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【読書感想】烏は主を選ばない

八咫烏シリーズ第二弾。
前作を読んでから2週間。続編があるなら読んでみたい。
やっぱり気になったので、先の土曜日、書店へ駈け込んできました。

前作「烏に単は似合わない」は「単」とあるように、次期金鳥の后候補による熾烈なマウント合戦、もとい、華麗なる駆け引き。
今回は時間軸は並行していますが、舞台裏での若宮の動向。
前作で「うつけ」の若宮は、桜花宮での華麗なるいざこざなど知ったこっちゃないという勢いで、美味しい部分を最後掻っ攫っていきました。
キレッキレに最後、出てきたけど、何してたのよ?という疑問に答えているのが、この巻。

舞台は八咫烏が治める世界の中心、山内。
次期金鳥として立った若宮は、しかし彼に譲位した兄の心棒者や四家の思惑によって、日々命の危機に晒されていた。
そこへひょんなことから北方の地より、「ぼんくら次男坊」と名高い垂氷郷郷長が次男、雪哉が側仕えとして宮中へ上がることに。
「うつけ」の若宮の周りには、「ぼんくら」側仕えが一人と、旧知の護衛が一人。
奸計渦巻く宮中の中ではなかなかに心細いこのメンツは、次々とやっかいな事件、ひいてはお家騒動へと巻き込まれていく。

前作も「裏」と「表」がありましたが、今回もしっかりありました。なんといっても政治の世界ですからね。
わたしは額面通り読んでしまっていたので、相変わらず、最後でひっくり返されました。
協力者はお前かい!みたいな。

若宮側のお話ではあるのですが、主人公は「ぼんくら次男坊」の雪哉でした。
だからこそで、雪哉が読者の疑問を色々と口にしてくれました。
特に、桜花宮へ全く訪わない若宮が何を考えているのか。
「興味がない」とかそういう次元ではなく、ちゃんと姫たちのことを考え、彼女たちがどういう考えでいるのかを理解しているからこそでした。
「うつけ」な態度やつっけんどんな言い方が先行してしまっている若宮ですが、大局を見据え、優しくも達観した態度がギャップ萌えです。
しかし、浜木綿への思いなんて微塵も感じさせないところ、典型的な「仕事が忙しい時の男」って感じでした。いや、個人的な感想ですが。

終盤ふと触れられる「忠誠を誓う」ということの本質。

兄、長束の護衛である路近が、主のためとか自己犠牲とは「美しい言い訳」だと言っていました。
利用し、利用される。利害が一致したからこそ、仕えていると。

思考があるからには、意思があります。
意思とは、自身のエゴでもあります。そして誰かのためとは畢竟、奥底にあるエゴを満たしつつ、それが露呈しないように覆いかぶせる厚手の布でしかないのかもしれません。
野心による奸計が渦巻いている宮中において、純粋に主の駒として動くことは難しい。結局「主のため」と思っても、どこかで自己の利益へと繋がっていく。
それが認められない時、敦房のように、どこか壊れてしまう。
忠誠を誓うって、難しいし、なんなんだろうと思った後半でした。

今回、様々な駆け引きの間で多くの会話が繰り広げられました。
それらが今後のシリーズにおいて、響いてくるのではないかと思っています。

あー、本当にまとめ買いしておけばよかった。

おしまい

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