでいる印象である。そう考えると、岡山も岡山のサッカーでの勝利の方程式を作れず、J1に有力選手を引き抜かれている事を考えると、ある意味、同じ課題で、苦しんでいるライバルチームとも言える。

サッカーに主導権を握る良い時間と悪い時間がある様に、チームのシーズンにも悪い時期と良い時期がある。千葉にとっては、悪い時期が続いているが、岡山も良い時期から悪い時期(チームとしての立ち位置が下降している)に差し掛かりつつある。チームとして、どう上に昇るのか。もしくは、そこからどう維持するのか。落ちるのは簡単だが、昇るのは難しい。

そういった歴史こそ違うが、J2でもがいている岡山と千葉の一戦。岡山が、千葉にもし勝つとするならば、J1に昇格するぐらいの勢いがある時かもしれない。徳島が、岡山に勝ってJ1に昇格した様に、相性をも覆すうねりというのを、どう起こせるか。少なくともこの試合では、それを両チームとも感じる事ができなかったが、前進するためにも悔しい守備崩壊で、惨敗した千葉戦を振り返っていきたい。

メンバー:2021ファジアーノ岡山「第13節vs千葉(Away)」

2、 千葉のサッカーの印象と思う所

今季の千葉も尹 晶煥監督が率いているが、尹監督の率いるチームは、フィジカルコンタクトを重視しているイメージがあるが、そこをベースに、3-4-2-1の中央を固めて、WBと2シャドーとCFが流動的に動く中で、サイドから崩していくというサッカー。以前多かった3バックの支配率を高めるというサッカーで、組織的に攻めることや組織的に守るといったチームではなかった。

ボール奪取を狙う千葉式3-4-2-1の守り方としては、中央を開けない形で、サイドに誘導する形を採用していた。これは、ボールを奪ってサイドを逆襲するといった狙いというよりは、失点する確率を少しでも下げるためで、サイドからの攻撃で、クロスやそこからのドリブルでシュートを打たれても、中央を固めて守ろうといったサッカー。

スコアが、4-1となった時に、前らからのプレスをほぼしてくることなく、恐らく普段の試合であれば、1点差リードした段階で、こういった守り方で、逃げ切るサッカーをしていることが窺える。ただ、恐らく、1点差でないことからいつもよりは、寄せは緩かったと言える。ある程度、3点差の様に開くと、ある程度、攻撃を受けてカウンターで追加点を狙おうというチームと、千葉の様に守備を固めるチームの2パターンではあるが、それでも緩かった。

とはいえ、4-2というスコアになった直後の千葉の選手の表情を見ていると、失点していて笑顔で悔しがる姿には、正直岡山サポとしては悔しかった。と、同時に前置きでも書いたが、千葉の黄金期にTV中継があった時に観戦していた身としては、非常に残念な気持ちを抱いた。生粋の千葉サポーターの方が、その辺りどう思っているかは、気になる所ではある。

岡山が、そういった大差のゲームを少なく、そういったシーンをあまり見ることができないが、失点して悔しがる所で、笑顔がでる。これは、千葉の深刻な問題を物語っている。大差が開いて、余裕があり、今季初の複数得点どこから4得点、ホーム初勝利が近く事を考えると、感情を抑えきれないかもしれないが、王者のメンタリティを持つ鹿島では、こういった表情をするだろうか。

尹監督を持ってしっても千葉を勝利に徹するチームに出来ないのか。岡山サポではあるが、サッカー観戦好きとしては、千葉のサポーターであった身としても、こういった表情をしても心から見捨てる事はないが、J1に上がって欲しいサポからすると、複雑な心境ではないかと察する。個人的には、今でも千葉というチームには、特別な感情を抱いているが、チームとしての変貌ぶりには、驚いた。

千葉の選手を観てみると、岡山のDF陣を翻弄した49サウダーニャ、ドリブルで、岡山の右サイドを搔き乱した22小田 逸稀。岡山の誇る41徳元 悠平の左サイドを崩した途中出場の33安田 理大。J1に昇格するポテンシャルのあるチームであり、千葉がJ2に降格した時には、J1にすぐに上がれるだろうと私自身も思っていたが、長崎や大宮の苦戦を見ていると、J2が恐ろしいリーグだと改めて感じる。

そこで、J2で長く戦えている岡山をJ1に上がれないから弱いわけではなく、千葉もJ2に長く戦えていて、一定の順位をキープしている事からも1つのきっかけで、J1に届くチーム。守備型の3-4-2-1の守備の粘り強さや、フィジカルコンタクトでの球際に負けない強さ、個で仕掛ける技術と強さを兼ね備えたチームと感じた。J1昇格へのラストピースが、岡山よりは千葉の方が小さくても良いが、岡山のラストピースは大きなくてはならない。そこをどう埋める事ができるかであるが、現状は、岡山の方が険しい道でと言える。

3、11宮崎 智彦の可能性

短い出場時間であったが正確かつ効果的なサイドチェンジから得点に繋げた。41徳元 悠平は、左サイドのサイドレーンとハーフスペースの使い方が巧い選手ではあるが、効果的なサイドチェンジをできた選手かと問われると、そこまで印象に残っていない。しかし、11宮崎 智彦は、短い出場時間で、一本のサイドチェンジから24下口 稚葉のクロスからの28疋田 優人のゴールをお膳立てした。

