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2023ファジアーノ岡山にフォーカス33『 秩序(cosmos)と混沌(chaos)~境界線~ 』J2 第23節(H)vs水戸ホーリーホック

 試合前まで雨が降っていたが、試合開始時には、気が付くと雨が止んでいた。試合後にスタジアムを立ち去る時の傘は、幻想的で綺麗であった。また試合内容もまったレビュアーの1人である私にとっては、とても綺麗なものに感じ、文章にして、多くの方に発信していきたい試合であった。その激闘の記憶と記録の中で、まずは、基本的な試合情報を整理していくところから始めたい。

小雨が降るやや薄暗いシティライトスタジアム。

1、基本情報

2023 J2 第23節
ファジアーノ岡山 1 vs 0 水戸ホーリーホック
シティライトスタジアム
得点者
前半24分:41田部井 涼(23ヨルディ・バイス)
観客数 6,335人

審判
主審 山本 雄大
副審 道山 悟至
副審 金井 清一
第4の審判員 植田 文平


ファジアーノ岡山

試合前集合写真(ファジアーノ岡山)

木山 隆之(監督)

スタメン

7チアゴ・アウベス、48坂本 一彩
22佐野 航大、14田中 雄大
41田部井 涼、44仙波 大志
43鈴木 喜丈、5柳 育崇、23ヨルディ・バイス、16河野 諒祐
1堀田 大暉

リザーブ

GK:13金山 隼樹
DF:15本山 遥
MF:2高木 友也、27河井 陽介、42高橋 諒、8ステファン・ムーク
FW:18櫻川 ソロモン

途中交代

HT:43鈴木 喜丈→42高橋 諒
後半17分:48坂本 一彩→8ステファン・ムーク、41田部井 涼→27河井 陽介
後半30分:44仙波 大志→15本山 遥
後半40分:14田中 雄大→18櫻川 ソロモン


水戸ホーリーホック

試合前集合写真(水戸ホーリーホック)

濱崎 芳己(監督)

スタメン

9安藤 瑞季、20梅田 魁人
14小原 基樹、25鵜木 郁哉
8安永 怜央、10前田 椋介
42石井 隼太、5楠本 拓海、24松田 佳大、19村田 航一
33春名 竜聖

リザーブ

GK:28山口 瑠伊
DF:13成瀬 竣平、22長井 一真
MF:31永尾 鷹虎、34杉浦 文哉
FW:23寺沼 星文、38唐山 翔自

途中交代

後半15分、14小原 基樹→31永尾 鷹虎、20梅田 魁人→23寺沼 星文、8安永 怜央→34杉浦 文哉
後半31分:9安藤 瑞季→38唐山 翔自
後半39分:42石井 隼太→13成瀬 竣平


 同じ4-4-2ではあるが、両チームの戦い方や方針は、全く別のチーム、別のシステムと言っても良いぐらい「違うサッカー」であるという事を、試合経過と共に説明していく事と、勝負を分けたポイントや主導権を巡る両チームの戦い方をみて行きたい。

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2、力を溜める~秩序~

県知事や市長が来た時にアピールする岡山サポ。チームも試合内容でアピールできた?

 前半は、岡山がまず流れを握っていたと言っても問題ないと認識しているが、まずは、両チームの狙いは、何処にあったのかを整理していく中で、前半に岡山が有利に戦えていたように感じた理由と、水戸がやりたいサッカーができていなかった理由へと紐づけていく。

木山 隆之 監督(岡山)
前半は本当に恐れもなくしっかりとボールを持つことにチャレンジしながら前進できていましたし、数は少ないけれどシュートまでいけていた。もう少し崩す形を作ることとシュートまでもっていく能力を高めることは必要かなと思ったけれど、しっかりとプレーできていたかなと。

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(監督)
より一部引用。

 岡山は、去年も取り組んでいた「繋ぐ」というサッカーで、効果的に戦えるようになってきている。この試合でも、「速攻」と「遅攻」を巧く使い分けて、「ボールロスト」の回数を少なくすることで、「主導権」を握る事に成功していた。

