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誰も、彼女に頼られなかった。

このnoteは去年の師走に書きかけて、しかしずっと完成させられずに放置していたものです。自殺やうつ状態について記載してあるので、その旨をご了承の上でよろしくお願いします。





2021年、師走の訃報。


2021年12年19日、冷たい空気が耳に痛い晴天の日曜に通勤してからの昼休み、神田沙也加ちゃんの訃報をやっと知りました。ここ数日はひたすら職場への通勤と、その間をなんとか縫うようにイルミネーション撮影が忙しく、まともにテレビが観られなかったので。



なんとなく感じていた親近感。


私は神田沙也加ちゃんの特別なファンというわけではありはせん。彼女とは二つの共通点を持つのみで、他は全くの正反対の環境に育ちました。同じくするは「秀でた両親の間に生まれた、一人娘」であること、そして「後年は実の母親と縁をほぼ断絶していた」ところです。


沙也加ちゃんの家とは比較にもならんですが、我が家の両親は早稲田大学を卒業し、父は建築家で母は長く教師業をしていました。母の方が父より収入が格段に上だったのも似ているかな。周囲からの期待と「子供は駄目だね」という声なき失望は、物心ついた頃から感じていました。


神田沙也加ちゃんと、他にも明石家さんまさんと大竹しのぶさんの愛娘IMARUちゃんも、いわゆる「十四光」と呼ばれる存在。七光の二倍という表現ですね。歌舞伎では当然のことながら、芸能界でも息子や娘が俳優や歌手業、また文学界でも親の仕事を子供が追い掛ける姿は珍しくありません。ハリウッドでも多数の二世アクターが大活躍しています。


彼女を知ったのは、人気マンガ「ドラゴンヘッド」の実写版。主演の妻夫木聡さんが好きで、原作とどの程度開きがあるか知りたくてテレビにて視聴。全く心を動かされなかったというのが、正直な感想でした。原作が余りにも壮大なので、とても二時間枠に収まりきらず低迷作品として残念な結果に。

その公開当時に妻夫木さんが「神田沙也加ちゃんは、普通の子だった。優しくて明るい良い子」とインタビューで語っていた声を何故か忘れられずにいます。そして第一印象は「正輝さんに似てる!」です。


SAYAKA、という最近の二世芸能人に多いアルファベット表記の芸名でデビューした彼女は、どうしても私の中で「松田聖子と神田正輝の一人娘」という厚いベールの中に存在し続けていました。その頃は、こちらも藤圭子さんの一人娘である宇多田ヒカルちゃんのまさに全盛期ということもあり、比較される場面が多かったと思います。


実際、母親の聖子さんは沙也加ちゃんをヒカルちゃんのように「作曲作詞ができる、世界を舞台に歌えるアーティスト」として成長させたかった思いも持っていたようで、その過程において余計な娘の彼氏については厳しく対応し、母娘喧嘩の原因になったとも聞いています。


そして、両親の離婚。聖子さんの過去を見つめると、特に驚きはなかったです。その後も色々な男性との交際を隠してなかったし、正反対に独り身を貫く神田正輝さんの姿が対照的。


父と娘の優しい関係。


これは明石家さんまさんとIMARUちゃんにも共通することなのですが、奔放な母親を持つと、両親が離婚した場合に子供が帰る大切な場所、救われる癒しの家が無くなっちゃうんですよね。だから私は、さんまさんは口では色々恋愛についてトークするけど、心の底では娘の為に一人のままで「帰れる家」を守っているのではないかと。



このお顔が、まさにうちの父が私に向けていた眼差しそのもので、ツイートが世を沸かせた時にはなんだか泣きそうになったものです。どうしても陳腐な表現になりますが「愛しかない」というワンカット。


神田正輝さんも毎年、沙也加ちゃんのお誕生日には「沙也加、愛している」というメッセージを必ず送っていたと聞き、悲劇の一報を知った時は最初に本人についてではなく、まず父親である彼のことを考えました。筆舌にも尽くしがたい衝撃と哀しみと怒りや絶望。足元が一気に崩れ落ちる感覚だったはず。私にも体験があるので……。


沙也加ちゃんが「アナ雪」や舞台「マイフェアレディ」他アニメ作品などで私の好きなジャンルで活躍していた後半期、ほとんどその活動には興味を持てなかったのが本音です。ただ「頑張っているなあ」と、遠くから見守っている距離感がちょうど良かった。「銀河鉄道999」のメーテルも演じる予定でしたよね。



若い自死と、現実の重さ。


三浦春馬くんや志村けんさん、他にも自死や感染で急死した芸能人が続く令和。先日はついに「ウルトラマンガイア」「新愛の嵐」で好演していた渡辺裕之さんが66歳で自ら旅立ってしまい。このnoteをきちんと書き上げようと決意しました。なんと言えばいいのかな……、自分の中で彼らの死をうやむやにしたくなかったし、私自身も自殺を本気で考えたこの二年……。自ら命を絶つ程の絶望と向き合おうと。


沙也加ちゃんが他の方々と違うのは、ご両親が骨壷を持ってカメラの前に登場したリアルです。あれは本当に、本当に私の中では大きな衝撃でした。春馬くんや志村さんの死は「もしかしたら、別の国で生きていたりするかも」「天国で静かに暮らしている」という、漠然としたイメージや思い込みの中にあり……。


