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STAY TUNED!! 99.9MHz 「SENSE OF MODE」 SIDE-B V:olta

緊急事態宣言が明け、引き続き自宅で過ごす人もいる中、外出や人に会う機会も増える人も多いのでは? 家から一歩外に出るために、身も心も引き締めたい。意識を高く、新しいフェーズに移行したい。そんな人たちの心を刺激する映画と音楽を紹介したいと思い、コラボ企画を考えました。

SENSE OF MODE
- V:olta × CAFE:MONOCHROME -

予てから膨大な知識量と深い音楽愛を持つ大阪・堀江にあるヘアサロンV:oltaと東京・渋谷にあるカフェCAFE:MONOCHROMEのオーナー2人にお声かけしてスタートした「SENSE OF MODE」。

実験性と独創性、常識を覆す力。ミニマルな姿勢の中にそれぞれの思考と人生が色づき、鋭利な美しさを放つ。モードな世界観を持つ音楽や映画、そしてファッションを愛する2人に、今おすすめしたい作品&モードな魅力を堪能できるとっておきの作品を教えていただきました。

SIDE-BではV:oltaのオーナー、中田さんにヒアリング。各作品のルーツを紐解きながらおすすめ作品を挙げてくださりました。ボリュームたっぷりで、読み応えバッチリ。各作品、ぜひチェックしてみてください。

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- BEST CHOICE MOVIE FOR STAY HOME -

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『シンプルメン』(1992年)

今回のお話をくださったぴくみんさんの感性も少し意識してセレクトさせていただきました。アメリカのインディ映画界における孤高の存在、ハル・ハートリー監督による長編3作目『シンプルメン』。正直、ストーリー自体は同じく“ロングアイランド三部作”と銘打たれた初期作品の『アンビリーバブル・トゥルース』や『トラスト・ミー』の方が面白かったですが、本作はカバーワークにもなってるソニック・ユースの「Kool Thing」にあわせて踊るシーンは、音楽好きなら一瞬でハートリー映画の恋に落ちるのではないでしょうか?こんなに“ロック”なシーンは、なかなか他にありません。ぜひ、観賞しながら該当シーンがきたら、一緒に踊ってみてください。ソーシャル・ディスタンスの距離感を掴むのにも有効なダンスかも知れません。


- Funs! MUSIC -

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『The Turning』
Various Artists

こちらも映画絡みですが、フローリア・シジスモンディ監督の新作『ザ・ターニング』のオリジナル・サウンドトラックをオススメいたします。Mitski, Soccer Mommy, Girl in Red, Cherry Glazerr, Warpaint ,など、これがフェスならインディロック・ファンは大喜びなメンツを揃え、さらに全曲この映画の為に収録された新曲のみで構成という絶品コンピレーション・アルバムとなっております。そして、アルバム冒頭を飾るのはコートニー・バーネット、ラストの曲はキム・ゴードンと、まさに「前門の虎、後門の狼」な最強布陣です!映画の方は、Netflixドラマ『ストレンジャー・シングス』でもお馴染みのフィン・ヴォルフハルトが主演を務めているらしいです。
自分好みのカルチャー臭が漂っているので、日本でも公開されたらぜひ観に行きたいと思っています。


- MODE ON MOVIE -

ファッション界で3大巨匠を挙げるとしたら、ココ・シャネル, クリスチャン・ディオール, イヴ・サンローランあたりが入ってくると思いますが、映画界で3大巨匠と言えば日本の黒澤明, イタリアのフェデリコ・フェリーニ, そしてスウェーデンのイングマール・ベルイマンのことを指します。僕もまだそれらの大御所の作品でも観てないものもたくさんあるので、映画を語れるレベルでは到底ないのですが、モードな映画を一本挙げるなら、その3大巨匠の一人イングマール・ベルイマン監督の“神の沈黙三部作”の一作目、『鏡の中にある如く』を挙げたいと思います。


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『鏡の中にある如く』(1961年)

3D映画も普通に存在するようになった現代でも、あえてモノクロで撮影された映画が公開されるのは、やはりモノクロームの世界には独特の美しさがあるからだと思います。そして、ベルイマン監督の映画にはフィルム・ノワールの美学に溢れています。しかも“神の沈黙三部作”ときています。こんなに格好良いタイトルが付けられた三部作の括りは他に聞いたことがありません。


先日、エディ・スリマンが自身の選ぶ映画10作品を公開していて、その中にもイングマール・ベルイマンの『仮面/ペルソナ』を選んでいましたが、古い映画に慣れてなかったり刺激を求める若い世代の方にはそちらの方から観るほうがお勧めかも知れません


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『仮面/ペルソナ』(1966年)

モードにはエレガンスとアヴァンギャルドの両方の要素がバランスは違えど共存していると思うのですが、『仮面/ペルソナ』は冒頭のモンタージュがとてもカッコ良くてゴダール的なアヴァンギャルドを感じますが、その後の映像は非常にエレガントです。それに比べて『鏡の中にある如く』は、派手さがなくシンプルな構成で、登場人物やその台詞により注目できます。そして、本作の特筆すべきは部屋の中や難破船の船内など、空間に差し込む光のコントラストの美しさです。「神は細部に宿る」という言葉が相応しい映像美です。


映画の最新作を観るのも良いですが、それらのルーツにある作品を知ることで、新しい作品を観た時に今まで気づけなかったところに気付けるようになることもあります。ぜひ長引く自粛生活の中で、フィルムノワールの名作たちもご覧になってみてください!


