見出し画像

Episode 106 「レオ・バーネットさん」

本当の意味で、広告業界におけるスタート地点に立ったと実感できたのはbeacon communications(ビーコンコミュニケーションズ。以下、ビーコンと呼ぶ)に入社してからだと思われる。

ビーコンのオフィス。フロアによって色が異なる。【ピンク編】
ビーコンのオフィス。フロアによって色が異なる。【ブルー編】
ビーコンのオフィス。フロアによって色が異なる。【グリーン編】

この会社は、フランスの世界的広告代理店であるピュブリシスグループと電通との合弁企業だ。前身は、アメリカはシカゴの大手総合広告代理店であるLeo Burnett(レオ・バーネット)という会社である。

企業名であるLeo Burnettは、この創業者であるLeo Burnett氏からきている。

もちろん、広告業界における自分の出発点、つまりスタートラインは電通(Episode102参照)なのだが、具体的にその仕事内容(電通におけるスポーツ局での)を見てみると、あまりにも専門性の高い領域に特化した作業を行っていた為、王道の、「ザ広告代理店の仕事」からは少し離れていた内容であった。

もちろん、王道の内容が偉く、そうでない作業が偉くない、という様な次元の話ではない。尚、この場における「王道の広告代理店の仕事」の定義は、「クライアントの商品及び、またはサービスを展開するにあたり戦略、メディア、及びクリエイティブ観点から広告代理店としてのアイディア及び納品物を提供する」とする。

さて、広告代理店には実に様々な職種の人々が存在する。もちろん、その種類及び数は広告代理店の大きさ、規模によって異なるが、大きく3つに分けられると考えられる。

①アカウント(営業)、②ストラテジジックプランニング(戦略)、③クリエイティブ、である。これら①~③をレストランに例えてみよう。レストランそのものが広告代理店である。

そこをお客さん、すなわち、クライアントが訪れてきて、注文をするのだ。この注文を受けるのがアカウント(担当営業)である。アカウントは、いかに正確にお客さんが望むものを正確に把握するかが重要となる。仮に、注文内容が、「体が温まるもの」だとしよう。アカウントパーソンはこの内容を先ず栄養士的存在、つまりストラテジックプランナーに相談をする。

あれもこれも、というクライアント(広告主)は、あまりにも多い。

すると、ストラテジックプランナーはその注文の内容を解析・分析することから始まる。例えば、「なぜ温かいものを欲しているのか?寒さを覚えているのか?」または、「暑い時に熱いものを食すのを好んでいる人なのか?物理的に熱を持ったメニュー(スープなど)を用意するべきか?または摂取すると体温が上がる食材を用いて料理を行うべきか?」の様に、様々なシナリオ、様々な視点から(色々と)考え抜くのである。

考えて考えて考えるのが仕事。

そして、考え抜いた末、ストラテジックプランナーとしての結論を出し、そのまとめをシェフ、つまりクリエイティブの人に伝えるのである。例えば、「生姜を用いた、温かいスープ」としよう。もちろん、なぜその結論に至ったかという説明もシェフに伝える必要がある。

因みにその理由としては、例えば、「生姜は体温を上げる効果があり、併せて温かいスープを提供することでお客さんのニーズに応えられると考える」、といった具合になる。この説明を受けたクリエイティブは、そこで初めて手を動かし実際の作業に取り掛かるのである。

もちろん、最終的に出てくるスープはその担当シェフ、つまりクリエイティブによって異なる。生姜を全面的に用いた中華のスープを作るシェフもいれば、生姜はあくまでもアクセントとして留めた和風のスープを作るシェフもいるかもしれない。

最終的なアウトプットは、クリエイティブによって異なる。

ビーコンでは、マールボロ(フィリップモリス社のタバコ銘柄)を主に担当した。他にも、製薬会社のPfizer(ファイザー)、ニュージーランド観光局、メントス(ペルフェッティ・ファン・メレ社のお菓子)なども担当させてもらった。

しかしながら、やはりマールボロ関連の作業が最もインパクトが強く、記憶に残っている。尚、マールボロと言っても、マールボロレッドに代表される従来のタバコだけではなく、iQOS(アイコス)という加熱式タバコの担当をさせてもらった。

iQOSはフィリップモリス社が2000億円及び20年間という巨額な費用および時間を掛けて開発した製品であった。この製品の日本におけるローンチ関連の作業を我々の部は携わった。

そう、今から10年以上も前の話だ。尚、数年前の時点(2021年)で、既にその販売台数は、合計500万キット以上となっている。凄まじいヒット商品である。

がっつり担当はさせていただいたが、僕自身はタバコを吸わない。

マールボロはF1におけるスポンサーを歴史的に行ってきたとの事で、その関係でF1のレースを観る機会にも(もちろん仕事で、だが)恵まれた。尚、F1のレーシングカーのエンジンの爆音は、今まで耳にした何よりも大きな音の一つであったと言っても決して過言ではない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?