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「Midnight Library」by Matt Haig / レビュー

The Midnight Library by Matt Haig

Midnight Library

by Matt Haig

【作品情報】

ジャンル:フィクション
#ファンタジー #マジカルリアリズム #コンテンポラリー #女性主人公
出版:2020(Canongate Books)
ISBN:978-1786892737

【あらすじ】


さえない人生。家族とも疎遠で恋人もいない。仕事をクビになり、唯一の心の支えだった最愛のペットの猫も亡くした35歳の女性Nora。人生を悲観していた彼女は、猫の亡骸を前に「死」に嫉妬する。そして死ぬことに。気づくと不思議な図書館にいた。本が並んだ棚が果てしなく続いている図書館。そこにある本の1冊1冊にはNoraが「選べたかもしれない人生」が書かれていた。彼女が生きたいと思える理想の人生とは?


【感想】


自分が選んできた選択肢が正しかったのかどうか自信が持てず、「ああしていれば、こうしていれば…」と後悔してしまう気持ちは誰でも少なからず持っています。この本は、「人生が空回りしている時に、一歩前に踏み出してV字回復するために必要なこと」を考えさせてくれます。あらすじだけ読むと死を連想させるのですが、実際は希望のある物語です。

Noraは35歳でどん底の底を突いて死ぬことを決意しますが、シーン描写はされておらず引っ張り込まれないように配慮されているように感じました。ただ、序盤はやはり主人公はどん底で暗ぼったい語り口ですので、希望に向かって進んでるんだということを意識しながら読まないと息苦しいかもしれません。

Noraの前に現れた不思議な図書館では、本の中で自分が選ばなかった選択肢の人生を試してみることができます。そして、たった1つの理想の人生が見つかったらその人生を実際に生きることができるのです。

もし過去をやり直せるなら、山ほどある後悔を全部消せるなら、私はもっと幸せだったのだろうか?と考えさせられました。無限の可能性があることはいいのですが、じゃあ自分にとって完璧な人生のその先にあるものって一体何だろう?と。本当の幸せの定義って何でしょう?難しいです。

私個人は、後悔すると間違いを認めたように感じる性分なので、若い頃は大門未知子ばりに「私、後悔しないんで」と豪語していた記憶があります。でも人間生きていれば多かれ少なかれ、後悔はつきものですから後悔のない人生なんて理想でしかありません。実際、年を重ねるにつれて後悔することも増えてきました。無限の選択肢がある人生の中で、1つも道を間違えないで生きることなんてほぼ不可能です。だったら失敗しても後悔しないように生きたい。そんなことを考えさせられる1冊でした。

余談ですが、主人公が会ったことのある図書館の司書さんが、今際の際の世界での指南役として登場するのですが、その雰囲気も個人的に好みでよかったです。私の人生の図書館司書って誰だろう?会ってみたいです。

最後のほうのシーンでは「ネバーエンディングストーリー」(映画)で「幼心の君」がバスチアン少年に名前をお願いして叫ぶシーンと重なりました。(読了した方になら伝わるかしら…?)私はオーディブルも合わせて聴いたので、特にそう感じたのかも。

ちなみに幼心の君↓。こんなに美しい少女がこの世に存在するのかと自分の容姿を呪ったものです。この髪飾りは永遠の憧れ。「バスチアン、私に名前をつけて!」

【訳書情報】


邦題:「ミッドナイト・ライブラリー」
著者:マット・ヘイグ
翻訳:朝倉卓弥
出版:2022年(ハーパーコリンズ・ジャパン)
ISBN:978-4596319067

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