2022ファジアーノ岡山にフォーカス7 J2:第1節:H:ファジアーノ岡山vsヴァンフォーレ甲府 「戦術を超えた個の力で掴んだホーム通算100勝目」

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1、 前置き

 コロナの影響により、両チームとも新規の外国籍選手が、入国できないため合流できていなくて、ベストメンバーを揃えることができなかった。

 甲府に関しては、陽性者が出たということで、11人+7人のメンバー構成も難しい状態で、岡山の地に乗りこんで来た。

 迎え撃つ岡山は、怪我の選手が少なく、ほぼ理想的な形で、ホーム開幕戦を迎える事ができた。

 ただ、サッカー好きであり、ファジアーノ岡山のサポーターである私個人としては、お互いにベストの状態での白熱した試合が見たいという願望もあるため、勝利こそできたが、サッカーの本質の部分で、本来の甲府と戦えなかったというのは、正直残念である。

 アウェーでは、是非とも両チームともベストの状態で、甲府と対戦したい。

2、 完成度はこれからの4-3-3

 4-3-3の成熟度が注目されていたが、結論から言えば、まだまだではあるものの、一定の形になっていた。

 まだまだである理由の1つは、不安定なビルドアップである。DF同士や、DFとGK(MF)とのパス交換の所で、パスカットされるだけではなく、著しくプレスの影響を受けていたからである。

 ただ、連携や約束事の徹底が不十分であったビルドアップの完成度で、リスキーであっても失敗を恐れずトライしていこうという強い方針を感じられた。

3、DFラインのビルドアップ

 ↑プレビューの画像。23ヨルディ・バイスと5柳 育崇は逆であった。

 注目していたそのビルドアップは、GKとANが、DFラインに積極的に関与することはなく、それぞれ独立したポジショニングで、理想的な形にパス交換やキープして行く中で、展開からの前進を目指していた。

 危険なシーンや狙えるシーンでは、長短の縦パスも選択肢として消さず、ケースバイケースで、自由度は高めであった。

4、展開から前身のビルドアップ(AN編)

 展開からの前進を目指していく過程で、ANの26本山 遥が良い仕事をしており、水を運ぶ選手のように、理想的なパスの経由点として、パスを散らすだけではなく、ボールロストした時のファーストディフェンダーとしても壁となり、無類の1対1の強さを誇っていて、かわされるというシーンは、少なかった。

 26本山 遥の脚が痙攣するほどの運動量は、攻守で間違いなくチームを助けていた。そして、リードした局面での6喜山 康平は、抜群の安定感。スコアが、開いたことで焦る甲府の選手のミスを誘発するポジショニングやビルドアップの中での振る舞いは、チームに落ち着きを生んでいた。

 これが、6喜山 康平→26本山 遥であれば、ここまでの安定感の域には、到達できなかったかもしれない。

5、甲府のプレスが効いていた岡山

 ただ、今季のJ2のプレス強度や圧の基準がどこまで高いのかという部分が、どこまでかは流石にわからないですが、結論から言うと、甲府のプレスにはかなりの自由を制限されていて、効いていました。

 回数やスピード、人数といったところでも、連動して明確な意志が伴ったプレスを受けて、ミスパスから危険なシーンを作られていた。

 岡山がしたいビルドアップは、プレスを受けた時には、満足に出来ていなかったことは、支配率やパス成功率、シュート数にも表れていた。

6、ゴールに繋がった個の力

 どちらかと言えば、同点に追いついたシーンのように、27河井 陽介に対峙した選手が幸運にも足を滑らせたことから始まった逆転からの快勝ではあったが、足を滑らせた選手が咄嗟(とっさ)に伸ばして来た足に対して、減速せずに自然なボールタッチて、伸ばされた足かわすと、クロスもピンポイントに20川本 梨誉に合わせている。

 以前であれば、こういったシーンを作れていても、足を滑らせた選手の足にボールが当たってしまうことや、クロスがずれてしまっていたシーンも多かった。

 27河井 陽介は、7チアゴ・アウベスのゴールもアシストしていて、セットプレーの流れから26本山 遥の惜しいシュートも演出している。

 これは、間違いなく実力のある選手を獲得したことが、チームとしてのプレーの質を向上させて、ゴールに繋げた一例と言える。また、このアシストの裏には、プレースキッカーに、27河井 陽介以外の選手を、起用している理由であり、バイタルエリアの付近で立ってもらう事で、セカンドボールからの2次攻撃を敢行するための木山マジックの1つ可能性が高い。

