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2021ファジアーノ岡山にフォーカス12 J2:第9節:群馬vs岡山(Away) 「攻め手に見えるチームとしての焦り・28疋田 優人の起用による守り方の変化・失点に見える前への意識」

1、 前置き

近年、J3から上がって来るチームの躍進と再びJ3に戻っていくチーム。また、J2からJ3に落ちてから戻ってこないチーム。J3から上がってきそうでも上がってくることができないチーム。今日のJ2の大混戦は、J3のレベルが高くなっている事により、底上げされている事を示す事象と言える。

岡山が、J1に上がれない様に、J3からJ2に上がるのも難しい。そこを上がって来たチームが、弱いわけがない。J1とJ2の違いであるJ2の特徴は、カテゴリーに、上のカテゴリーであるJ1、下のカテゴリーにJ3があるという中間のカテゴリーである点である。ある意味、一番実力差の少ないリーグと言える。それ故に、大混戦とプレーオフでの熱戦が、行われるリーグである。

一方で、岡山は、残留争いというのには巻き込まれたことはない。地域リーグの頃から常に上を目指して、力を着実に蓄えて来た。しかし、近年の岡山は、プレーオフからも遠ざかり、主軸級の活躍した選手は、J1や資金力のあるJ2のライバルチームに引き抜かれる事で、一からのチーム作りからという流れを繰り返して、いつの間にか上位に届かなくなってきてしまった。

昨季は、コロナの影響があったにせよ、下位に低迷した。守備が安定しているが、得点がとれない。そういった課題に対して、攻撃的な選手を補強しつつ、若返りにシフトした。ここまでは、その若い選手が少しずつ台頭してくる形で、力を着けてきたが、ここにきて、主軸選手に怪我人が続出した事で、早くもチームの骨格となる部分を一から構築していくところからのチーム作りを余儀なくされる状況に陥っている。

若返りと言えば、4月16日のニュースで少しレスポンスが遅くなったが、U-15日本代表候補のトレーニングキャンプのメンバーに選出された。育成を掲げる岡山の成果の1つが出つつある嬉しい発表である。こればかりは、サッカーを好きになって貰って、岡山から日の丸を目指す子供が出てくるために、長期的な視点で、取り組んでいくしかない。

J1に上がれば、自チームのユースへの所属歴3年以上の選手の保有数が一定人数必要となっており、歴史の深いチームよりは、当然遅れており、戦力面でも差となってしまう。こういった有望な自チームのユース出身の選手が増えていく事は、J1定着から上位を目指す上では、避けて通れない道であり、現状では昇格しても戦力的に劣る上に、ハンディを負う事になるので、厳しいリーグ戦となる。

そう考えると、J2上位で安定したチーム作り。サッカーの指針を如何に作れるか。そういった視点でのチーム作りが進められていく事が、時間はかかるが、確実な前進となる。J1昇格。J1定着。ACL出場。J1優勝。ACL優勝。CWC優勝。といった感じに上を見ると、まだまだ果てしないが、着実に地に足をつけて、進んでいくしかない。

さて、その岡山が、同じくJ2で苦しむ群馬との試合。残念ながら風上の前半で、得点を奪えず、風下に立った後半に、群馬の勢いに飲み込まれて失点して敗れてしまった。今季の初の連敗となった岡山だが、チームに今何が起きているのか。そういった視点に立つ事で、見えてくる課題。見えてくる方針。こういった部分に迫っていきたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。

2021ファジアーノ岡山「第9節vs群馬(Away)」

2、 攻め手に見えるチームとしての焦り

ここに来て、裏へのロングパス主体の攻めが占める割合が増えてきている。裏やサイドのスペースを使う前に、中盤に入れてから2列目の選手を含めてゴールに迫るというサッカーで、開幕から戦って来た。しかしながら、SBまでを含めて全選手がゴールを狙える選手を揃えて、実際に多くのシュート機会が恵まれたが、重ねて行くシュート数に対して、ゴールがついて来なかった

他サイトでのデータを見て記事にして来たが、そのデータからは、ゴールに近い距離、かつ中央でのシュートが今季は、極端に少ない。サイドのスペースを攻略してからのラストパス精度や、バイタルエリアからのシュートこそ増えているが、惜しいシーンは、決まっていればエクセレントなゴールが多い。この原因は、あるデータというか記録を見れば、一目瞭然。

FWのゴールが0。ここまでは、FWの一枚もしくは2枚が、中央のエリアを離れて、スペースを狙う動きを繰り返す事で、チャンスメークをして、2列目の選手がシュートを打ちやすい状況。もしくは、後方からの上りを促す事で、攻撃の形を作っていました。実際に14上門 知樹を中心に、中盤の選手がゴールを重ねてきました。

