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2022ファジアーノにフォーカス18J2:第14節: ファジアーノ岡山 vs 水戸ホーリーホック「輝き始めた原石」


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 3連勝こそしたが、完勝であった試合は1試合もない。同点や逆転という流れになっていても不思議ではなかった。ただ、ここまでの岡山は、引き分けこそ多くなっているが、2敗しかしていない。実は、これが今の岡山の強さではないだろうか。

 無得点であった試合は、僅か1試合で、ほぼ毎試合得点を重ねている。守備に目を向けても複数失点は、僅かに2試合。ここまでの岡山の戦いを観てきた岡山サポーターの多くは、もっと失点していて、点が獲れていないイメージを抱いているかもしれない。

 この感覚と結果のギャップが埋まりつつあるのが、この3連勝である。先日レビュー後に多くの方のレビューやTwitterの呟きをチェックした限りだと4-2-3-1(4-4-2)への変更が、1つの転機となり、チームの状態の向上の効果的であったと感じている方が多いように感じた。

 さて、この試合では、4-4-2で長くJ2を戦って来ている水戸との試合を振り返りつつ考察していきたい。

1、 チアゴとデューク


 立ち位置から見て行くと15ミッチェル・デュークと8ステファン・ムークが、組んだ時には、2トップに近い関係性であるが、この試合のように7チアゴ・アウベスと20川本 梨誉の関係性は、1トップとトップ下の関係性により近いように感じた。

 守備の形も違っていて、前者の2人(デューク&ムーク)であれば、前からプレスをしっかりかけていき、SHやCH、SB、CBも隙があれば、前にポジションを移し、インターセプトしてのショートカウンターを狙って行く。後者の2人(チアゴ&梨誉)であれば、状況に応じて、プレスをかけていくというスタイルで、特に7チアゴ・アウベスは、ボール奪取が狙えそうな場面と、プレスで相手チームの攻撃を制限する必要がある場面では、勢いを持ってプレスをかけていく。

 前者のスタイルであれば、運動量がかなり求められて、チームとしてタフに戦う必要があって肉弾戦が繰り広げられるが、後者のスタイルであれば、考えて守備をする心理戦が繰り広げられる。

 心理戦と表現した上で、意識してみると明らかであるが、7チアゴ・アウベスは、ピッチでのアクション全てに高い集中力を維持している。一挙手一投足に至るまで、拘りが感じられて自身への妥協を許さない。

 開幕の頃は、タイプの違う両選手の「同じピッチでの共存」を試みたが、ここ数試合では、「90分で別々にプレーする共存の形」を模索している。岡山でありながら岡山でない。デューク→チアゴ、チアゴ→デュークとなることで、岡山というチームは、岡山でありながら別のサッカーをするチームとなる。

 本来であれば、選手のモチベーションの維持や、1つのコンセプトによってチームを作って行くが、木山 隆之監督は、トップチーム所属である34選手をフル動員して、チームを強くするための策を練り、試行錯誤を繰り返しつつ、テストに終わらず、内容だけではなく、結果を残して、チームとしての形を形成している。時には、負傷離脱中の精神的支えをも力に変えるチーム作りを進めている、戦術的な幅が広がりつつ、チームとしての結束力の高まりを感じる。

 戦術的な幅の広がりからのサッカー明らかな違いは、15ミッチェル・デュークと7チアゴ・アウベスが交代した時に、特に顕著ではあるが、ここ数試合は、15ミッチェル・デュークの献身性が岡山の今までチームカラー(有馬ファジカラー)に近かった事もあり、結果を残していたが、ここに来て7チアゴ・アウベスも存在感が増してきて、この試合では、得点に繋げることができた。

 岡山のタイプの違うストライカーである両選手の軸としたサッカーをアップデートしていくことで、岡山はより強くなるのではないかという期待と、ここに飽き足らず第3のサッカーが生まれる可能性もあるのではないか。そういった期待が木山ファジにはある。

2、 サイドの裏の攻防


 水戸との攻防は、シンプルにサイドで、どちらを制するかという攻防であった。3バックと違い主導権ではなく、どちらかと言えばSBの背後のスペースを巡る攻防の重要性のウェイトは大きい試合と言える。ただ、当然守備ブロックをしっかりDFとMFでの2ブロック形成された状態を崩すのは、両チーム簡単ではなかった。

 それでも背後のスペースを狙って行くという速攻であれば、両チーム形をつくることができていた。そして、この攻撃は、岡山の方が形をしっかり出来ていた。9ハン・イグオォンと、39白井 陽斗の両SHが、WG的なポジショニングを取り、サイドの背後を狙って行くという明確な狙いを持っていた。ここは、4-3-3に挑戦していた効果と言える。