左SBにおける11宮崎 智彦のパス交換の仕方が、ボランチの選手の様な交換であった。細かいパス交換で、攻撃のリズムを作り、隙が出来た時に一本のパスで、局面を打開する。上田 康太が良くこういったパス交換をしていたが、今季は、縦へのパスを意識していた事で、そういった交換を挟まずに、スピーディな攻撃を目指していた。ただ、前線に収める事に優れた選手が不在であった事から、サイドのスペースを突く形にシフトした事で、そういった組み立ては激減した。

11宮崎 智彦の加入で、MFやDFの選手によるセンターレーンから左右のサイドレーンへの展開に加えて、左SBよる左のサイドレーンから逆サイドの右サイドレーンを活用した攻撃が可能となる。右サイドには、16河野 諒祐と14上門 知樹のスタメン組に加えて、途中出場した24下口 稚葉の攻撃的な3選手が出場機会を掴んでおり、そういった選手の良さが活き易くなる。23松木 駿之介も攻撃的な特徴のある選手なので、コンディションあげてきて、同時出場した時に、どれだけ2人で仕事できるか楽しみである。

4濱田 水輝が戻ってくれば、33阿部 海人の守備的なオプションの3バック(5バック)のオプションに加えて、攻撃なオプションと成り得る。本来であれば、スタメンとしても考えたい戦力ではあるが、41徳元 悠平という優れた左SBの存在もあり、ボランチもできる器用さが、11宮崎 智彦にある事と、年齢を考えると、後半の状況に応じた起用がベストと言える。

前述した通り千葉の失点後に千葉の選手に笑顔が見えた通り、この試合において千葉の選手に多少の緩みを感じる程、岡山の得点が勝利に届かない状況に陥っていたが、千葉は、岡山のパスに対して、簡単に食いつくことはなく、無理に前から奪いに来ない代わりに、スペースを消す事に徹底していた。

2失点目のシーンも中央には人数が揃っていた事を考えると、決して千葉の対応が悪かった訳ではない。24下口 稚葉が、正確かつ高速クロスを入れて、14上門 知樹のヘッドがポストバーに当たるという惜しいシュートを28疋田  優人が決めきったというゴールではあるが、岡山のしたい攻撃の形である。それだけほぼ(14上門 知樹が決め損ねたので)奇麗な得点を演出したの11宮崎 智彦のサイドチェンジであった事を考えると、今後の期待は大きい。

また、41徳元 悠平を前にあげるオプションが、今後どれだけ機能するかも興味深く、新たな選択肢が生まれたが、今後更に、離脱者が戻ってくる中で、違う組み合わせが考えられる。特に、27木村 太哉や20川本 梨誉、14上門 知樹、18斎藤 和樹、15山本 大貴、9李 勇載、10宮崎 幾笑、25野口 竜彦、32福元 友哉といったFWや2列目の選手の組み合わせを考えると、面白い。この辺り、試合を重ねて行く中で、色々な組み合わせが出てくると思うので、今後のフォーカスで触れて行きたい。

4、 最初の失点と選手の言葉から見える課題

【ジェフ公式】【ハイライト】 2021明治安田生命J2リーグ第13節 ファジアーノ岡山戦
ハイライトは、こちら(77秒から)。
URL:https://youtu.be/sRiyhlFxzp4?t=77


岡山の攻撃が失敗に終わり、一本のクリア(ロングパス)から、49サウダーニャが、5井上 黎生人を背負いながら収めて、39三木 友哉に落とす。5井上 黎生人は、すぐに後方に下がなりながら対応へとシフトし、仕掛けに備える。39三木 友哉は、パスを受けると、28疋田 優人の寄せ受けると、スピードに乗ったドリブルですり抜けると、49サウダーニャに預けて、パス&ゴーの動きをみせる。この動きに33阿部 海人が釣られる。39三木 友哉から離れたのを確認すると33阿部 海人は、39三木 友哉と並走しながら、ポジションに戻ってスペースを埋める。

49サウダーニャには、7白井 永地が付きますが、そのまま振り切られ、49サウダーニャは、加速しながらゴールに迫ります。この時39三木 友哉のマークには、28疋田 優人がつこうとしています。49サウダーニャに対して、5井上 黎生人が寄せに行かず、39三木 友哉の動きをケアします。ただ、この時、39三木 友哉には、5井上、33阿部、28疋田、16河野の4人で対応しようとしているのに対して、49サウダーニャに対して、後方から7白井 永地が追いかけていて、28疋田 優人が、マークを変更して寄せに行くこうとしますが、人数が揃っているが、49サウダーニャは、フリーというアンバランスな状況に陥っていました。

これは、明らかな連携ミスで、5井上 黎生人の判断ミス。5井上 黎生人がスライドして、49サウダーニャに寄せ行かなかった事で、守備をスライドする事ができず、結果的に49サウダーニャのシュートコースを作るサポートする守備をしています。5井上 黎生人は、守備をしている様で、千葉の攻撃のサポートをしてしまっているという酷い対応です。

