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『すすめ!社労士くん』雇用が禁止された世界

登場人物 L:社労士事務所所長のLab. U:仲良しの同業者うさぎ所長

「成立です!雇用禁止法が成立です。3年後に、この国から労働者が消滅します!!」

L:あ~あ、とうとうそうなっちゃったか。

東京に出張中のLab.は、宿泊先のホテルで朝食を食べながらニュースに見入っていた。

L:乱暴だよな。労使紛争を無くすには、片方がいなくなればいいんだっていう発想。でも世の中不安定になると、こういう極論が支持されちゃうんだもんな。

他人事のように評論しながら自分の商売が今後どうなるか想像してみようとしたが、例のごとく嫌なことは後回しにするのであった。

L:おっと、こんな時間だ。そろそろうさぎチャンの事務所に行かないと。

仲良しの同業者であるUの事務所はホテルから3駅ほど行った一等地にある。

L:お、ここだここだ。場所いいなぁ。俺はどこにしようかな。やっぱスカイツリーがきれいに見られるところかな。意外と埼玉からも見られるから、懐かしのあの辺がいいかも。

東京進出など夢のまた夢であるという現実はわきに置いて、妄想にふけるのが最近の楽しみである。

U:お、Lab.タン、待ってたよ。

L:おはよう、うさぎチャン。ほー、さすが3号マウ事務所。高価な定期刊行物がズラリ・・

U:Lab.タン、最近ブイブイいわせてるようじゃない。東京進出も近いね。

L:いやー、まだまだ💦っていうか、ブイブイ・・って死語もええとこやね。俺らの世代しかわからへんやんw

U:それはそうと、AI秘書のENAチャン元気?

L:えぇ、でもおじさん構文へのダメ出しが増えちゃって・・

U:愛知支店のかずチャンは?

L:かずチャンの研修が好評でネ。飛び回ってますよ。

U:こにタンは?そういえば、どこにいるのか知らないけど。

L:フルリモート勤務なんだけど、一度もビデオオンしてくれたことないんだよね💦本人は美女過ぎるから非公開と言ってるけど。

U:あはは、それって蝶先生と一緒だ。

L:ここだけの話なんだけど、東京の前に浜松に進出するの。

U:え?まさか・・・

L:そのまさかで、み〇じろうチャンのとこ、買わせてもらうことになったのよ。

U:破竹の勢いだなぁ、うちもそのうち買われるのかな。

L:あの法案が通ちゃったから、それは無理かなぁ。

U:あぁ、雇用禁止法ね。

L:解雇の金銭解決制度が整備されて以来、めちゃくちゃ紛争増えてあらゆる使用者団体から圧力かかったみたいだけど、いくらなんでも紛争当事者の片方を無くせばいいっていうのはどうなんかなぁ。労働組合の組織率がここまで下がると、抵抗勢力も存在しないけど。

U:まぁ、うちはあんまり影響ないかな。

L:賃金は無くなるけど、委託料は存在するから、うさぎチャンのところは委託料の設計でやっていけるもんね。

U:まったく同じようにはいかないけど、ノウハウは流用できるしね。

L:労働者のいない世界かぁ・・、社労士の扱う法律のほとんどが無くなっちゃうなぁ。

U:さすがに公務員の雇用は一部残るみたいだけどね。いよいよ社労士資格も消滅するのかな。

L:社労士が無くなったら、「~コンサルタント」って衣替えしなきゃならんのかなぁ。

U:これは噂なんだけど、社労士に代わる新たな資格ができるらしい。

L:え?どんな資格?

U:いろいろ言われてるんだけど、「准弁護士」とか「委託士」とか「あっせん士」とか・・

L:なんか中途半端な感じだなぁ。

U:結局、「国民総事業主」な世界になっちゃうんだけど、一人一人だと弱いから、これからいろんな団体ができるんだろうね。

L:あぁ、そうだよね。「大阪フリーランス連合」みたいな。

U:そこで使用者と個人事業主をマッチングして紹介するっていう感じになるのかなぁ。

L:それって今までの紹介業と変わらんね。まぁ、事業主を紹介するから規制は今より厳しくないんだろうけど。

U:そうやってフリーランスの団体がポコポコ出来たり、紹介業者がわんさか出たりすると、なんか先祖返りみたいな状況になるね。

L:規制のなかったころの労働市場でしょ。それで、また色々トラブルが起きて、「やっぱりフリーランスを保護しなきゃ」なんてことになりそう。

U:そのときには、今の社労士みたいな資格ができるんじゃないかな。

L:なんだろう・・フリーランス保険労務士だから「フ労士」みたいな?

U:ださっwww

L:歴史は繰り返す、みたいな。あー、でもうさぎチャンはいいなぁ、どんな時代になっても生き抜いていけそうだから。

U:せっかく浜松進出までしたのに、あと一歩のところで東京進出は無理とか?

L:うーん、とりあえず新たな商売やらないと現状維持すらできないからなぁ。

U:なにがいいんだろうねぇ。

L:おじさん構文以外・・

U:これからの時代にマッチしたもの。

L:とりあえずフリーランス団体でも作ろうかな。

U:会費でも取るんかい?

L:ベーシックインカム法案も同時に通ったでしょ。

U:あぁ、あれでセーフティーネット確保しているっていうスキームだもんね。

L:ベーシックインカムから何パーセントか会費としてもらって、フリーランスさんたちに仕事をあっせんしたり共済とかやったらいいかなって。

U:なんか、ベーシックインカムっていっても、そうやっていくらかはどこかに持っていかれるんだろうね。

L:人を悪人みたいに。

U:まぁ、ともかくLab.タンが東京進出する日を心待ちにしてるよ。

L:あー、そうやっていっつもマウマウされるのムカつく―。

U:うちを買えるもんなら、買ってみなっ!

L:その言葉、倍返しさせていただきますっ。

U:そんときは土下座しますよw

L:あのドラマの続編、やるのかなぁ。

U:真剣な話のはずが、結局こんな感じで終わっちゃうなぁ。

(おわり)

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