 両チームとも狙いとしては同じであったと思うが、攻撃の内容の部分で考えて見ると、巧く行っていたのは岡山で、速攻からゴール前にクロスを入れて行く、仕掛けて行くという形を多く作れていた。対する水戸は、パスを回して組み立てる、サイドに入れて1対1からの攻略を狙うという「中に侵入する・入れて行く」のアクションに時間がかかるシーンが岡山より多く、シュートまで行く回数・シュートを狙える回数で、岡山に分があった。

 この辺り、後方から精度の高いロングパスを出せる23ヨルディ・バイスの存在の大きさを感じる。通常であれば、ロングパスの成功率は低く、ローリスクローリターンの攻撃であるが、23ヨルディ・バイスの左右の放たれるロングパスは、ローリスクハイリターンの武器となっている。この試合では、コンビは、3阿部 海人であったが、5柳 育崇の役割分担もチームの中で整理されて行く中で明確化し、チームとしてのバランスも改善し、チームとしてのウィークポイントは目立たなくなってきて、逆に良い面が目立つようになってきている。

 このサイドでの攻防において、岡山の方が形を作れたのは、一本のパスで、左右のSBが高い位置で受けられるだけではなく、2ボランチの守備範囲の広さや、スペースケアやフォローも大きい。チームとして、攻守の優位性を作れる局面を如何に作るかを個の力だけではなく、組みあわせや、チームスタイルなどの工夫で生み出されている。

3、 光る個性(雑感)


 結果の方は、前半終了間際に、この試合で初めてキッカーを任された16河野 諒祐のググラウンダーのボールをマイナス入れるサインプレーで、7チアゴ・アウベスが合わせたシュートは、水戸の選手に当たってコースが変わって先制ゴールを決めた。そして、7チアゴ・アウベスにとって、Jリーグでの初の5得点目。

 追加点は、ボール奪取からのショートカウンターから9ハン・イグオォンが、今季の岡山に少ないミドルシュートと言えるシュートを突きさして、豪快に決めた。この時左右の選手が、ゴールに向かって走っていた事で、DFの選手が、その選手にも対応するために中に絞れなかったことで、真ん中のシュートコースが空き、そのコースに、9ハン・イグオォンは迷いなく右足を振り抜き右足一閃。利き足の逆の左足で、貴重な追加点を決める事に成功した。

 ここで、クローズできないのが岡山。人数が揃っていたが、中央を固めた岡山に対して、外に展開した水戸に寄せきれず、精度の高いクロスを入れられてしまったことで、DFの前で合わせられてしまい1点返されてしまった。

 90分間で見た時に、この時間帯に守備強度が下がった時に、結果的に対戦チームの攻撃の回数と質が、劇的に上がり、スコアに応じて更に猛攻に出てくることで、攻撃を防ぎきれず失点してしまっている。この試合では、カウンターの精度が上がって、追加点を奪えたことが、最大の勝因と言える。

 3阿部 海人も出場したかったCBでの一角として出場。スピードを活かした対人守備の強さや、足下の技術を活かしたグラウンダーでの受け手に優しい正確で速い縦パスをなん本も通していた。23ヨルディ・バイスや5柳 育崇に慣れていると、上に目線が活きがちであったが、下(地上での1対1やパス)に目線がいき、いつもと違った魅力が攻守でがあった。もちろん、まだまだ粗削りな点もあったが、そこは伸びしろということで、今後に期待できる内容であった。

 9ハン・イグオォンもユニフォームを脱いで、喜びを前面に出して、喜んだ。ボールを離さずにゴールに向かって行く推進力には、スピードや力強さがあり、可能性を感じらせるプレーをみせた。そして、何よりミドルシュートに近いゴールへの強烈なシュートは、やはり魅力的で、もっともっと見たいと感じたので、今後の活躍が楽しみである。

2020川本 梨誉もゴールまであと少しというシーンも作れた上に、アシストできそうなシーンもあった。開幕から全てを出し切る事ができていて、そのプレーはチームを助けている。だからこそ、結果に繋がって欲しいと強く思う。

 千葉戦前の投稿になるが、7チアゴ・アウベスと15ミッチェル・デュークが共にスタメンで、共存へ再トライしている。前から行く15ミッチェル・デュークと8ステファン・ムークの両選手のプレスで、相手選手のパスを限定することで、7チアゴ・アウベスと14田中 雄大がインターセプトからのショートカウンターというシーンが生まれる可能性は、十分ある。

 木山 隆之監督の臨機応変にチームとしての土台を着実に作りつつ、伸び代をしっかり出していく。まさに可能性の塊と言えるチームが、どういったゴールにたどり着くのか。これからが楽しみである。