でも、真っ白な骨壷を持った神田正輝さんと松田聖子さんの姿を見て声を聞いて……。これが親よりも早く亡くなるという現実であること、私よりも一回り年下の女性がこの世からいなくなってしまったことを初めて痛感したんです。

そして「離婚以来、初めて二人が並ぶ姿」「神田沙也加の両親として」のビジョンに、やはりこの元夫婦も、子供がいるからまだ絆を持っているのだなあと。

それまで知りませんでしたが、「沙也加」という名前は石原裕次郎さんが付けてくれたのですね。


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裕福で、たくさんの相談相手がいるはず。



私には現在、頼れる人はいません。父の代からのお隣ご近所さんはありがたい事に時々、顔を合わせると「大丈夫?」「何かあったら話してね」と暖かく話しかけてくれますが、経済的な不安や母との相続問題について深く相談できる対象ではありません。貯蓄も無く、日々常に暗く重い絶望感を背負いつつ、強いストレスをなんとか逃避しつつ考えこまないようにしています。




しかし、満ち溢れた裕福さを持ちいくらでも優秀な弁護士や精神科医、高額なカウンセラーを受けられたはずの神田沙也加ちゃんは、たくさんいた大御所の先輩や業界の友人、その誰にも頼らずにホテルの窓から飛び降りてしまいました。直前に父親の正輝さんと電話で話していたと知って、二人が最期にどんな会話を交わしたんだろうと。


私は毎日のように「パパとまた話したい、一緒に大好きなアニメやハリウッド映画、欧米ドラマを観たい」と思い出に浸ります。幸福な子供時代があったからこそ、おそらく今こうして少しでもポジティブになるべく文章を綴れている。動悸が激しく飛び起きる朝も、父や叔父達が過去に与えてくれた無償の愛を魂の中に蓄えて、なんとか一日、そして一週間、一ヶ月を生きています。


沙也加ちゃんが重度の鬱状態になっている時、もしお父さんに「寂しい、今からすぐ会いたい」と言えば、正輝さんはすぐ飛行機に乗ったと思うんです。二時間くらいで会えたはず。でも、彼女は誰にも助けを求めず一人で冷たい空気の中を翔んでしまった。


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鬱になると誰にも会いたくなくなる。


鬱状態になると、逆に物凄くハイテンションになる人もいます。私も会う人に必ず「鬱があるなんて信じられない! いつも元気なのに!」と驚かれるんですね。

人間は「大丈夫?」と聞かれるとどうしても「大丈夫だよ」と反射的に応えてしまうものです。鬱が重くなると誰にも会いたくなくなり話せなくなります。公演中でもあり、もしかしたらそんな状態にあったのか。誰にももう知る術はありません。全てが想像や仮定になってしまう。有名人だけで無く、全ての自殺者に当てはまる事でしょう。



三浦春馬くんや竹内結子さん、神田沙也加ちゃん、そして渡辺裕之さんの自死の直後に流れたネットのニュースには、必ず下記に「命の相談室」の電話番号が掲載されます。いつ発信しても混み合っていて繋がりません。四時間リダイヤルし続けて、やっと繋がった時に「それで、貴方は私に何を相談したいんですか?」と心を切り捨てられた人の体験談もTwitterに流れました。


私は取り敢えず、裁判所から届く母の相続トラブル書類について先延ばしにしつつ、それでも命を手放せず生きて暮らしています。仕事の環境は本当にホワイトで、初めて派遣社員として「辞めたくない」と考える日々です。平和な地元の街を歩く時に「多分、自宅を親に奪われるような深刻な悩みを抱えている人は、他にここにはいないだろうな……」と羨ましく家族連れを眺めたり。沙也加ちゃんもこんな思いで世間を眺めていたのかな。


ただ、彼女と私の決定的な違いは、恋愛や結婚観念だと思います。私はどうにも子供の頃からそれらをとても冷めた視線で眺めていましたし、「自分には関係のない次元の話」とバッサリ断ち切ってました。

周囲の親族のほとんどが恋愛結婚で失敗して離婚や別居したり、財産で揉めている姿を知っていたし。おそらく自身の恋愛に全く無関心な「アロマン・セクシャル」に限りなく近い。だから、そこに人生の希望を見出したり、縋ったり溺れたりは皆無でした。




先日、松田聖子さんが歌手活動を再開しましたね。一人娘の結婚式に呼ばれなかった彼女が、その産んだ我が子に先立たれてどれほどの物を背負ったのか、これもまた第三者には想像できない。

残された人は生きていく気力と体力がある限りは、食べていくために働いて生活しなければなりません。それだけは唯一、理解せざる得ない現実です……。


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そしてもがき苦しみ、明日を迎える。


今日の東京は、五月とは思えない肌寒さで小雨が降っています。私は相変わらず休日の朝は不安感に襲われ、逃れたくてこうしてもがきます。テレビは大河や好きな映画、アニメを二本程度かな、観るくらいで最近はもっぱら懐かしい海外ドラマをBlu-rayで見返す程度。家は静かです。だから救われているのかも。


重くて暗い記事を読んで下さり、ありがとうございました。noteって、重暗い記事は歓迎されにくいのでどうしようか迷いましたが、これを書き上げたら何か口に入れようと思って。

地元の駅前に新しいメンタルクリニックができたらしく、Googleレビューで好感触だったので予約してみようと思っています。


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マダム、ムッシュ、貧しい哀れなガンダムオタクにお恵みを……。