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映画『特捜部Q Pからのメッセージ』

2016年/製作国:スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ノルウェー/上映時間:119分 
原題 Flaskepost fra P
監督 ハンス・ペテル・モランド



予告編(日本版)


STORY

 特捜部Qに「浜辺に落ちていたボトルの中から血のような液体で書かれた判読困難なメッセージの紙片を発見した」との、新たな事件が持ち込まれる。
 心身困憊しんしんこんぱい状態のカール・マーク( ニコライ・リー・カース)を気遣いながら、アサド(ファレス・ファレス)はローセ(ヨハン・ルイズ・シュミット)と共に事件を調べ始める。
 
 鑑定により、紙片の入れてあった瓶には藻が付着しており少なくとも5年以上は海中にあったこと、紙片の文字は船に使用されるタールによって綴られており、人間の血液が付着していたことが判明。アサドの解読によりどうやらメッセージは子どもの書いたもので「エホバが救ってくれる」と記されており、差出人の名前は「P」の付く名前である可能性が高いことも分かる。
 そこで特捜部Qのメンバーは過去10年の間に国内で誘拐された子どもの情報を調べたが、誘拐された2人の子どもの名前に「P」の文字は無く、「エホバの証人」とも無関係であった。
 
 しかし更に紙片のメッセージの鑑定を進めると、メッセージには「ここに他の子供たちもいた」と記されていることが判明する。
 カールとアサドは小学校を訪れ「エホバの証人」の信者を親に持つ子どもについて聞き込み捜査を行い、教師より「エホバの証人」の信者を親に持つ「トレクヴェ」という子どもの情報を引き出すことに成功する。しかもその子は両親の都合にて学校を去り、オーストラリアへ行ったことになっていた。またその会話の最中、教師が「子どもたち」と言ったのを聞き逃さなかったカールがそのことを指摘し、教師から新たな情報を引き出すと、なんと「トレクヴェ」には「ポウロ・ホルト」という「P」の文字を名前に持つ兄が存在することがわかり、更には兄弟の両親が睡眠薬の大量摂取にて不審死を遂げていたという事実までもが浮上する。その事件の調査報告書では、両親は「宗教儀式遂行中に誤って死亡」したものとして処理されていたが、カールは「エホバの証人」には薬品を用いた宗教儀式が存在しないことを知っており、調査報告書の間違いを指摘。
 カールとアサドはトレクヴェを探し出し話を聴くべく、急いで車を走らせるのであった。
 だがその時の2人はまだ、自分達の追う事件が、宗教の深い闇をまとう「連続児童誘拐殺人事件」に繋がるとは、知る由もなかった・・・
 
 そしてちょうどその頃、別の地区にて、「エホバの証人」信者の両親を持つ小学生の姉弟が「エホバの証人」の伝道師を名乗る男に誘拐される・・・

 闇に閉ざされた連続殺人事件の真相に光を当てることは出来るのか・・・
 誘拐されてしまった姉弟の運命は・・・
 今、特捜部Qの新たな戦いの幕が上がる
 

 

レビュー

 本作は主に、宗教の持つ「闇」と「光」の両面、そして宗教が子どもに刻印する可能性のある「トラウマ」を描いております。
 たくみだなぁと思うのは、カールは「無宗教で宗教を毛嫌い」しており、アサドは(前作でも伏線として少し描かれていましたけれども)「イスラム教を深く信仰し神の存在を信じている」という設定で、そういった設定を設けることにより2人の人間性のみならず、物語にも深い陰影をもたらしていること。
 
 また「水」の表現(使用意図とメタファー)や犯人の造形も見事で、何よりも宗教の持つ「光」と「影」の両極を「アサド」と「犯人」に託し、その中間にカールという存在を配して、巧みに鑑賞者の視点のバランスを保ちながらぶっちぎってゆくそのスピード感と安定感には、ギンギンに魅了されました。

 ダニエル・クレイグ主演の「007」シリーズよりパクりまくったカッコいい構図(特にアサドの海シーンLove)や、潤沢な製作費を背景にした贅沢リッチな映像の数々も素晴らしく、その上で社会問題も硬派にねじ込みまくって「上質なエンターテイメント作品」として仕上げてくるのですから、文句のつけようがありません。
 大満足です。

 ※というかラストの「カールのセリフ」がうますぎて笑う
 


 

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