- MODE ON MUSIC -

音楽でモードを堪能するというのは難しいですが、僕は映画でも音楽でも、その作品単体よりもそれを作った監督やアーティストの考え方やこだわりに興味を抱きます。音楽の分野でも興味深い人物はたくさんいますが、今回はご存知の方も多いであろうデヴィッド・ボウイをピックアップしたいと思います。

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『ジギー・スターダスト』
David Bowie

デヴィッド・ボウイと聞いて、特に若い世代は『ジギー・スターダスト』の頃のデヴィッド・ボウイを思い浮かべる方が多いのではないかと思います。デヴィッド・ボウイは、この作品で「異星より来たバイセクシャルのロックスター」“ジギー・スターダスト”を演じ、本格的にロックスターへと昇り詰めます。ボウイは意外と苦労人で、本作の3年前に“Space Oddity”という曲で初ヒットするまで、バンド名やスタイルをコロコロと変えて試行錯誤を繰り返していました。

“ジギー・スターダスト”というペルソナを手に入れたボウイは、“ジギー”をさらに進化させ、奇抜なメイクや山本寛斎の個性的な衣装と共に、ロックアイコンの座を不動のものにします。多くの人がイメージするデヴィッド・ボウイの姿も、この頃のものではないかと思います。

しかし、ボウイは単なるロックスターで終わることを良しとせず、グラムロックブームの中、自身の演じる“ジギー”もその中心にいる人気絶頂期にあって突然“ジギー・スターダスト”を演じることを捨て去ります。

そこからボウイは、アメリカへ渡りドラッグに溺れつつも自身も黒人音楽に傾倒する中で「白人はいかに黒人音楽のソウルフルさに近づけるか」を追求し、さらにはベルリンに移り住みアンビエント音楽の先駆者ブライアン・イーノとのコラボレーションのもと後に『ベルリン三部作』と呼ばれるアルバムを完成させます。

ベルリン時代の77~79年頃は、ロンドンではニューウェイヴが全盛期でしたが、この頃のボウイの作風はあえてオールド・ウェイブを前面に出したもので、ボウイの生き方そのものがロックスターを目指したものではなく、いかにアーティストとして音楽を追求していたかがわかります。かと思えば、その後アメリカに戻りニューウェイブを前面に出したアルバムを制作したり、ティン・マシーンというバンドを結成したり、いろいろ迷走したのちに『Let’s Dance』の大ヒットによってロック好き以外のファンも獲得するメジャー歌手へと更なる転身をしていくのですが…


そして、2016年1月。69歳の誕生日に遺作となるアルバム『ブラックスター(★)』を遺し、その2日後にボウイはこの世を去ります。

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『★(ブラックスター)』
David Bowie

ボウイはこの作品の制作に取りかかる頃、ケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』を聴きモダンジャズへの探究心も深めていました。本作もダニー・マッキャスリンやジェイソン・リンドナーなど、ボウイよりも下の世代のジャズ奏者を起用し、最先端のジャズの要素を押し出した作品でした。死ぬ間際まで進化を求め続けたその生き方は、ある種モードを体現した姿ではないかと思います。そういうアーティストの生き方を知って作品を聴くと、さらに一重にも二重にもその作品から得られることも増えてきます。モードを知る上では、その背景にあるものを知るということも、とても大切ではないかと考えています。


MODE IS MY PLACE

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僕の場合は、実家が田舎で民家みたいな家だったので、自分の部屋をいくら自分の趣味のものでカッコよくしようと頑張っても、本当に納得のいく部屋にできなかったという思いがあるので、自分の店を持つ時は細部にまでこだわりたいという空間への憧れのようなものがありました。

内装は空間デザイナーさんイメージを伝えて、とてもアーティスティックに仕上げてもらいましたが、その空間に存在する本や花、流している映像や音楽は、自分の趣向に合わせて変化させていくことができるものです。その空間を働く場所にしている自分のバックボーンにあるものを知って欲しかったり、伝えたいという思いもあります。

美容室としてヘアデザインをするというのが本職ですが、お店に通ってくださるお客様に空間を通じてカルチャーの刺激を感じていただくことで、お客様のライフスタイル自体にも影響を与えれたり、日々の生活をより豊かなものにできたらなら、これほど嬉しいことはありません。

by 中田 大助(V:olta owner

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V:olta

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V:oltaは大阪の南堀江にあるヘアサロン。“モード”を軸に、その人のスタイルやファッションに合わせて洗練されたヘアスタイルを提案。黒で統一されたスタイリッシュな店内で、受付前にはSonic Youth、The xx、Primal Screamをはじめとした音楽関連の作品に加え、ファッション、アートにまつわる書籍も置かれており、つい長居してしまうことも…。フロアとシャンプー台で選曲を分けるという音楽へのこだわりも深く、カット中に色んな音楽のお話が聞けるのも魅力です。

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ACCESS:〒550-0015 大阪市西区南堀江1-14-26 中澤唐木ビル2F
HP / Instagram

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中田さん作成の最新プレイリストはこちらから

またV:olta HPのブログにて、おすすめ楽曲の紹介コーナーもあります。こちらも合わせてぜひ。



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