 22シーズンは、「ハイプレス」「ロングパス」「速攻」を主体とした戦い方で、主導権を握る戦い方をしていたが、今季は、前者の二つの比率は大きく下がった。「速攻」は、手段の一つとして、今季でも採用されているが、前者の二つの比率がチームの中で、下がった事で、速攻の回数も減った。

 逆に、水戸は、どちらかと言えば、22シーズンの岡山の狙いに近いサッカーをしていた。同じように3つのワードで表現するのであれば、「サイド攻撃」「クロス」「速攻」である。しかし、ベースとして、対戦チーム(岡山)に攻めさせて、そこからボール奪取、「サイド」からの「速攻」という狙いを持ったサッカーであった。

 しかし、前半に関しては、岡山が無理に攻めてこないので、サポーターが岡山のDFラインのパス回しに対して、水戸のサポーターが、執拗にブーイングしていたが、他クラブのサポーターと比べて、回数が多かったことで、水戸サイドにとって、好ましくない戦いを岡山ができたいたことを間接的に示していた。

 後半が、水戸のゲームであった事は、2章で、後述するが、後半には、そういったブーイングが少なかった事からも、前半が岡山のゲームであったことを同時に示している。「挑発」か「誘導」の表現で迷ったが、あえて言葉を悪く「挑発風」に表現すると、水戸側からすれば「攻めて来いよ!こらぁ!」といった感じで、ブーイングしてきていたので、岡山からすると、「それならゆっくり攻めちゃおう♪」という感じで、水戸側からすれば、「不敵で嫌な奴」になっていた。

 特に、前半に関しては、水戸のプレスを引き出して、間延びを誘発させて、Twitterのアンケートで表現した1堀田 大輝のカウンタ―フィード。これは、引き寄せて間延びさせて作ったスペースへ精度の高いロングパスを合わせていく事で、カウンタ―のような形を意図的に作っていた。

 また、前半の45分間のプレーを終えて、交代した43鈴木 喜丈のプレスをいなして、前にパスで選手に付けていくというプレー。これは、プレスに「抜け道」を作る上で、非常に有効な手段であった。

 こういったプレーができる1堀田 大輝と43鈴木 喜丈と2選手いたことで、岡山としては、攻守で恩恵を受けていたというのが、前半の岡山であった。

 23ヨルディ・バイスと5柳 育崇のロングパスが有効であるのは、相手のプレスや寄せが甘い時で、16河野 諒祐のプレスの打開策は、成功確率の低いものであり、この3選手は、どちらかと言えば、プレスや寄せに弱い3選手であったが、1堀田 大輝と43鈴木 喜丈の2選手は、プレスや寄せをあまり苦にしない選手であり、この両選手が後方にいるだけで、チームとしての安定感が違って来る。

 このように「遅攻」と「速攻」の使い分けることで、主導権を握れたことで、22佐野 航大が、いつもの試合に比べて高い位置でプレーする機会を多く作る事ができた。中でも16河野 諒祐のクロスに対して、ペナルティエリア内に走り込んでシュートというのは、今までにないぐらい深い位置で攻撃に絡むことができた。

記者(インタビュアー)
--前半には得点チャンスもありました。
22佐野 航大 選手(岡山)
あれはGKとの間に(クロスが)来るかなと思ったのですけれど、相手にちょっと当たって反応が遅れました。あれは体を被せてねじ込まないといけなかったです。

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(選手)
より一部引用。

 同じぐらい前でプレーして欲しい選手である14田中 雄大だが、どうしても16河野 諒祐の守備のフォローや16河野 諒祐のプレスに対しての逃げ道確保のために近くでプレーする必要がある14田中 雄大は、どうしても上がる回数が少なくなってしまう。そもそも比較的低い位置のスタートが強いられる現状だと、なかなか攻撃に絡むことにパワーがいる事は、この試合でも同じであった。

記者(インタビュアー)
--ゴールシーンを振り返ってください。
41田部井 涼 選手(岡山)
あの時間帯はけっこう押し込めていたので、こぼれる位置も予測できました。今週はああいうトレーニングをずっとやっていたので、それが実を結んで良かったかなと思いますし、(ヨルディ)バイスの落としがすごい良かったので感謝しています。

