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敗者だから伝えたい こうして会社は倒産しました ①

〜社内の資金を残すべき〜

鹿児島で社労士をしております原田です。
この話は現在の業務で、事業承継・就業規則・助成金を注力している理由にも最終的には関係あります。

私は39歳まで3代目として年商30億の会社の社長をしておりました。
その会社は倒産しました。その時のお話です。

会社の概要

私が社長に就任した時の概要です(年商と人数は概算です)
A:食品製造業 年商10億円 従業員40名(社員10名)
B:食品卸売業 年商30億円 従業員70名(社員15名)
C:食品製造・小売業・飲食店業 年商1億円 従業員20名(社員5名)
の3社がありました。

A社は平たく言うと「さつま揚げ屋さん」です。
B社はスーパーや小売店を対象にした冷蔵商品専門の卸売業です。業界では日配やチルドと言います。
C社のメインは「豆腐屋さん」です。敷地内にコンビニと定食屋がありました。
会社名は検索すればすぐバレます。最終的には3社とも倒産します。

会社の成り立ち

明確な記録が無いので、伝聞の内容が含まれています。
1962年 A社を個人事業で創業 創業時の社長はX氏(私の叔父)
1971年 A社を法人化
1977年 A社の販売部門を切り離して、卸売業としてB社を設立
1987年 コンビニエンスストアとレストランの運営としてC社を設立
1989年 X氏逝去のため、Y氏(私の父)に代表者変更
1991年 C社敷地内にA社で製造していた豆腐工場を設立
1997年 私の帰郷にて専務取締役に就任
2001年 Y氏逝去のため、私が代表取締役に就任
2006年 豆腐製造部門を閉鎖、コンビニエンス部門を譲渡
2007年 A社、B社 倒産

X氏が老舗のさつま揚げやさんで修業を積み、晴れて独立開業。
当初は家族経営で、叔父であるX、その母(私の祖母)、Xの兄弟姉妹で創業し、Xの弟であるY氏(私の父)は当時会計事務所勤務だったが、A社の成長に従って、会計事務所を辞めてA社に入社する。

X氏が社長で職人、Y氏が専務で営業と経理という兄弟両輪で回す会社となりました。

急成長する企業

 時代背景は小規模小売店中心の時代から、スーパーマーケット全盛時代に突入した時代で、A社はスーパーに卸売りをすることで、後発メーカとしての知名度をカバーし、売上を積み上げていきます。

 卸売業をする中で、県外のA社の同業者の商品を取り扱うことを始め、当初は「メーカ営業が他社の同業者の商品を売っている」と揶揄されたらしいですが、競合を取り扱うことで、自社商品の価格戦略や商品規格をより有利にし、同時に県内同業者の参入を抑止する事で、店舗当たりの販売を増やす方針でした。

 お客様のバイヤーと当社の営業が接する機会も、同業者より数倍多くなる事も相まって、この方針は大当たりし、仕入れ商品やメーカー数も年々拡大。卸売部門が売上構成比が高くなったため、卸売部門はB社として分社化。その後スーパー向け冷蔵商品の卸売業として県内シェアトップとなりました。

 A社の業績もそれに併せて急上昇し、並み居る老舗を追い抜き、売上も県内3位まで浮上しました。正に順風万般な時代に乗って成長してきた企業で、主たる顧客のスーパーマーケットの成長が著しかったこともあり、その衰えを感じる隙さえ無いように感じたのです。

税金対策と資金繰り

 Y氏は元会計事務所職員だったこともあり、節税手法に長けており節税のために様々な手法を行っていました。その最たるものが、経常利益を出さないようにするものです。

 つまり成長して利益が出るなら、設備投資・広告・新商品開発・接待交際に積極的に支出することで、極限まで利益を出さないようにすることです。

 その結果、経常利益は非常に少ないままで、着実な成長をしながら、所得税は最小限に留めるという手法で、当時は多くの企業もやっていた手法だと言われています。

 しかし、この手法には最大の欠点があります。支出を最大限に行っているので、会社内に現金が残らないのです。
 そのため資金繰りが悪い状態が平常化していたのですが、当時の銀行は「貸し渋り」も「キャッシュフロー経営」も世の中で一切話題にすらならない時代だったので、赤字を出していない企業に対する融資は、非常に緩いものでした。

 それによって負債も増えていくのですが、売上が毎年成長しており、新社屋や物流センター等の投資も増加する中で、遠くない未来にそれが大きなダメージとして襲い掛かってくることを予期できる人は会社内に誰もいませんでした。

倒産社長が伝えたい経営の教訓

 「所得税を払わないと、現金は残らない」

多少の工夫なら合法的にできますが、最終的に税金の残り分しか資金は残りません。個人的に長期的な企業経営は資金力が最も重要だと考えています。

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