 今後は、セットプレーで、得点を決めることができなくても2次攻撃で、得点に繋がるシーンは、27河井 陽介経由で、多く生まれる事は間違いない。

7、岡山のプレス

 さて、何度も繰り返しているが、甲府のプレスは、岡山に効いていたのは間違いないが、岡山のプレスはどうであったのか?
 こちらも結論から言うとプレス単体で考えると、効いていた場面はあったが、嵌めて行くという連動性では物足りなかった。

 7チアゴ・アウベスのゴールのように甲府のパスミスからのロングシュートこそ決まったが、これはどちらかと言えば、メンタル的なダメージからのミスや、開幕戦というチームとしての完成度が低い時期での対戦であったことも大きい。

 チームとして、○○選手がプレスからけたら○○選手が、○○を誘い込むようにプレスをかける。こうした狙いは、まだはっきりとは見えなかった。

 分かっていることは、前から行けそうなら3人で、プレスをかけて、チャンスであれば、後方の選手が、プレスに加わるということである。

 まずは、シンプルに実戦を通じて、良かったとこと悪かったところを整理して、課題を探して、ベストの形を模索している段階に感じた。

8、中盤のサイドの守備対応

 そして、注目していた中盤のサイドのスペースは、大きく分けて3パターンの対応があった。

 1つ目は、IHがスライドして、寄せて行く対応である。中央から外によっていくので、かなり甲府の選手が、自由に持てる時間があった。甲府としては、シンプルにクロスを入れて、10ウィリアン・リアに合わせたいところではあるが、中には5柳 育崇と23ヨルディ・バイスが待っており、クロスを入れ辛い状況を作りだせている。

 そのため、守備対応ができる位置への間ができても、この試合では致命的な時間やスペースを与えたとまでは言えなかった。この辺り木山 隆之監督が、そこまで織り込み済みなのか、その形をテストしている段階までかは分からないが、現状では問題ないだろう。

 2つ目は、7チアゴ・アウベスや10宮崎 幾笑が戻って、守備対応をするケースである。これは、全て任せるのではなく、余力がある時に、参加する形を採用している。このパターンの時は、後方の人数が揃っていて、安定している。

 3つ目は、SBが対応する形。これは、一番まずい形。連携プレーで背後使われると、5柳 育崇や、23ヨルディ・バイスが釣りだされる。時には26本山 遥が対応することもあり、できれば強力少なくしていきたい。ただ、IHが、フォローに来て対応することで、リスクを小さくできるので、この辺りのバランスを巧く、とっていく必要がある。

 そして、中盤の負担が大きくなっている一方で、攻守の対応をある程度、割り切ることで、スタミナ的に余力があったことで前線の3選手のプレスへのスピードは、最後まで速くできていた。

9、個が武器の攻撃

↑コンディションの関係で、スタメンは、20川本 梨誉。

 では、攻撃に移っていきたい。セットプレーは、やはり迫力があった。得点こそ直接合わせて決める事ができなかったが、23ヨルディ・バイスや5柳 育崇の迫力があり、二次攻撃では得点に繋げるなど、非常に効果的であり、今後の武器となることは、間違いない。

 注目されたWGの7チアゴ・アウベスが、2ゴール1アシストの大活躍。10宮崎 幾笑も7チアゴ・アウベスの得点に絡む活躍をみせた。

 CFに関しては、ミドルシュート以外の得点を20川本 梨誉が決めて、CFに入る選手への得点の期待感は、昨季以上である。

 IHも27河井 陽介が2アシスト。前述した通りラストパスがずれることが多かった岡山ではあるが、最後までしっかり正確なプレーでのチャンスメークできるというクオリティの高さは、今後も大きな武器となり、アシスト王に期待したくなる内容と結果を残した試合となった。

 同じくIHの14田中 雄大は、ルーキーでの初ゴールという最高の結果を残した。攻守においてハードワークし、甲府が攻撃に移る場面での素早い寄せは、チームを助けた。狭い局面での細かいキープなどのアジリティを活かした仕掛けが光った。