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(選手)
より一部引用。

 そして、この試合では、主導権を握る中で、得たセットプレーの2次攻撃で、セットプレーのこぼれ球を7チアゴ・アウベスが戻して22佐野 航大の地を這う強烈なミドルシュート、再びそのこぼれ球(クリアボール)に23ヨルディ・バイスが競り勝ち、その頭での落しに反応した41田部井 涼もまた地を這うシュートを放ち、今度は、こぼれ球に反応するため、多少外に選手が分散していたことで、密集度が下がった両チームの選手のエリアを突き破って、ゴールまで届いた。チームとして良い流れを良いシュートに繋げる事ができたことで、得点に繋がったシーンと言える。


41田部井 涼のゴールを喜ぶ岡山の選手達。

記者(インタビュアー)
--ダイレクトの難しいシュートでした。
41田部井 涼 選手(岡山)
ふかさないことだけを考えて、ピッチも雨が降って濡れていたので、叩ければと思っていました。コースも良かったと思いますけれど、叩いたことでスピードに乗ってくれたので、しっかりと抑えられたことが良かったと思います。

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(選手)
より一部引用。

 一方で、前半にある程度、自分達のサッカーが出来た中で、流れからの得点はできず、セットプレーの2次攻撃による得点に留まったのは、岡山の課題と言える。同じようにボールを保持してゴールに迫ってきた大分の事を思い出すと、ゴール前の形の決定機という面で、岡山のチャンスメークは、まだまだ改善の必要性を感じた前半であった。

記者(インタビュアー)
--前半は良い形を作れた手ごたえがあるのではないですか?
22佐野 航大 選手(岡山)
そうですね。でも、自分のところでけっこう圧力を感じていたので、もっと味方を使いながらプレッシャーをはがしていきたかったです。ボールロストも多かったので、課題だらけです。

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(選手)
より一部引用。

 水戸としては、ボール奪取して、素早く前に運び、サイドからクロスをどんどん入れて行くというスタイルであったが、攻め合いや攻守の入れ替わりの速い、激しい試合展開に持ち込みたいが、岡山に冷静に戦われた事で、「すぐにボールを失う水戸」vs「長くボールを保持する岡山」という構図になった事で、苦しい前半となってしまった。

 前半の岡山の優位を総括して表現するのであれば、岡山は、弓を引くように力を溜めたサッカーができた前半であったと表現したい。


3、発する力~混沌~


HT:43鈴木 喜丈→42高橋 諒

 この交代が直接的な理由なのか、後半に入ると流れは、一変する。岡山としては、1点のリードを2点、3点と広げるためにサイドの運動量や攻撃の回数、質を上げて行くことで、後半もパワーで、主導権を握る展開を意図しての投入でないかと予想される。しかし、アクシデントの可能性も否定できないのもまた事実である。

22佐野 航大 選手(岡山)
前半はしっかりとボールを保持していつもと違うサッカーをしていたのですけれど、後半の立ち上がりに相手に主導権を握られてしまった。前半と同じくらい自信を持ってボールを受けて、パスをはたいて、ということをやれれば、もっとゴールに迫れたのではないかなと思います。

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(選手)
より一部引用。

 後半が始まると、前半と一変して、岡山がボール保持する時間が短くなった。攻撃で流れを引き込むという意図で投入された筈の42高橋 諒が、サイドでなかなか形を作れなかった。43鈴木 喜丈と違い、自陣(岡山陣地)深くより相手陣地(水戸陣地)深くでプレーする方が持ち味が光る(クロスやドリブルで決定機を作れる)選手であるが、1対1で局面を打開する回数や成功率が伸びなかった。

 その結果、43鈴木 喜丈のプレスを掻い潜るという選択肢が事実上無くなった事とオーバーラップで、左サイドが空く事が多くなった事で、チームのロングパス比率が増えたことで、パスの成功率が下がった。更に水戸の得意なサイド攻撃を仕掛けるスペースも生じやすくなってしまっていた。