18齊藤 和樹に関しては、2列目から良い形での崩しが出来れば、惜しいシュートを打つことも出来ましたが、狙っている形ではない以上、中央でゴールを狙うために、裏を狙うプレーを繰り返すプレーや、シュートの打つ隙を探るプレーも少ないゴールを常に狙うFWの選手と違いシュート数も少なくなる上に、良い形でシュートを打つこともやはり少ない。

どうやらこれが、ここまでの岡山の得点力不足の大きな原因と言える。FWの序列は、一度しか出場がなかった9李 勇載に関しては、不明ではあるが、18斎藤 和樹、15山本 大貴、20川本 梨誉、32福元 友哉の順。しかし、プレーエリアで見ると、この序列と中央から遠い順になる。つまり、有馬 賢二監督は、FWに得点よりチャンスメークを重視している事となる。

この試合でもロングパスをどんどん配給したが、どれもチャンスメークが狙いであり、ゴールを奪うためのものではなかった。これでは、やはり得点力不足解消することできない。縦パスを素早く入れて、そこから細かいパス交換で、人数をかけてゴールに迫る攻撃に始まり、後から繋いで、人数にかけてゴールに迫る攻撃。今度は、スペースにパスをどんどん入れて、人数をかける攻撃。形こそ変えているが、本質は変わらず、シュートパターンは変わらない。

最初の方針から怪我人が出て自分達のサッカーが、難しくなっていき、打つ手が限られていく。色々と形を変えている所を見ると、得点が取れない焦りというのが見え始めている様に感じる。有馬 賢二監督が、得点力不足を2列目より後ろの選手が決めるための工夫が足りてないのではなく、中でのアイデアや決める力が足りていないという認識であるとすると、得点力不足解消のアプローチが間違っている事を意味し、取り返しのつかない事になる可能性がある

前者と、捉えているのであれば、継続していれば、形になるかもしれないが、後者であれば、以下の様なアプローチをするなどして、中央で如何に得点をとるかに特化したアプローチもあるのではないか。現状、FWの選手に色々と求めすぎている節があるのも事実で、もっとシンプルにゴールに迫る必要がある

得点力不足アプローチ

「得点力不足解消へのアプローチの例」

アプローチA(チャンスメークサイド固定型)

・チャンスメークするサイドの決定
・↑とは逆サイドに得点を狙えるサイド選手を起用
・チャンスメークサイドはドリブルかパスで打開
・↑とは逆サイドは外から中へを意識

アプローチB(チャンスメーク両サイド型)

・中央でゴールを狙うストライカーを1人FWで起用
・両サイドの深い位置でのチャンスメークを強化
・2列目をOHに変更してチャンスメークと飛び出しを狙う
・両SBの攻守の担当エリアを縦で広げる

3、 28疋田 優人の起用による守り方の変化

28疋田 優人を起用後から裏を突かれるシーンが増えている。これは、28疋田 優人が、前への守備を強く意識しているからである。6喜山 康平と7白井 永地のコンビ場合は、ある程度、待ち構えてスペースを消して、隙を作らせない守り方である。28疋田 優人がスタメンになってからは、ある程度、前からボールを奪いに行くシーンが増えた

それまでは、前からボールを奪うというよりは、パスコースを消す事や、持つ時間を制限する事を主体としていた。前節からこの試合では、挟み込んでボールを奪うシーンや、インターセプトというシーンも増えている。一方で、CBとDH(CH)との間にスペースが空きがちである。よって、そこで仕事させないために4濱田 水輝や5井上 黎生人が、積極的に守備に行くシーンも増えた

ここ2試合は、CBが、サイドのスペースへ流れて対応する意外にも、前に積極的に守備に行くシーンが増えて、そこで奪いきれなかった時に、後のスペースなどを突かれて、戻りながら対応するというシーンも増えている。それ故に、前以上に好守というか、DF陣が目立つシーンが増えている。これは、それだけ危険なシーンも増えている事を意味する。

得点力不足に苦しむ群馬との試合で、41徳元 悠平が戻って来たので、久々に1失点に抑えたが、攻撃に特徴のあるチームと当たることとなると、複数失点を覚悟しないといけないかもしれない。現状、岡山は、得点力不足を解消できておらず、失点だけ増えてしまうサッカーへのシフトは、引き分けすら難しくなるのではないかと感じられ、必然的な連敗であったと言えるかもしれない。

ボランチの人数が足りていれば、中盤3枚をボランチで固める選択肢もあったが、計算できる3枚全て、同時に起用してしまうと、怪我のリスクや試合中でも運動量の低下といった問題が生じてしまう。かといって、降格圏も近くづいており、29劉 龍賢を試す余裕がある状況ではなくなりつつあるが、試すなら今である。もし、降格圏に突入してしまうと、現実的なサッカーにシフトしていく必要がある。