 途中交代の選手も良さが光った・15ミッチェル・デュークも高さ・強さ・巧さを存分に発揮し、大量リードを活かしたカウンターのチャンスを何度も演出。残念ながら得点にこそ繋がらなかったが、持ち味を存分に発揮した。

 15ミッチェル・デュークのプレーに活かされたのが、19木村 太哉と22佐野 航大。初の公式戦の共演とは思えない一定の連携プレーを魅せてゴールに迫った。19木村 太哉は、ドリブルやキープでゴールに迫るも、本当に最後の最後の所や細かい連係の部分では、もう1つであったものの4-3-3のWGとしての可能性をみせた。22佐野 航大も豊富な運動量や技術で、再三ゴール前まで飛び込むなど、積極性が光った。最後の所の判断の所で、意思疎通でのずれや、味方からのパスが若干ずれていたが、ここがあってくれば、ゴールやアシストは期待できそう。

10、次節に向けて

①メンバー変更は?

 コンディション次第で、変更される余地こそあるが、10宮崎 幾笑や、16河野 諒祐、25野口 竜彦といった、あまり存在感を発揮できなかった選手を引き続き、スタメン11人+リザーブ7人のメンバーに入れて行くのかは、気になる所ではある。
 15ミッチェル・デュークのスタメンに移る可能性もある。勝利したとはいえ、序盤からメンバーを固定していくには、選手層も厚く、競争を生む意味でも、結果と内容をフラットに考えた上で、メンバーが11人+7人が、選ばれる事となるだろう。

②今後の強化方針は?

 ビルドアップに尽きると思います。プレスが緩い時間にGKが真ん中に入ってCBが開いて、SBが上がるという形こそできたが、プレスを受けた時の不安定さというのは、観ていて怖かった。ここをどう修正するかは、今後も勝ち続けるためには必要なことであり、16河野 諒祐の良さや10宮崎 幾笑の良さをより活かすためには、必用なことである。

③次節の注目ポイントは?

 開幕戦で木山ファジのサッカーが、J2に認知されたが、今節のように、岡山の強みである質の高さを発揮できるのか。それとも研究されて、未完成のビルドアップや連係ミスを突かれて、カウンターで沈むのか。
 それともJ1から降格してきて、一年でJ1への返り咲きを目指す、昇格来保である徳島に対しても、個の力で、力強く勝つことができるのか。
 甲府にコロナのアクシデントがあったとはいえ、昇格候補であり、その甲府に対しての4点取れたこと考えても間違いなく、岡山に爆発力はあるので、その辺り、選手個人と、チーム組織の2点から、岡山というチームの強さを見極めて行きたい。

 最後にこの試合で評価したいポイントのアンケートを貼って終えたい。最後まで読んで下さり有難うございました。

文章・図=杉野 雅昭
text・picture=Masaaki Sugino

自己紹介
 某ゲームから野球派からサッカー派へと移籍。当時チーム名が、ジェフユナイテッド市原であった現ジェフユナイテッド千葉に興味を持つ。オシム(監督)と阿部 勇樹(選手)を中心にJリーグと代表をチェックしてきた。2008年より地元クラブであるファジアーノ岡山のサポーターデビュー。そこから、多くのファジの試合を見てきた。忘れることのできないエピソードが年々増え、シーズンを重ねる毎に想いは強く深くなり、2021シーズンは、初めて号泣。心からサッカー好きで、戦術の奥深さや、プレーの凄さなど、サッカーの本質での攻防にフォーカスを当てて、客観性と冷静さを意識した文章を投稿している。そのレビューへと突き動かす原動力は、サッカーへの情熱。熱さと冷静さを兼ね備えたフォーカスを今後も目指して、投稿を目指していくことで、サッカーの魅力の発信と、サッカーを通じた交流による、感動の共有と縁の繋がりが、楽しみ。ただ、たまに調子に乗り過ぎて失敗する悪癖もあるので、治したいとは思っている。そんな私ですが、noteやSNS、スタジアム等で、交流できたら嬉しく思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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自分の感じた事を大事にしつつ、サッカーを中心に記事を投稿しています。今後とも、よろしくお願いいたします。