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心理的安全性のつくりかた/リーダーシップ・チャレンジ2023開催レポートvol.7

社会人のためのリーダーシップ講座「リーダーシップ・チャレンジ 2023」(LC)第7回のプログラムは、2023年7月22日(土)にベストセラー『心理的安全性のつくりかた』の著者、石井遼介さんが講義を行いました。


📖講義内容

今回のテーマは……

・心理的安全性と心理的柔軟性
・心理的安全性をつくる言葉

心理的安全性という言葉は、組織の活性化の文脈と、コンプライアンスや不祥事の予防の文脈で、つまり「攻め」と「守り」の両面で注目されています。

組織の全員が活躍するための土台となるのが心理的安全性。管理職やリーダーだけではなく、全員協力、全員参加でチームをつくることが大事だと石井さんは話します。

イラスト:ひえじまゆりこ

◆心理的安全性とはなにか?

1965年に「組織の」心理的安全性が理論として世の中に出てきて、ハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソンが「チームの心理的安全性」を提唱しました。
これは一見すると何気ないことですが、チームの模索や挑戦による学習を通じて、パフォーマンスの向上に貢献するものです。
「明日すぐ」ではなく「将来の先行指標」としてとらえることが大事で、複雑な協働が必要なとき、組織で成果をあげようとするときには、すべての土台になるのが心理的安全性です。
魔法でも万能薬でもなく「土壌」「土台」なのです。

エドモンドソン氏は、もともと病院のチームを研究してました。そこで気づいたことは「治療成績のいいチームでは『ミスの数』が多かった」ということ。ミスが多いのに治療成績がいいとはどういうことか、彼女が更に調べてみると、治療成績のいいチームは「ミスの報告の数が多かった」ことがわかりました。つまり、そのチームの心理的安全性が高かったということです。
患者さんの生命がかかっていることでさえ、心理的安全性が低いと報告の数は減ってしまうのです。

◆心理的安全なチームとは?

心理的安全な関係とはどんなものでしょう?「仲良し」「ぬるま湯」というわけではなく、かといって「仲が悪すぎる」「仲が良すぎる」でもなく、健全な意見の衝突が存在するのが、心理的安全な関係といえます。

では、逆に心理的「非」安全なチームとはどんなチームでしょうか?
それは、小さな罰小さな不安が積み重なっているチームです。みなさんの職場は、罰と不安の職場になっていないでしょうか?

ひとつひとつの言葉の積み重ねが、心理的安全性をつくりだすのです。
よくある「話しづらい」チームは、たとえば
・上司が不機嫌
・部下の話を聞くときに、パソコンから目を離さない

です。ご自身のチームを振り返ってみるとどうでしょうか?

◆心理的安全なチームをつくるには?

心理的安全なチームづくりには、4つの因子があります。

①話しやすさ:何を言っても大丈夫な雰囲気
②助け合い:困ったときはお互いさま。必要なときは助けを求めやすい 
③挑戦:とりあえずやってみよう!成功・失敗がわかる前に、試したことそのものを認めあえる
④新奇歓迎:「異能、どんとこい!」という雰囲気で、「まとはずれ」な発言や意見ができる。「まとはずれ」かどうかは意外と自明ではなく、多様な意見を集めて気がつくこともあり、早期にわかった方がいい。

心理的安全性を生むためにおすすめなのは、自分が使う「言葉」から変えていくことです。

始めやすいのは「きっかけ言葉」と「おかえし言葉」です。

「きっかけ言葉」は「〜してください」のような、行動を促す言葉。できるだけ明瞭に、行動のハードルを下げて、その人の背中を押しましょう。

一方、「おかえし言葉」は「〜してくれてありがとう」のような、行為を受け止める言葉。行動した人がHappyに感じる言葉、行動の意義を感じられるような言葉をそえて、「ありがとう」と感謝しましょう。

きっかけ言葉はよく発することがありますが、「おかえし言葉」は少なかったり(量)、内容が不十分だったりします(質)。
心理的安全なチームをつくるためには「きっかけ言葉」と「おかえし言葉」のバランスをとることが必要です。

◆グループワーク

<テーマ1>
自社、もしくは自分の部署には心理的安全性がありますか?
「ある」:誰がどんなことをして安全性が確保されていますか?(成功要因)
「ない」:どんなことが安全性をなくしていますか?(阻害要因)

<テーマ2>
どうすれば自社、もしくは自分の部署に心理的安全性が確保できるでしょうか?対話によって可能性を探ってください。

<テーマ3>
【塾頭・駒井さんの講義(第1回第5回)を振り返って、今回の内容と接続しながら考えましょう】
良いリーダーに必要なこととは何ですか?どうやって身につけましたか?その体験や背景をシェアしてください。

🖊️受講生の講義レポートより

◆講義での学び、気づき、感想

心理的安全性が高い職場が何故求められているのかを、これまでは漠然とそうだろうと思っていたものが、明確になった(心理的安全性→チームの学び・成長→パフォーマンスの向上)。

金融業・男性・30代

心理的安全性といった言葉は色々なところで耳にするようになりましたが、歴史的な背景や体系立てたご説明をいただき理解が深まりました。特に「心理的安全性」は魔法でも万能薬でもないが、複雑な協働作業が必要な組織で成果をあげる場合の『すべての土台』となるといったことは、まさにおっしゃる通りだなと共感しました。

情報、通信業・男性・30代

心理的安全性の研修は、「風通しの良い職場・組織」を求め、何か問題があれば意見を言える環境を目指したコンプライアンス問題予防の観点だと認識していたが、組織を活性化させ、パフォーマンスを向上させる側面があることを理解した。

