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短編小説 「私のチョコ」


私の名前はゆき。朝の通勤ラッシュで電車に揺られながら、いつものようにスマートフォンを片手にメールをチェックし、もう片手ではコーヒーを飲む。オフィスに到着すると、エレベーターで9階まで上がり、無数のデスクが整然と並ぶフロアを通って自分の席に向かう。PCを起動する前に、机の上の書類を整理し、今日のやることリストを確認する。午前中は、メールの対応とプロジェクトの進捗確認に追われる。

そして、毎日11時50分になると、アーモンドチョコを一粒食べること。この習慣は、ただのおやつタイムとは一線を画す、私だけの秘密の儀式だ。

午前の仕事が佳境に差し掛かると、私の心は不思議と落ち着きを失い始める。「あと10分か…」仕事に手は動かしつつも、私の心と時計の針は密かにレースを繰り広げている。私のデスクの引き出しには、常にアーモンドチョコが隠されており、その時だけは、まるで時間がゆっくりと流れるかのように感じる。

11時50分が訪れると、私は周囲が何をしていようと気にせず、そっと引き出しを開ける。そこには、私の一日の中で最も楽しみにしている瞬間が待っている。アーモンドチョコを一粒手に取り、ゆっくりと口に運ぶ。その一瞬で、甘さとアーモンドの香ばしさが、日々の疲れやストレスを一掃してくれる。

「ユキ、何食べてるの?」と同僚が興味深そうに尋ねてくることもあるが、私はいつものように微笑みながら、「これはね、私の小さな幸せタイムなの」と答える。この瞬間は、私にとっての小さな隠れ家のようなもの。外部からの干渉を許さない、私だけの特別な時間だ。

アーモンドチョコを食べ終えると、私は新たな活力を得て、再び仕事に向き合う。この小さな儀式が、日々の生活に彩りを与え、午後の仕事を乗り切るための源となっている。11時50分のアーモンドチョコタイムは、私にとって単なる休憩時間以上のもの。それは、日々を豊かにする小さな幸せの瞬間なのだ。




時間を割いてくれてありがとうございました。
アーモンドチョコの光沢感のあるチョコが好きでチョコだけを食べていました😓

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