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短編:【何か問題でも?】

「なんか『2025年の壁問題』ってのが大変みたいだね」
「なに、朝、テレビでやってたの?」
「そう。なんかね、2025年に世の中DX化が激化してプログラマーが不足して様々なシステムが麻痺するとか何とか…」
プッチンプリンが店頭から消えて、情報番組がこぞって伝えていた。

ファミレス。4人がけの席に向い合せの女性ふたり。
「なになに?なんの話?」
3人目の女性がドリンクバーのグラスを持って席に着く。グラスの中身は、この世のモノとは思えないような色をしている。

「2025年の壁問題!」
「壁問題!?ベルリンみたいなこと?」
「でもこないだ別の報道番組で『2025年問題』って、違うこと言ってたよ」
「どんな?」
ドリンクバーのドリンクを飲みながら目だけはふたりを見ている。眉間にシワが寄る。ふたりも眉間にシワを寄せて顔を見ている。
「2025年問題って、なんか団塊の世代?って人たちが全員75歳以上の後期高齢者?って言うのになって…で、もう国民の5人に1人が、その後期高齢者って言うのになっちゃうんだって!」
「え〜!5人にひとりって…」
「ねえアンタそれ、何と何を混ぜたらこんな色になるワケ?」
「抹茶ラテとゼロコーラ。と、何か野菜ジュース的な?」
3人の眉間にシワが寄る。

「でもさ…なんか、何年問題何年問題って、いつも言ってない?」
「言ってるよね!世紀末のノストラダムスの大予言とか…」
「どこ行っちゃったんだろうね、マヤ説!」
「あと2000年とか2001年にデータが消えるとか」
「あったね!」
「私それ知らな〜い!」
女性3人集まれば、姦しい。

「問題問題って煽ってさ、みんなを不安がらせて、悪質だよね」
「でも本当はそうじゃないかもよ?」
「本当は?」
「本当は本当に大問題で、毎回毎度その道のスペシャリストみたいな人が人知れず立ち上がってるワケよ。そんで未曾有の危機を救っているみたいな!」
「なんかアメコミのヒーローぽいね!」
「どんどんスペシャリストのスーパーヒーローが増えていくワケよ!アッセンブ〜!って言って!」
「凄いね!」
「サポートの人なんかも出てきてさ!」
「仮面レンジャー大集結、昭和・平成・令和大集合みたいな!色々と混ざっちゃったりして…」
…つい先程の色々混じったグラスに目が行く。注目された女性がスッと立ち上がって、再びドリンクバーへ。

「問題問題って声を上げることで、その問題に注目が集まって、解決する人も集まって…」
「でも結局専門家がなんとかしてくれるとしても、普通の一般人の何も取り柄がない私たちは、それこそ何もできないよね」
「いくらニュースで騒がれたってね…」
「ちょっと前に物流で再配達を減らせって言われて蓋開けてみたらさ、配達に来て宅配ロッカーがあるのに不在通知入れられたりするじゃない!」
「郵便局!もうちょっと柔軟にやればいいのにね…」
グラスを持って再び着席。
「今度は、緑一色?」
「うお〜!」
大男のように力こぶを作るフリ。
「何だっけ?緑色した怪力…ハル…ハル…」
「クリームソーダと抹茶ラテ」
「いや、ブレンドの詳細聞いてないし…」
「何事も挑戦!」
口を付ける顔をまじまじと眺める。3人同時に、眉間のシワを寄せる。

「確かに何かが起きそうだと問題視することは大事なんだろうけど…」
「なんでもかんでも大げさに騒ぎ過ぎるんだよね…」
「マスコミがね…」
ドリンクバー女性が静かに前かがみになっている。
「どうした?」
「お腹痛い…」
思わず笑ってしまう。
「問題問題!」
「大変大変!」
トイレに走り出す女性。

しばらくして戻って来ながら、再びドリンクバーに寄る。
「今度はシンプルに…」
「オレンジ?」
「オレンジに野菜ジュース」
「懲りないね〜!」
「研究熱心ですこと…」
「いや!どんなに問題が起きても、何度でも諦めないで立ち上がらないと!」
「確かに!」
「ドリンクバーの代金分楽しまないとね…」

何年問題が起きても、日本は安泰だと思わせる3人であった。

     「つづく」 作:スエナガ

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