商社・男性・40代

社内でも心理的安全性が高い職場を緩んでいると表現する人を見かけることがあるが、それは仕事の基準の高低で判断すべきと、見方の軸が出来てよかった。

金融業・男性・30代

◆講義を受けて、短期的な目標、自分の部署への応用 など

自分自身振り返ると、忙しい時や余裕が無い時にも(心理的安全な対応が)できているか等、反省点もまだまだあるなと感じました。きっかけ言葉とおかえし言葉についてはその内容の質も含めて意識して実践しないとできないなと。今後は心理的安全性を職場全体の風土として醸成できるようにまずは自分から何気ない言葉に注意しながら意識して取り組んでいきたいと思います。

商社・男性・40代

グループワークの中で、Bad News Fastを大事にしている方がおり、皆にも発信していると共有を受けました。
私も歓迎する方ですが(早く言ってもらった方が何かと良いし、チームの気付きにもなる)明示的に「やっていこう」と話すことでチーム内の心理的安全性を向上していけるようにします。

情報、通信業・男性・30代

心理的安全性は、どことなく上司が部下に対して確保すべきもののように考えていた。当然優位的立場に立っている側はより気をつけるべきだと思うが、誰もが率直な意見をお互いに言い合える組織を築くためには、メンバー一人ひとりがお互いの心理的安全性を確保するという意識を持つことが必要だと感じた。そのため、本講義の内容をチーム全体でも共有し、より心理的安全性を確保できる組織を築きたいと思う。

金融業・女性・30代女性


何事においてもまずは相手の報告、説明を受け止めること。大隈塾の研修では、意見に対し否定コメントから入らずに、意見を言った人に必ず拍手しており、心理的安全性に繋がると思うが、会社で拍手は若干抵抗があるため、まずは否定から入らずに内容を受け止め、良い点はGOODですねと言えるようにしたい。また意見を言う相手の行為を尊重すべきと思った。
今回の研修内容を自分の中で整理し、自身が会社や部署で最近感じることを述べた上で、講義内容を説明して部内で共有することにする。

商社・男性・40代

🕰️タイムテーブル

08:45 zoomオープン
08:55〜08:59 オープニング、チェックイン
09:00〜10:20 石井遼介さん講義
10:20〜10:35 受講生ダイアログ(感想共有、質問をつくる)
10:35〜10:55 質疑応答
10:55〜11:00 クロージング <石井遼介さんご退出>
11:00〜11:10 休憩
11:10〜11:50 受講生グループワーク(2回 ランダム「自社での心理的安全性」・マザーグループ「今回の感想」<前期最後>)
11:50〜12:00 クロージング
12:00〜12:10 アフタートーク(10分程度、自由参加)

👤講師プロフィール

石井遼介(いしい りょうすけ)
株式会社ZENTech 代表取締役。
一般社団法人日本認知科学研究所理事。
慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科研究員。

東京大学工学部卒。シンガポール国立大経営学修士(MBA)。
神戸市出身。研究者、データサイエンティスト、プロジェクトマネジャー。 組織・チーム・個人のパフォーマンスを研究し、アカデミアの知見とビジネス現場の橋渡しを行う。

行動分析学の研究者として、チーム・組織のパフォーマンスを科学し、ビジネス領域、スポーツ領域で成果の出るチーム構築を推進するとともに、 日本の組織・チームに於ける心理的安全性の計測尺度を開発。

東京オリンピック・パラリンピックのメダルを携帯電話等をリサイクルしてつくる「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」立ち上げを民間側で主導。 2017年よりオリンピック委員会 強化スタッフ(医・科学)も務めた。

2020年9月に上梓した『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)は 33刷・17万部を数え、読者が選ぶビジネス書グランプリ「マネジメント部門賞」 およびHRアワード2021 書籍部門「優秀賞」を受賞。2022年8月『心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)監修。

❓リーダーシップ・チャレンジとは


リーダーシップ・チャレンジ(LC)は、会社で仕事(社業)を通じて社会に貢献する人材を育てる、ということをミッションにしています。

そのために、ヒューマンスキルを磨き、リーダーシップを身につけ、幅広い見識、判断力、思考力を学びとり、業界業種を超えた人脈を構築するビジネススクールです。

開講から20年目。本研修を学んだ受講生たちが日本国内のみならず、世界の色々な都市で活躍しています。
彼ら彼女らを、LCの教壇に立ったゲスト講師の皆様に後押ししていただきながら、私たち LCはこれからも、有能な人材を育み、社会に貢献していきます。

詳細はパンフレットをご覧ください

◆講義一覧

🏢2023年度参加企業 (順不同・敬称略)

受講企業
株式会社セブン-イレブン・ジャパン
株式会社セブンドリーム・ドットコム
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
サントリー株式会社
三井物産株式会社
株式会社三井住友銀行
三井物産スチール株式会社
三井農林株式会社
リテールシステムサービス株式会社
エーザイ株式会社
綿半パートナーズ株式会社
第一生命ホールディングス株式会社
株式会社再春館製薬所
外務省

リーダーシップ・チャレンジ 2023開催レポートvol.7
2023年8月3日発行
大隈塾事務局(一般社団法人ストーンスープ)
ひえじまゆりこ yuriko.hiejima@gmail.com
〒026-0002 岩手県釜石市大平町3-9-1
TEL:050-3558-7527
     公式MAIL:ookuma_school@stonesoup.tokyo


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