28疋田 優人というサッカーの内容を攻守ともに大きな変化を生み出せる選手を起用してみたい所だが、腰を据えたチーム作りを進める勝ち点の猶予や、選手起用の選択肢が怪我人多発による少なくなっている事から、限られるのも不安要素の1つである。何れせよ降格圏へと少しずつ、引きずり込まれつつあり、序盤ではあるものの危機的状況である。

4、 失点シーンに見える前への意識

【公式】ハイライト:ザスパクサツ群馬vsファジアーノ岡山 明治安田生命J2リーグ 第9節 2021/4/21
1:00から~
URL:https://youtu.be/IVwAeufnPtE?t=60


群馬のゴール前のロングパス一本で、裏抜けを許した4濱田 水輝と5井上 黎生人。画面に全く映っていないので、どちらの選手がラインコントールを誤っていて、裏抜けを許したのか。それとも、2人とも警戒していなかったのか。風下とは言え、あの位置からこのパスを通されてしまうと、流石にラインも高いことがあり、守るのは容易ではなかったと思う。

結局、守備にチャレンジする間もなく、16河野 諒祐、41徳元 悠平、7白井 永地の3人は、戻るだけで、守備関与できなかった。ここに28疋田 優人の名前が無いのは気がかりな点であるが、攻撃に重心を置いていて、戻れない位置にポジションを取っていた。6喜山 康平であれば、少し後ろにポジションを取っていたかもしれないが、前述のチームの守備スタイルの変化に関係する程のポジション取りとアグレッシブな守備を見せているのは28疋田 優人である。

失点の形自体は、前節の2失点目に似ているが、最後の50大前 元気に入ったシーン。全選手が、50大前 元気を見ている。18進 昂平の動きを捕まえる余裕がなかった。5井上 黎生人も24下口 稚葉と一緒で、捉え切れてなかった。違うのは、5井上 黎生人の前には、誰もいなくて、直接というよりは、間接的に50大前 元気と対面した選手という事である。

蛇に睨まれた蛙状態で、もし、18進 昂平の方に、注意が行けば、ミドルシュートを打たれても不思議ではなかった。これは、流石の5井上 黎生人でも動けない。せめて、50大前 元気の前に選手がいて、ミドルレンジでなければ、まだ18進 昂平に思い切って、マークいけたかもしれない。

50大前 元紀のスルーパスまでの判断も速かったし、精度も絶妙。50大前 元気の真骨頂とも言えるアシストだった。7白井 永地の足が届きそうで届かない。4濱田 水輝も途中で寄せに行けそうでいけない。釣られるというか、一本のロングパスでの裏抜けで、完全に混乱した酷い失点だった。周りに人数がいそうで、最後の局面をよく見ると、数的同数か、フリーに近い状況ばかりで、無効化された選手ばかりで、的確に人がいない所を突かれてしまった失点であった。

試合を通して言える事だが、積極的に守備をするという事は、その引き換えにどこか隙ができる。可能であれば、ある程度引き寄せて守備をする方が、ドリブルやパスで長い時間に渡って、攻め立てられなければ、そこまでは消耗しない。積極的に守備に行って、ボールを奪えれば、好機になるが、どこかでミスする確率や消耗が激しくなるので、こういった失点は、生じやすくなる。何故、そうするかというと、高い位置でボールを奪って、得点の確率を高めるためであり、無得点という事を考えると、空振りに終わってしまった試合と言える。

5、 総評(後書き)

3項目とも前への意識について触れた。これが、得点を奪えない事による焦りなのか。それともしっかりとしたチームの成長によるものなのか。何れにせよ、この2試合で、岡山のサッカーは、変わりつつある。それだけ愛媛戦での2失点というのが、ダメージが大きかったと言えるかもしれない。

心の拠り所であった堅守も崩壊手前と言える状況で、厳しいチーム状態。怪我人多発で、練習もままならないとは思うが、継続性の下で、得点力不足打破。これに尽きる。特に苦しむ10番宮崎 幾笑を起用法や、ハードワークを続けるも結果がついてこないFWの起用法。後は、攻守のバランスをどう保つのかなど、課題は多い。

ここに来て、補強の動きをみせるなど、危機感を持っているのは、確かな様である。J2からJ3に落ちた場合、すぐに上がる事は難しい可能性も高く、ここでどれだけ踏ん張れるか。選手1人をどれだけ巧く起用し、総合力で、着実に勝ち点を積み重ねていかないといけない。

チームとして、分岐点と言える状態で、如何に勝ち点を積み重ねるか。他チームの様に守備を固めて、勝ち点を積み重ねて行くか。それとも、攻撃に力を入れて、上位進出を最後まで、目指すのか。何れせよ、J1昇格は、もはや現実的には無理とまで言える状況に立ちつつあり、来季を見据えた戦い方、チーム作りをしていかなければならない。

文章・図版=杉野 雅昭
text・plate=Masaaki Sugino

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URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6791678178986299393


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