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サービス業の辛さを実感した話。

ドラッグストアやスーパーの店員の方々が大忙しで動いてらっしゃる。

新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、マスク、紙製品、保存食などが相次いで品薄になり、
店舗には毎日たくさんのお客さんが訪れ、
店員の方々は対応に追われてらっしゃる。


特にマスクはどこの店舗に行っても見当たらない。
「マスクはどこだ?!」とお客さんが店員の方に問い詰めるも、政府がマスクを増産しろというぐらいなんだから、マスクの入荷時期なんて店員の方もわからない。

マスクが手に入らないことに対するイライラを店員にぶつけて、
クレームをいうお客さんがいたが、
クレームを言って店員を責めてもマスクが手に入るわけではない。

私は2年前に損害保険会社のコールセンターで働いていたが、
大型台風が日本列島を通過して行った時、我々の職場は戦場そのものだった。

特に2年前の台風21号は大型台風で各地での被害が非常に大きく、
火災保険の請求の電話が殺到した日々を思い出す。

もう電話に対応するだけで必死だった。
回線がパンクしそうなぐらいまで保険請求の電話が殺到し、
「やっとつながった」
「何時間待たせるんだ」
「遅すぎる」
などと、電話に出るやいなやまずは怒られる。

「大変長らくお待たせして申し訳ございません」から始まって「この度はお待たせして申し訳ございませんでした」と言って電話が終わる。

「申し訳ございません」などのお詫びの言葉は、1日に100回以上は確実に言っていた気がする。

台風被害で問い合わせがが殺到し、保険担当者がお客様に折り返し連絡するにも数週間かかるといえば、またもや文句を言われる。

不安になるお気持ちもわかるが、みんなが同じような事態になっているし、何より天災による被害だから誰を責めても仕方ない。

それに責める相手がいないからと、我々のような保険会社の受付スタッフに不満を漏らしたくなる気持ちもわかる。

誰かを責めるのは簡単でも、誰かから一方的に押し付けられる怒りやイライラにひたすら文句を言わずに耐えるのは簡単なことではない。

こういうのは責められる側に立ってみないとわからないものだ。


火災保険の請求の電話はどんどん入ってくる。
100、1000、10000と問い合わせの数は恐ろしいほどの早さで増えていった。
すぐに既存のスタッフだけでは対応できなくなり、数百人単位の応援スタッフにも来てもらうことになった。


それでも間に合わない。

「まだ待たせるのか」
「他社はもっと早かったぞ」

お客さんからの罵声が容赦なく耳を刺す。
担当者だって我々だってそんなにお客さんを待たせたくない。それでも通常のキャパシティーを超える数のお客さんから請求電話が入ってくる。

明らかに限界。

人間というのは追い詰められた時にその人の本性が出てくるものなのだろう。
最初は優しそうな口調で話していたお客さんが、台風の影響で担当者の対応が遅れるかもしれないと言うと突然キレ出して不満をぶつける方もいた。

こんな電話を何日も何時間も受ける。
精神を病んで休憩中にうつむいてばかりのスタッフもいた。

台風21号で多くの会社は自宅待機をいわれていたなか、保険会社の職員や我々派遣スタッフは出勤するようにいわれた。

全国に支店があるわけだから、その日の台風21号の被害の連絡については、台風21号が通過した地域以外のスタッフで対応したらいいものの、台風21号が直撃するといわれているなか我々は出勤していた。

台風が通過している時、建物が壊れるような今まで聞いたことのない音が鳴る中、我々は保険請求の電話に対応していた。
風でビルが揺れているのを感じ、建物がぶっ壊れるのではないのかと最悪な展開まで想像したりもしていた。

電車も朝から運休する宣言をしていたんだから、夕方以降に帰宅困難になることは最初からわかっていたはず。
電車が運休するわけだから、電車に乗れない人がタクシーに殺到することだって容易に想像できた。


自主的に出勤しなかった人もいたが、会社の上司や派遣会社の担当者から出勤を要請する電話が入ってきていたらしい。

保険会社側も人手不足だろうが、
スタッフの命よりも会社に尽くすことを優先させるとは。
会社への不信が増していくキッカケにもなった出来事でもあった。

しかし、今回の新型コロナウイルスの感染拡大についても思ったが、
災害や病気で苦しむ多くの方々を何とかして救おうと奮闘している方々はたくさんいらっしゃる。

保険会社での仕事をしていたからこそ思う。
不安を煽る情報やデマに流され、
冷静な気持ちを忘れて、懸命に対応している方々のことを頭ごなしに八つ当たりしたり責めたりしても、感じが悪いと思われて保障を受けられるのが遅くなるか、
最悪の場合は保障を受けられなくなることだってあるのだからと。


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