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「本当だよ!母ちゃんソックリの人がいて、だから言ったんだ。母ちゃんには物静かで優しい父ちゃんと、可愛い二人の子供、オイラと歳の離れたネェちゃんがいるって!」 「他人のそら似じゃない?」 低学年生の俺がいる。 パジャマ姿で自宅のベッドで背中を起こし横たわる母。 「そら似なんかじゃなくて、ホントに瓜二つ…あれは母ちゃんの生き別れの双子か何かだって…」 「そぉ…」 「あ!オイラがウソ言ってると思って!」 「…そんなこと無いわよ」 母はやんわり笑った。 ネェちゃんが帰って来た。 「
「結局、評論家ばかりですよ…日本国民全員!人の評論ばっかりで、自分がない!」 居酒屋の愚痴としてはテーマが大きい。 「誰かが何かをやったら、何が悪いだの、人がやった考えを揚げ足取って、 自分ならこうするだの、ここがどうの、あれはおかしいだの!万一失敗したとしても、本当は最初にやった人間の勇気こそが素晴らしいと思うんですよ、僕は!」 「良く言われるじゃない、「裸の王様」に裸ですよって言った素直な子供が一番、正しいみたいな」 「わらしべ長者の、最初の品に魅力が無ければ、その後、長
さあ今回は私が実践している営業方法をご紹介しましょう。 「あいにく担当者は在宅ワークでして…」 近年、代表電話に連絡を入れても『担当者に直接連絡して欲しい』だの、『個人情報は教えられない』だのと、結局は知っている人間同士しか連絡を取り合うことが出来ない、負のスパイラルに陥っていると感じませんでしょうか。 一部の個人情報を違法ギリギリの手法を使って抱え込んでいた会社が幅を利かせ、公務員が持ち出したUSBメディアが泥酔と共に紛失してニュースになる世の中。個人情報が違法な高値で売
その未確認飛行物体は、雲のような顔をしてすっと建物に近付いて来た。UFOは丸くて光輝く地球上には存在しない金属で出来ているという認識が、意表を突いた雲型の登場を認めなかった。 僕の住む部屋は、7階にある。なのに、エレベーターのボタンは6階までしかない。可笑しな部屋だと思ったのだが、縁起も良さそうだし何より家賃が安かった。フロアは、エレベーターを中心に左右シンメトリーに、4部屋ずつ並んでいるが、僕の住む7階だけは、中心に我が部屋ひとつ。 どんな目的でこんな形になったのか気にも
昼過ぎの電車内は、朝夜のラッシュとは別の乗り物のような顔をして静かに動いていた。普段なら営業の移動に車を使うのだが、社用車が出払っている場合は今日みたいに電車を利用する。土曜日午後の車内はさらに広く思え、正直座れてラッキーだと感じていた。 停車した駅で親子らしきふたりが乗ってきた。母親の肩掛けバックにはマタニティマークが揺れていた。小学校低学年に見える少年が母親に声をかける。子供の声というのは、静かな車内ではひと際大きく聞こえるもので… 「ねえ、ねぇママ…ボク座りたいよ!
「金運をアップするには、お財布は常にキレイにしてください。基本的にお財布にはお金と、お金にまつわるモノのみを入れて、整理しておくことです…」 壇上でマイクを使って語る占いの先生は、いかにもお金を持っているようで、華美で綺羅びやかな女性だった。 「風水でも唱えています通り、キッチンには料理にまつわるモノを。リビングには家族団らんのモノを。モノには本来居場所があります。リビングに仕事の道具、勉強道具、子供の玩具などを持ち込まないことが大事です。そして、運気は連鎖していることを忘れ
私が通勤で使う地下鉄は、遅延が多い。 交通の便が良いと言えば聞こえはいいが、相互乗り入れの拠点駅を利用しているのだから仕方がないとは思っている。とはいえ、こう毎日時刻通りの運行が出来ないのであれば、改善対策を検討して欲しいものだ。 ダイヤグラムを組むのが大変なのは、良く分かる。1分を無駄に出来ない状況で、瞬時で失敗の許されない判断が求められるのだから、それはツライだろう。しかしだ。この駅は同じ方向へ向かう電車が、ホーム違いの発着をするのだから、先発ではないホームに降りてしま