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短編:【壮大すぎてわかんねぇ】

「映画…凄かったねー」
先週末に誘ってやっとのことで2人劇場で鑑賞した後、彼女が言った。

「ん〜、うん…」
正直、僕には凄いと言うより…
「面白くなかった?」
「そんなこと無いよ!そんなこと無い…けど」
「けど?」
ついて行けなかった。
「え?」
「凄すぎて…わかんなかった」
彼女の顔は見られなかった。きっと信じられないと責めるような表情をしていることだろう…

「これまでのシリーズは観て来たでしょ?」
確かに予習はして来ました。
「ストーリーは解る!」
「待望の最新作だものね!」
「…ん…話は判ったんだ…けど…ね…」
超大作だから予算をかけて最新鋭の技術、最先端のスタッフ、これまでに無い規模の撮影、編集処理をしたのだろう。が…
「ゴメンね…壮大すぎてわかんねぇ〜」
ホンネが出てしまった。

「どこまで実写で、何が合成で、どうすればこんな画になるんだか…壮大すぎて、現実味が無さすぎて…圧巻…と言うより…夢んなか…?素直に何を楽しめば良いのか、物語が入って来ない…」
彼女が観たい映画がある…しかも劇場で観たいが一人だと心細いということで、予習までしてお供したワケだが…これでジ・エンドかな…
「壮大すぎてわかんねぇ…」

「…良かった」
「え?」
「何か世の中的に話題作でしょ?訳わからないの、私だけかと不安だった…」
「あ…じゃあ良かった…」
「って言うか…もし君が私の意見に曖昧に合わせて面白かったって言ってたら、信用出来なかったかも…」
「いや、面白かったは面白かった。けど…ストーリーが入って来ない…」
「ファンタジーだからね」
「ファンタジー…」
「現実味が無くて当たり前。見たことない世界だから」
「そうだよな…そうだよ」
「夢物語。女性はね、こういう作品好きなんだよね…」
「そっか…」
「けど…私は違うかな…私も良くわかんなかった」
「凄かったけどね。話が入ってこない…」
「と言うか、話題作だからね、観たかったんだ、君と」
「お誘い頂き、ありがとうございます」
「お腹すいた!」
「姫さま、お食事…いかが致しましょう」

「氷河期時代のマンモスのお肉もイイし、平安時代の貴族料理もイイ。昭和に流行った鍋も好き。宇宙食も美味しいかもね!」
「いや壮大すぎてわかんねぇ!」

     「つづく」 作:スエナガ

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