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人生で一番高い山を乗り越えた話

人生で一番高い山を乗り越えた経験は、どんな経験ですか?


私の場合、その名の通り「山」でした。(そのままやんってツッコミたくなりますよね)


29歳の時、地元神戸で開催された「六甲全山縦走」への挑戦。

「六甲全山縦走大会」とは
・須磨浦公園から宝塚市までの縦走
・総距離は56km
・山の数は18個
・早朝4時頃からスタートしその日の21時頃までに完走

きっかけは同じ職場の先輩に山好きの人がいて(60歳くらいのオジサン)、六甲全山縦走の話題が出た時に吹っ掛けられたからだ。「SUEさんは若いしそんなんカンタンやろ~」と言われてつい乗っかってしまった。

本番まで、一緒にチャレンジする母親と3回だけ練習をした。全距離を試す時間的余裕がなかったので、3分割に分けてそれぞれの区間がどんな道のりかを確認したくらいだった。ちなみに母親は山登りが趣味で、過去1度だけ六甲全山縦走の完走経験があるらしい。

本番日、気合と根性で挑んだ。海が近くに見える須磨浦公園を早朝4時にスタート。前半は山道を楽しみながら登った。しかし徐々に体力が衰えていく。足が思うように前に進まない。一歩前に動かすだけで全身全霊のチカラが必要なくらいになった。

中間地点。ちょうど実家の後ろにある摩耶山に、父親が駆けつけてくれた。「がんばれー!」と何度も声を掛けてくれたが答える気力なんてない。すまない父よ。母が変わりに手を振って応対してくれた。

後半になると身体よりも心のほうが限界に。「諦めたい」「今すぐベッドに横たわりたい」 そうやって棄権しようと思えば思うほど、ある言葉が浮かび上がる。登山者に配られていたリーフレットに書かれた一文。
『離脱が最も高い年代は、30代初心者』
ってこれ、ほぼ私のことじゃないか!逆に60代70代の完走率はめちゃくちゃ高いらしい。体力の問題ではなく「慎重さ」と「経験」の差。「体力あるから大して練習しなくても大丈夫っしょ」と余裕ぶっこいてる30代が一番痛い目にあうという。まさにその状態だった。

しかし、そう言われれば言われるほど諦めるわけにはいかない。「やっぱりな、思った通りだ。」そんな風に思われたくない。普段の私は3日坊主で面倒臭がりですぐに諦める性格だ。でももしここで棄権したら悔しいからまた来年も挑戦しないといけない。ゴールがもうすぐそこなのに、それだけは避けたかった。二度とこんな苦しい思いはしたくないから。

ちなみにこの厳しい山登りにはルールがあった。赤鬼と青鬼が追いかけてくるのだ。その赤鬼と青鬼よりも後ろに下がったら失格になってしまう。後方から赤鬼と青鬼がじわじわと追いかけてくる。最後の気力を振り絞って鬼たちから逃げた。(鬼たちは運営スタッフが入れ替わりで担当しているので体力が存分にある)

18時を過ぎたころから雨が降り始めた。びしょびしょに濡れながら登り続けたが、雨なんてどうでもいい。とにかく無心で完走することしか頭になかった。そして夜21時過ぎ、無事にゴール。所要時間17時間。あと15分以内にゴールできなければ失格だったらしい。こういう時の運だけは持っている。正直疲れすぎて息を吸うくらいしか体力が残っていなかった。歓喜もへったくれもない。

絶対に棄権しないという執念だけが炸裂した日だった。あの時はプライドなんてなく、ただ「やり抜くしか道はない」という執念だけがあった。これが、最近流行っている「グリット」ってやつだろうか。「グリット」やり抜く力には、4つの能力があるそうだ。

・度胸:困難に挑み、逆境にたじろがない勇気
・復元力:挫折から立ち直る力
・自発性:率先して物事に取り組む力
・執念:何があっても物事に集中しつづける能力
ー『GRIT 平凡でも一流になれる「やり抜く力」』

「度胸」と「執念」があったのは間違いない。逆境から立ち上がるのも好きだから「復元力」もあるのかもしれない。おかげで、地獄のような達成感を味わることができた


人生最大の山で、人生最大のGRIT体験だった。



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