 中盤に良い形でパスが入らなくなった事で、岡山が良い形で中盤でボールを「保持」できなくなり、自陣で問題なく回避することができていた水戸のプレスの「圧力」を感じる様になってしまった岡山。

 水戸のやりたかったボールを持つチームが、目まぐるしく変わる展開へと流れは傾いていく。それは、まるで味方陣地が、相手陣地に変わっていく様子そのものであるように、水戸が、はっきり押し込むようになってきていた。1点リードを許している水戸は、この流れを確固たるものとするために、反撃の体勢、勢いの形作りとして、濱崎 芳己 監督は、一気に3選手を交代するといういった感じに大胆に動いた。

後半15分
14小原 基樹→31永尾 鷹虎
20梅田 魁人→23寺沼 星文
8安永 怜央→34杉浦 文哉

 この交代のイメージ的には、岡山の屈強なフィジカルと高さのある18櫻川 ソロモン、技術力があり仕掛ける力のある22佐野 航大、戦術理解度が極めて高かった元岡山の喜山 康平が入ったようなイメージである。

 岡山も、この交代に対して、直後に手を打った。

後半17分
48坂本 一彩→8ステファン・ムーク
41田部井 涼→27河井 陽介

 プレー強度の高いことで、攻守にアグレッシブにプレーできる8ステファン・ムークと戦術理解度の高さと基礎技術で試合を落ち着かせることができる27河井 陽介を投入した。

 どちらのチームの交代が、効果的であったかは、水戸の方で、岡山の交代は、どちらかと言えば、「応急処置」に近い効果に留まり、守勢を覆す効果には繋がらなかった。逆に水戸の前線にいる23寺沼 星文によって、高さと強さを活かされて、「形」や「深さ」が作られる様になる。23ヨルディ・バイスと5柳 育崇を中心にクロスを跳ね返していたが、43鈴木 喜丈が下がっている事で、実質クロスに弱くなった上に、自陣からパスを回して保持する力も弱まっている事で、水戸の攻撃の手数は、時間を推移と共に増えていった。

 当然ながら、水戸の攻撃は、よりゴールに迫り得点に着実に近づいており、水戸の選手が、岡山にとって危険な位置でヘディングシュートというシーンを後半になって、水戸の勢いがあることは誰の目にも明らかであった。

 そこで、少しでも状況を良くするために、岡山の木山 隆之 監督も守備の一手を打つ。

後半30分
44仙波 大志→15本山 遥

 ボール保持のキーマンの1人である中盤の44仙波 大志を下げて、「動」のアグレッシブな守備のスペシャリストの15本山 遥を投入することで、「守備」から流れを引き寄せようとする木山 隆之 監督。しかし、水戸もその一手をみて、更なる攻勢をにでる水戸の濱崎 芳己 監督。

後半31分:9安藤 瑞季→38唐山 翔自

 岡山の屈強なDF陣に抑えられてしまっていた9安藤 瑞季に変えて、38唐山 翔自。他クラブに在籍していた時に対峙した際には、神出鬼没の動き出しや思い切りの良いシュートが打てる38唐山 翔自をこの時間帯に投入されてくる選手としては、かなり怖い選手。

 しかし、岡山も集中して抑えた、守ったというよりは、気持ちでなんとか辛抱して行くことで、時間を着実に進める事ができていた。同点から逆転の可能性を信じて、水戸の濱崎 芳己 監督は、最後の交代カードを切る。

後半39分:42石井 隼太→13成瀬 竣平

13成瀬 竣平 選手(水戸)
短い出場時間の中でもっと自分の特長を出して、得点に結びつけたかった。もったいなかったなと感じています。押し込む時間が続いた中、シュートで終われていなかったし、ゴール前で崩し切れていなかった。ゴールに直結するプレーをチームとしてなかなか出せていなかったので、自分が入ることによってそういうプレーを出せるように意識しました。時間帯もあったので、もっと割り切ってプレーできるところもあったと思いますが、ゴールに直結するパスだけでなく、周りの選手を動かしながらチーム全体でゴールに向かっていこうと思っていました。

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J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(選手)
より一部引用。

