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敗者だから伝えたい こうして会社は倒産しました 15

~有能社員が無能だったことに気づいた~

 前回までのあらすじ。資金が無いときの心情についてお話しました。

 今回は後に大きな問題を引き起こす原因になった話です。システムの話がいっぱい出てくるので、苦手な人は読みにくいかもしれません。

システムの刷新をしないと数値が読めない

 会社で使用してたシステムは、いわゆるオフィスコンピュータで、COBOLで動作していました。

 COBOLはコンピュータ言語のひとつで、一時代にはビジネス用システムのほとんどがCOBOLだったと言っても過言ではない程度に重用されていました。現在でも抜本的にシステムを刷新することで発生するトラブルを懸念するため、プログラム自体をほとんど変更せずに、動作する機器を最新の高速機に変更するだけで、業務効率自体は速度的に向上するという手法等も使いながら、現在も一部のビジネスシステムで使われています。

 私の与えられた最大の任務は黒字化なので、そこに問題点をあぶりだすためのデータ解析は非常に重要なポイントです。従来のシステムでは、特定のデータを拾い出すためには、その帳票用のプログラムを組まなければならなかったため(当時がちょうどデータウェアハウスへの移行過渡期でした)、システム刷新への思いは非常に強くなっていました。

数値を見えにくくする商習慣

 更に、当時の地元流通業では商習慣として、事務手数料・販売手数料・事務処理料等の名目で、バックリベートを取ることが多く行われていました。ここでいうバックリベートとは、ドラマとかで言う個人的に渡す裏金ではなく、定率で仕入価格の総額から引かれる金額のことです。

 毎月請求時に必ず引かれる割合なので、当然にその分を上乗せして見積や販売促進を行うことになります。多くの得意先では、0%でしたが、中堅以上になれば2%~3%、多いところでは7%程度を取るところもあります。

 その中で、1社だけは際立って高く、トータルで15%のバックリベートを取る会社がありました。冷蔵専門の問屋で、当時の必要粗利率卸が15%の時代でしたので、その顧客からは、平均30%以上の利益率を取らないと成り立たないことになります。

信頼する従業員

 一方で、債務超過解消を最重要課題とし、その中でも最大の赤字を垂れ流している問屋業で、私が最も信頼をしていた従業員は、「利益を確保できる人材」でした。利益がきちんと確保できる人を優遇し、その手法を展開することが、最も早道のような気がしたのです。今思えばそれも正しくないのですが、当時はそう思い込んでいました。

 十数名の営業社員の中で、ある支店の支店長を任せている彼(G支店長とします)は、従業員平均13%〜14%の中で、17%〜18%という非常に高い利益率を継続して生み出しており、しかも売上も順調に伸ばしています。まさに理想的な営業マンでした。

 当然に彼を意見を重用していましたが、当然重用すると悪口を言う人も出てくるので、その多くは聞き流していました。

システム刷新でいろいろと分かってくる

 そこでシステム刷新になったのです。それまでわかりにくかった部分を整理して帳票として自由に出せるようになったので、本格的な部分まで踏み込んでいくことになりました。
(本当は刷新時にトラブル続出だったので、数カ月はかなり苦労しました)

・個別商品の日別の利益率
・メーカ別の利益率
等を調べている中で、バックリベートを引いた個人別利益率を出しました。

 そして判明したのは、G支店長の利益率の低さです。先にお話しした15%リベートのチェーンストア担当であることが、全体数値を押し上げているように見えただけで、実態はリベート分を引けば赤字納品もバリバリのひどい状態でした。

 実体の利益を元に判断し、その数値を活かして営業を行って欲しいことから、その後は、リベートを引いた帳票を、営業管理に使うようになりました。私の営業管理だけではなく、支店実績や個別実績で全員に公表する数値にも、それを使うようにしました。

そしてそれが結果的に次のトラブルを起こす原因になるのです。


倒産社長が伝えたい経営の教訓


数字で考えるべきだが、数字が真実を示しているわけではない

 正しい数値できちんと判断できる状態にすることは必要です。現在はデータ解析のツールが豊富に揃っているので、判断しやすい状態にはなるでしょう。
 数値は真実を示していますが、そのデータは、目標に沿った数値を示しているとは限りません。一定の指標だけで動き続けていると、それを達成するために、努力する人もいれば、目の前の数値を作れるように賢く調整する人もいるのです。

そして、加工したデータを元に指示すると、現場は動かなくなります。それについては別でお話しましょう。

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シリーズ1回目はこちらからです。

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