小説版『アヤカシバナシ』監視カメラ
私が大きなデパートでアルバイトをしていた時の話です。
以前から飛び降り自殺があった、トイレで自殺していた等、その手の噂はバイトする前からあったのですが、それ気にしていたら働けませんからね、住むわけじゃないので。
閉店するまでのシフトもあるので、電気を全て落として帰る役目が私の場合もあったりした。
真っ暗とは言え非常灯はついているのだが、それが逆に気持ち悪い。
分電盤室にてブレイカーを下ろし、懐中電灯を持って売り場をぐるっと回って居残り者がいないか、火の気が無いかの確認をするのですが。。。。
パタパタパタ・・・・
走る音が聞こえました。
いつもは同じ階の別の売り場の人が居たりするのに、今日に限って私一人だった・・・神経が途端に過敏になり、耳を澄ます・・・・・
パタパタパタ・・・
きた!やっぱり聞こえる。
走り抜けた棚の裏の通路へ向かう・・・。
『誰?』
声をかけると『はははは・・・・』と笑い声がした。
子供の無邪気な感じ・・・
一度ウケると、同じことで暫く笑ってくれるあの感じに似ている笑い方。
赤ちゃんでもなく幼稚園の手前の様な感じ。
子供が残っているなら親が必死で探しているはず、これは子供ではない、いや、人ではないと判断した私だが、確信が持てないのに帰るわけには行かない、もし子供だったら?
ここで性格が出てしまうとは我ながらトホホである。
『出ておいで~』
出てくるわけないと言わんばかりの呼び方である。
『はははは・・・・』
パタパタパタパタ・・・・・
なんだよこれ・・・いっそ出るなら出て欲しかった。
いい加減帰りたい、そんな気持ちが恐怖を超えていく。
『もういいや』
責任感の強さはどうなったものか(笑)
ここで館内放送が警備室から直接流れてきた。
『如月さん、如月さん、振り向かないで早歩きでそのまま歩いてください』
『え?なに?なんなの?』
急に帰りたい気持ちを一気に恐怖が超えてきた。
一気に私は加速して、振り返ることなく前に進むと、『通路に沿ってそのままバックルームへ入ってください』と言われたので、指示に従ってそのままスタスタスタと早歩きでバックルームへ入った。
『大丈夫ですけど念のため階段使ってください』
との指示だったので6階から駆け下りて鉄のドアに体当たりするように開けた。
警備室に飛び込むと1人居た警備員さんに何だったのか聞いた。
『信じないかもしれませんけど・・・・偶然見た防犯カメラに写った如月さんの後ろに大きな女がついて歩いてたんですよ・・・とっさに人じゃないって感じましてね、僕、そういうの見えるんで;』
『今は?今は?』
『ええ、居ませんよ、ここ凄いですよ、うようよしてます』
『なのに夜警やってるんですか?』
『機械警備だから22時までの辛抱です、それまでだと、そうそう出会う事もないんで・・・やっぱり丑三つ時が好きみたいですよ』
『いやいやいや・・・今出たんですよね?』
『如月さんの波長が合ったんでしょうね、そういう時もあります、疲れてたりすると多いと聞きますけどね』
『そうですか・・・・助かりました、ありがとうございます』
『いえいえ、つれてこられると僕も怖いですから』
『はははははは』『ははははは』
それ以来一人で売り場を閉めて確認する作業は危ないと上に申し出て、2人体勢にしてもらえたのだが、その後足音も笑い声も聞いていない。
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