 42石井 隼太に代えて、味方と連動したパスでの崩しに定評のある元岡山の13成瀬 竣平を投入する。13成瀬 竣平としても岡山に続いて、山形でもレギュラーに定着できず、再び違うチームへの育成型期限付き移籍でのレンタルとなった選手だ。名古屋で、期待されていて世代別代表の招集歴のある13成瀬 竣平。守備に課題こそあるが、違うものが見えている選手で、守る岡山としては、人数を掛けて守っていても、打開力に対しては、警戒したい選手だ。

 岡山も最後の交代カードを切る。

後半40分:14田中 雄大→18櫻川 ソロモン

 2高木 友也を投入して、後方を安定させるという選択肢もあったが、木山 隆之 監督の選択は、18櫻川 ソロモンだ。これは、どちらが効果的か、というよりは、同点に追いつかれた時に、反撃にでる力があるのは、18櫻川 ソロモンの方であるからだ。追加点を取れていれば、2高木 友也を入れて5バックの壁を作るという選択肢も十分考えられた。

木山 隆之 監督(岡山)
後半は何が良くなかったのか分からないけれど、開始から量も落ちたしボールを受ける姿勢も減った。ボールを受ける動きも減ったし、2トップがプレスに行けなかったのか行かなかったのか分からないけれど、後半はあまり良くなかったです。そこはしっかりと課題として、1試合を通してやっていかないと。もちろんきっ抗した相手なのでゲームの流れが相手に移るときはあると思うし、そういうときにしっかりと我慢しながら粘り強く進められたのは良かったですけれど、勝ち切っていくために2点を取りにいく姿勢は必要なのかなという気はしました。

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(監督)
より一部引用。

 岡山は、後半において、結局ほぼ流れを握る事はできなかったが、7チアゴ・アウベスや48坂本 一彩を中心に一発(一瞬の隙)を突ける機会を辛抱強く、我慢強く、カウンタ―という意識を持って、守備に回るという戦い方になっていた。当然ながら22佐野 航大や14田中 雄大、16河野 諒祐と言った選手が、高い位置でプレーする機会は、やはり減ってしまっていた。

 一方で、水戸は、後半の45分間で、ボール奪取位置は、岡山陣地での回数が増えて、全体的に押し込んで、攻守の入れ替わりの激しい展開に持ち込む事ができた。ただ、岡山の守備の守り方として、人数をかけて壁を構築できる守備意識の高さ、こういった劣勢でも守り切れる粘り強さがある。

 ただ、もし水戸に得点を呼び込むクオリティの正確性や、質や組織力から生まれるスピードの速さがあれば、41田部井 涼の得点のように、岡山の人の壁を越えて、同点~逆転という試合展開も十分考えられたスコアだ。

浜崎 芳己 監督(水戸)
非常に堅いというか、負けない岡山さんが相手でしたので、1点の重みがゲームを左右するということはゲーム前から話していました。結果的にその1点に泣いたところがあると思います。ただ、トレーニングで積んできた攻撃や守備のところは、狙いとするシーンはある程度出せたと思っています。相手の攻撃を摘むところもある程度できたかなと。試合の入りのところで少しうまくいかなかったところが少し悔やまれる。そのあたりは次に向けて、選手たちと改善していきたいと思います。

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(監督)
より一部引用。

 それでも水戸の両サイドからのクロスを中心とした攻撃ラッシュは、岡山を追い詰めて、岡山がボールを保持しようとする空間を与えず、「表」か「裏」のように「攻撃」か「守備」かという試合内容に持ち込めた。これは、やはり水戸の強さであり、岡山の弱さが出た後半となった。

 岡山が、ボールを「保持」することで、落ち着いた試合展開である「秩序」のとれた前半であったのに対して、後半は、運動量や守備強度に技術が加わった攻守でのアグレッシブなサッカーにより、攻守の入れ替わりが激しく、まさに「混沌」と言える試合展開で、後半は水戸のゲームとなった。

