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⭐〈ノルウェーの森〉にわけ入って



〈ノルウェーの森〉は、やはり単なる恋愛小説ではなかった。多分今回で三回目になると記憶しているが、この小説は、本当はハードボイルドなんだ、ということが今回よくわかった。
あれだけのパターンの性愛のシーンを一冊の本のなかで描いた小説はこの時代にだけでなく、この後の時代でもあまりないだろう。その中のいくつかを箇条書きにしてみる。

1. 31歳のレイ子さんとレズの中学生(13歳)の性愛のシーン。

2. 20になった直子が、わたなべくんに抱かれて、かってないオーガズムを味合うシーン。

3.恋人どおしになった直子にわたなべくんが、フェラチオをしてもらうシーン

4.直子が自殺した後にわたなべくんをたずねてきたレイ子さんをわたなべくんが抱くシーン、わたなべくんとレイ子さんは、この夜、四度性交する。

次にこの小説の中の死者は六名。これも箇条書きにしてみよう。

1.キスギくんが、ガレージの車のなかで一酸化炭素中毒死(自殺)する。

2.緑の母が脳腫瘍で亡くなる。

3.緑の父が同じく脳腫瘍で亡くなる。

4.直子のお姉さんが、自分の部屋で首吊り自殺をする。

5.わたなべくんの学生寮の先輩の永沢さんの
恋人、はつみさんが、永沢さんに捨てられて手首を切って自殺する。

6.直子が、元の療養所の近くの森で首吊り自殺をする。

さて、小説の物語が展開する舞台の半分は大学とその周辺であり、そして後の半分は、精神病の療養所である。

ヒロインの直子と、ある意味、緑に次ぐ準ヒロインと言ってよいレイ子さんが、精神的に病んでいるため、物語の全体を狂気が覆っている。

かってこんなにハードな設定をなされた物語があっただろうか?

緑の明るさだけが、唯一の希望のように描かれている。

なぜこの小説の登場人物たちは、こんなハードな負荷をかけられなければならないのか?

その答えを知りたいですか?
皆さん。

再読した結論です。

村上春樹は、(最後の)文学の古典になるかもしれませんね。

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