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〈皐月夢想〉


名残の桜が散って


遠山(えんざん)から

なだれる


青葉の裾を

五月の風がわたる


朝晩は

まだ冷える

列島の春の


ゴールデンの

市井の四井から


匂いたつ

フェミニンと


ジューシーな

若草色の夢を

もう一度

なぞってみたい

 

君のやるせない

熱望は


いつも九時の方向から

組み上げられ


一万ヘクタールの

獄(ひとや)のように

押し黙った部屋の


三時の方向の

罪の比喩に向かって

崩れ落ちる


もう一つ

目覚めの悪い

亜細亜の

煮詰まった

病んだ意思


もはや

枯化した

慣習のような

砂漠の同族闘争の


殺戮の武器の

応酬が


ほら


まだあんなに

柔らかい

若い骨と肉を焼いて

ゆくのだ


いくら凄惨な

歴史の具体を重ねても


学ばないわたしたち


滅ぶしかない

帝国と帝国の

老いさらばえた

歪んだ骨格


見上げれば


此処列島の

皐月の

天涯は

どこまでも

青く澄んで


わたしたちの

白昼の


空虚な心を囲繞する

高い壁の其処此処に


腐敗した

ツツジの花びらが


小さな無数の

骸(むくろ)のように

今日も折り重なっている


















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