 両チームが対極の試合内容を望んだ結果、お互いに前半と後半で、色を出せたが、ちょっとした差が、勝負を分けた。それこそ、前半に先制点が奪えていなければ、ホームであり、「頂」を目指している以上、リスクを冒してでも攻めていかなければならなかった。前半の先制後からの戦い方を含めて、先制点という小さいようで大きいアドバンテージを岡山は、戦い方に巧く還元させて、勝ち取った勝利とも言える。

 そして、「秩序」と「混沌」というチームカラーの戦いであったが、岡山も「混沌」を作れる強さがあれば、もっと勝てていた前半戦(1巡目)であった筈で、水戸も「秩序」を作りだせていれば、前半戦(1巡目)に、選手の個をより活かして、安定的に勝ち点を積み重ねることができたはずである。

木山 隆之 監督(岡山)
選手交代をしてなんとかしましたけれど、チームとしてもっと後半にホームで足を動かして頭を動かして前に出ていく姿勢が大事なのではないかなと。そこはまた次への課題かなと思いますけれど、われわれはまだまだ行くんだという姿勢は見せられたと思います。次もまた大事な試合になるので、頑張っていきたいと思います。

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(監督)
より一部引用。

 どちらサッカーが強いとか弱いという是非ではなく、2023年07月01日地点では、こういった内容のサッカーになったという事が重要で、お互いに良い所と悪い所が出た中で、課題と収穫があった一戦で、次にどう繋げるか。それこそ補強を含めて、残り試合で確率の幅が定まってくる中で、下ではなく上についていける位置と意識を持って戦えるかが、問われて行くこととなる。

その覚悟を持ち、選手と監督と共にある水戸サポーター。

4、力×力=??~試合雑感~


 選手達の実力を掛け算していくのか。足し算していくのか。割り算してしまうのか。引き算になってしまうのか。試合毎に選手の実力の力の総数は、毎試合違う。良い選手、適格な采配、相性、天候などの状況によって、結果は、変わってくる。

 その中で、気になった点について、簡単に触れて行きたい。

 この試合で、決勝ゴールを決めた41田部井 涼だが、得点を決める事のできる基礎技術の高さに対して、その技術を活かす判断というのが、伴っていない。既にJ1でプレーする元岡山の島田 譲や武田 将平のような得点の期待できるボランチと精度の高いレフティという点で、共通点も多い。

 元岡山の両選手は、ミドルシュートやサイドチェンジ、ロングパスといったパスレンジやシュートレンジの広い選手だが、41田部井 涼もそういったプレーできる力を持った選手ではないかと感じる。速くて強烈なシュートやパスは筋力的に無理かもしれないが、長短の正確なパスや枠に蹴り切る技術。こういった部分は、両選手に負けていない。

 横浜FCで、絶対的な選手こそなれなかった事で、まだまだ未熟と感じているようだが、ここまで2得点を決めている事からも感覚に優れる選手であることは間違いない。

 44仙波 大志の「くるくる」のように41田部井 涼の「○○」というような代名詞のプレー(簡単に真似できない唯一無二の武器)を見つける事ができるかどうか。それが、現状の課題ともいえるバックパスが多くなったり、前に縦パスをあまり出せなくて、なかなか前進できるパスが出せないという弱点を抱えたままでも、お釣りがあるプレーであれば、正直サポーターも納得できる。

 運動量は、岡山に来て間違いなく増えてきているし、守備意識も高くなってきている。44仙波 大志や14田中 雄大、22佐野 航大のプレーに触発されて、前への意識の高まりを感じるので、これからどういった選手になれるのか。成長が楽しみな選手であることは間違いない。

記者(インタビュアー)
--試合を通して自分自身のプレーについての手ごたえは?
41田部井 涼 選手(岡山)
前半はボールを持つ時間もありましたし、さばきながらボールを触りながらプレーできたのですけれど、試合をトータルしてバイタルでプレーする時間、自分がパスを刺すシーンも自分が入っていくシーンもなかなか作れなかった。周りの選手がやってくれていたと思いますけれど、自分から欲を出してやっていくことが自分のプレーヤーとしての価値を上げると思う。ビルドアップに関しては良かったと思いますけれど、アタッキングサードでのプレーをもっと増やしていきたいなと試合中にも感じていました。

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(選手)
より一部引用。

試合後の一幕

元水戸の鈴木選手と坂本選手?(G大阪繋がりか世代別代表繋がりなのか?)