では、これまで良い守備の判断をしていたのに、こういった致命的なミスをしてしまったのか。それは、試合後のコメントを読むと、ヒントがありそうです。重要なので、一部転載します。

J2第13節 ジェフユナイテッド千葉戦 監督・選手コメント
URL:http://www.fagiano-okayama.com/news/p1473056654.html

「ずっと濱田選手に引っぱってもらい、背中で見せてもらっていたが、けがで抜けてしまい、自分がよりやらなければいけないと自分自身にプレッシャーをかけ、もう一つ、二つ成長できるようにやってきたので、この4失点はとても悔しい。」

この部分ですね。何が問題かと言うと、今までは、コーチングやラインコントロールなど、ある程度、4濱田 水輝に任せていた部分があったが、今は、4濱田 水輝がやっていた事を、5井上 黎生人がやろうとしている。今まで守備に集中できていた部分が、考える事が増えた事で、結果的に、こういった判断ミスや連係ミスが増えてしまった

また、中盤に6喜山 康平が不在である事も重なって、スペースをケアする選手が不在で、カウンターを受ける回数が増えた。チームとして攻撃の良い形が増えた一方で、こういった後方の守備が緩くなり、結果的に失点も増えてしまっている。このシーンであれば、33阿部 海人か16河野 諒祐が、コーチングして、5井上 黎生人に対して、寄せに行くように促すべきでしたが、2人とも自分の守備で頭がいっぱいだったのか、ポジションを取るに留まった様です。

49サウダーニャの放ったシュートコースを、5井上 黎生人が一歩か二歩ずれて対応していれば、シュートコースを正面に限定した上で、39三木 友哉に対しては、33阿部 海人と16河野 諒祐で対応して、28疋田 優人が必要に応じて、どちらかに付く対応が可能でした。また、こうした判断ミスは、試合を通じて生じており、それを5井上 黎生人自身もそう感じていたと、捉える事ができるコメントを試合後に残している。

「前半失点した後に川本選手が決めてくれて振り出しに戻したが、その後すぐにまた失点してしまったので、そこは反省しないといけない。防げる得点だったので、もったいない失点だった。」

これは、2失点目を指していると思いますが、2失点目は、人数がより揃っていて、複雑であった事を考えると、5井上 黎生人だけの責任ではないが、色々と考えすぎて、チームとしてどう守るのかというのが、意思統一できていない証左であり、守備の方向性が見えていない事を示す。このままでは、非常に危険であるが、試合を重ねる中で、チームとしては良くなる部分もあると思うので、無失点という結果を残す事で、少しでも迷いを減らしていって欲しい。

5、 総評(後書き)

千葉についても岡山についても苦言を呈したレビューではあるが、根本的には、岡山が4失点してしまったという結果が全てで、千葉が、チームとして緩んでいる部分は完全否定こそできないが、4得点もして、最後に勿体ない失点をしまうと、どうせなら1失点のまま終えたかったという苦笑いをしても不思議ではない。ましてや、得失点差が現状のチームにおいて、そこまで大きくないなら、尚更である。

この試合における千葉の個の部分にやられたが、色々な場面を見てみると、岡山の攻守における甘さが目立った試合であった。千葉の意識の緩さを指摘していながら、それ以上に岡山の守備が緩かった試合で、私の負け犬の遠吠えに過ぎないだろう。ただ、悪かった事だけではないので、この悔しさを次に繋げて欲しいと思っている。

その良かった点は、20川本 梨誉の覚醒。11宮崎 智彦の新たなピース。若手が経験を積むことができていること。若手に関しては、まだまだ経験不足で、チームの結果には繋がらず、勝ち点の積み重ねは難しいかもしれないが、28疋田 優人も2得点目。26パウリーニョや4濱田 水輝、39増谷 幸祐といった守備のピースが戻ってくれば、戦い方の修正や改善が望めるので、まだ下を向く状況ではない。

繰り返しになるが、しばらくは、守備も安定せず、勝ち点は伸びないかもしれない。それでも、28疋田 優人と20川本 梨誉、27木村 太哉といった攻撃の若い力が、攻撃を牽引しつつある。6喜山 康平や11宮崎 智彦のベテランの選手が、チームの足りない点を補いつつ、10宮崎 幾笑や25野口 竜彦といった、もう1つチームの中で、持ち味を出し切れてない選手を活かす事ができれば、上昇する事も可能だと信じている。

難しい状況が続くが、チームとしてできる事は、信じて戦う事である。自信を失う可能性のある厳しい状況ではあるが、不安を感じていては、降格圏にすぐ引き込まれるので、1戦1戦、今できる事を信じてやるしかない。守備が不安定になっている中で、攻撃も良くなっているので、点の取り合いも上等ぐらいの気持ちで、戦って欲しい。今の順位が信じられない大宮との1戦。非常に難しい試合になると思うが、粘り強く戦い抜いて欲しい。

文章・図版=杉野 雅昭
text・plate=Masaaki Sugino

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