文章・図=杉野 雅昭
text・picture=Masaaki Sugino

ファジ造語


チアゴ・タイム
 7チアゴ・アウベスのプレーの一つ一つにサッカーを楽しむという遊び心があり、そこに技術が伴った左足の凄さを称えて「悪魔の左足」と、呼ばれている。その左足を活かして、何処からでも何時でも狙っていて、7チアゴ・アウベスが出場している時間帯は、岡山の大きな得点源と言える。

本山丸(イメージは真田丸)
 大阪の陣で、大阪城に迫る徳川の軍勢に対して、真田丸は、大阪城の弱点を補う出城として築かれた。23ヨルディ・バイスと5柳 育崇の弱点は、釣り出されたときや、スピードであるが、26本山 遥かが主に、そういった守備対応をすることで、3選手の良さをお互い引き出すことで、守備が安定して、堅守を構築に繋がっている。

参考
2022ファジにデータでフォーカス2
「中盤の真田丸(本山丸)」
2022 J2第2節 岡山 1-1 徳島 レビュー

は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6905499896963403777

ヤバス要塞
 語呂を意識して、5柳 育崇の「ヤ」と、23ヨルディ・バイスの「バとス」の二文字を抽出して、「ヤバス要塞」と、表現した。防衛において重要な地点の砦。砲台もある砦のことも指す。高い対人守備だけではなく、ロングパスの精度やセットプレーの得点力があり、まさしく要塞と言える。攻守で強みを発揮できる「ヤバス要塞」として、難攻不落を目指す。

梅田アウォール
 ファジの最後の壁。ファイアウォールに比喩した表現。戦術や個の力、連動性といった攻撃で、ゴールを狙ってくる様々な攻撃をシャットアウトする。そして、バックパスの受け手として、フィードや組み立てる一人として、パス交換(情報通信)。後方からの冷静なコーチング(情報の発信)。多くの情報を整理し、最的確な決断ができるGKである1梅田 透吾の良さを表現したファジ造語。

0バックシステム
 攻撃的で積極的なオーバーラップや得点力のあるCBである5柳 育崇や23ヨルディ・バイスのCBの2選手と、SBが本職である26本山 遥といった流動性のあるDFラインを形成することで、攻守において、自由に動くことで、攻守での手厚い状態を作り、数的不利になりがちな局面で、数的有利の攻撃シーンを演出し、守備でも積極的なアクションで、事前にピンチの芽を摘み、流動性から生じる集中力と緊張感から、カバー&フォローで、リズムを作り出す戦術システムのファジ造語。

木山ファジVer1
 2022シーズンの開幕からトライした新システムの4-3-3。超攻撃的なサッカーで、7チアゴ・アウベス軸とした、自由と個の力を前面に展開していく。選手のコンバートやルーキーの積極起用で、勢いと爆発力があった。攻撃だけではなく、前からの守備でも効果的で、嵌める・奪うから得点に繋げることのできた試合もあった。ただ、対戦チームの対策が進む中で、勝ち点3が遠く、順位を下げて行く中で、4-3-3の戦術的アップデートの一時中断からの路線変更を余儀なくされた。

木山ファジVer2(アップデート予定)
 10節という節目で採用された4-4-2。4-2-2-1-1とも言える形で、4-2-3-1とも言えるが、ダブルボランチを採用することで、攻守での安定感が高まった。有馬ファジの4-4-2とは違い攻撃的な選手と、ロングパスの得意な選手が多く、速攻を主体として、速さ・強さ・高さを前面に出して、ゴールに出したことで、今季のメンバーに寄せた4-4-2である。今後どういったマイナーアップデートで、Ver1(4-3-3)の土壌を活かして、勝ち点3に繋げて行くのか注目される。

筆者紹介
 某ゲームから野球派からサッカー派へと移籍。当時チーム名が、ジェフユナイテッド市原であった現ジェフユナイテッド千葉に興味を持つ。オシム(監督)と阿部 勇樹(選手)を中心にJリーグと代表をチェックしてきた。2008年より地元クラブであるファジアーノ岡山のサポーターデビュー。そこから、多くのファジの試合を見てきた。忘れることのできないエピソードが年々増え、シーズンを重ねる毎に想いは強く深くなり、2021シーズンは、初めて号泣。心からサッカー好きで、戦術の奥深さや、プレーの凄さなど、サッカーの本質での攻防にフォーカスを当てて、客観性と冷静さを意識した文章を投稿している。そのレビューへと突き動かす原動力は、サッカーへの情熱。熱さと冷静さを兼ね備えたフォーカスを今後も目指して、投稿を目指していくことで、サッカーの魅力の発信と、サッカーを通じた交流による、感動の共有と縁の繋がりが、楽しみ。ただ、たまに調子に乗り過ぎて失敗する悪癖もあるので、治したいとは思っている。そんな私ですが、noteやSNS、スタジアム等で、交流できたら嬉しく思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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