 選手交代で気になった事として、7チアゴ・アウベスを引っ張ざる得ない点と、8ステファン・ムークをCH(守備)を意識して起用せざる得ないチーム状況。これは、正直苦しい。中盤の底でフル出場できた6輪笠 祐士の離脱により、そこで交代カードを一枚切る必要があることへのチームとしての影響、ダメージの大きさを痛感している。

 99ルカオもこれだけメンバー入りできない事を考えると、何らかの問題を抱えている可能性が高く、FWの所で勢いやパワーを出していけないというのは、この試合のようにセットプレー関係で、得点できなければ、やはり勝ちきれない試合や負けてしまうという試合が出てしまう。

 もう一つ、後半で勢いを出せない理由として、体をぶつけられてもドリブルで打開できる、キープできるという武器の19木村 太哉が怪我で離脱してしまっている事や近いタイプの武器を持っている9ハン・イグォンのプレーの選択肢の狭い事で、今季のチームスタイルがフィットしていない事。

 サイドを抉れる、突破できる選手が少ない事で、18櫻川 ソロモンや7チアゴ・アウベス、99ルカオといった選手が、中央でどっしり構える事ができなくて、サイドに流れたり、自ら突破する必要が迫られたり、チャンスメークの役割を担う事で、得点や深い位置でのプレーはどうしても減ってしまう。

 正直、この3点は、かなり痛いと感じている。今季は、絶妙にメンバーが絡めない中で、色々な選手を試して、チームとして総合力は間違いなく伸びているが、その分、勝ちきれない試合も増えている。そろそろ勝ち点を回収して行かないと、かなり厳しくなりつつある自動昇格どころか、プレーオフすら難しくなってくる。

 後半戦、2巡目は、結果を出す事にどれだけ注力できるか。天皇杯を含めたこの5連戦は、幸いにもアウェイは徳島戦という事で、移動距離が短く、正直日程的には、かなり有利だ。このアドバンテージを活かして、リーグ戦4連勝、天皇杯もジャイアントキリングという事で、公式戦5連勝ともなれば、一躍自動昇格の争いに絡めるチャンスも出てくるが、今のままでは不可能に見えるが、可能性はゼロではない。

 各チーム動き出している、夏場の補強を含めて、選手起用を含めて、岡山がどう動き、どう戦って行くのか。戦力の上積みしてくる他クラブに、置いていかねれないような補強と組織力の大きな上積みに期待したい。

木山 隆之 監督(岡山)
今日は選手たちに「まだまだ自分たちが上を目指してやっていること、あきらめていない姿勢をしっかりと出そう」ということを強く伝えて臨みました。ファン・サポーターの人は本当にわれわれを支えてくれるので、なんとか期待に応えたいと思って、「頑張ろう」という話をして試合を始めました。

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(監督)
より一部引用。

記者(インタビュアー)
--久しぶりの勝利を自分のゴールで手繰り寄せました。
41田部井 涼 選手(岡山)
ここ最近の試合はあまり勝てていなかったですし、個人的にも出場する時間が短かった。そういった悔しい思いを今日は全部ぶつけようという気持ちをもって試合に入ったので、それが結果として表れて良かったなと思います。

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(選手)
より一部引用。

 ここからは、総力戦で、最後まで「頂」の夢を見たい。叶えて欲しい。

今日のマウンテン丼、肉たっぷり。
梅肉の唐揚げ。酸味が食欲をそそられる。

 選手もサポーターも美味しい食べ物を勝ち点3を多く、体に吸収することで、夏場に向けて、反攻の原動力にして、勝ち続けて欲しい。

文章・画像=杉野 雅昭
text・photo=Masaaki Sugino


引用元公式サイト紹介(選手と監督公式コメント)

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(選手)
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/070114/player/

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第23節 岡山 vs 水戸(23/07/01)試合後コメント(監督)
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/070114/coach/

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