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スタートアップがインキュベーションオフィスを選ぶ7の魅力

スタートアップの「オフィス」の選択肢に、ここ数年創業期やシードステージのスタートアップを対象としたインキュベーションオフィスやシェアオフィスが当たり前に名前を並べるようになりました。2020年秋にオープンした「SPROUND」も開所から3年超という月日を重ね、総利用者数300名以上・累計38社、そしてシード期を抜けファイナンス・組織拡大を経て「卒業」をした企業も17社となりましたが、卒業の際にも引き続き自社オフィスではなく同様のシェアオフィスを志向する企業が多いように感じられます。

スタートアップにとって、インキュベーションオフィスは何が良いのか。実際オフィス利用企業はどのように活用し、どのような体験が生まれ、どのように評価されているのか。DNX Venturesと日鉄興和不動産が共同で提供している、品川のインキュベーションオフィス・コミュニティ「SPROUND」の3年強を振り返り、そこで生まれたものをご紹介します。


登場人物

スタートアップにとっての価値ある助け合いのコミュニティがある

1.切磋琢磨できる同志と過ごす

一番の魅力は、スタートアップ同士で切磋琢磨できる環境があることではないかと思います。SPROUNDの場合、審査制を取り入れ、共通のビジネステーマ(B2B)+同じ志(調達してエグジットを目指す企業)を持つ人々が集まることによって、「切磋琢磨できる環境」を築くことができました。

実際、利用企業の多くが、他社がすぐ横で頑張っている様子に良い刺激を受けていると語っています。

シード・アーリースタートアップ向けのインキュベーションオフィスというコンセプトのオフィスなので、ステージも社員数も同じくらいの会社がたくさん同じ空間にいることも、環境としてとてもいいです。健全に競い合って一緒に頑張れる仲間が近くにいて、いい刺激になります。
DIGGLE株式会社 CEO 山本清貴さん

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社員だけじゃなく、SPROUNDにいる他の会社の方もみんな仲間という感じでたくさんの方と関わりながら働けたのがすごく楽しくて、良かったです。
SPROUNDを利用する他社のコーポレート部門の方を、私の同じ部門の仲間のように思っていましたね。
株式会社ナレッジワーク コーポレート 中山絵理さん

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こうした切磋琢磨が健全に機能するのは、そもそも同じように志が高く、ひたむきに頑張って挑戦し、努力を惜しまない人たちばかりが集まっているという環境があってのこと。自分が成功すればいいというのではなく、「みんなが成功できたら」という、そんな空気が生まれています。せっかく利用者同士に共通点を持たせられることができるのであれば、オフィスに「コミュニティ」の要素を持たせることは有効だと感じています。

2.孤独が和らぐ、経営者仲間との出会い

また、些細なことにも思えますが、創業まもなくまだ仲間がいない・少ない企業も多い中で、朝挨拶ができる人がいることや、駄々話ができる顔見知りができることを、喜んでいる起業家も多くいます。

利用者の皆様からも、SPROUNDコミュニティが生み出す安心感がちょっとしたご支援になっているとご評価いただいています。

スタートアップにとってコミュニティは、非常に助けになるものだと思います。特に「心理的安全性」が大きいと思います。どうしても創業間もないスタートアップは規模も小さく、孤独な部分があると思います。僕自身、創業当初にカフェで一人毎日事業と向き合っていた時は、人と話す機会がほとんどなく、「おはよう」を言う相手がいなかったのは結構寂しかったですね。だからこそ、コミュニティの中で交わす何気ない会話が嬉しかったりしますね。
株式会社wellday CEO 牟田吉昌さん

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1人のときも、シェアオフィスだからこそ同世代の人たちと話ができたり、カウンターで挨拶できたりするので、全く会話をしない日がない。喋れる人がいるだけでも価値がありますね。
株式会社ヤモリ 営業統括 後藤孝太郎さん

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孤独を和らげるだけでなく、自らのエネルギーに変えたり、経営者仲間を見つける場にできたという経営者も。卒業後にも経営のさまざまなトピックについて「御社どうやってますか?」と気軽に相談し合えるいい関係性が続いていると聞きます。経営者仲間に出会えることも大きな魅力となっているようです。

ライバルが目の前でめちゃめちゃ頑張っている。そういう戦友の姿は、心のエネルギーにもなっているなと感じました。
株式会社Hubble CEO 早川晋平さん

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いろいろなことを話せる仲間がいたのは本当に助けられました。いろいろな人と知り合って話して、卒業した後こそ連絡ができる関係を作れることがいいところではないかと思う。
株式会社Beatrust 共同創業者 久米雅人さん

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不確実な成長速度・組織拡大に対応するフレキシビリティ

3.変動コスト・ハイブリッドな働き方、人数変動に対応

オフィスを賃貸する場合、初期コストや内装工事、現状復帰に多額の費用がかかります。さらに、固定費であるため先々1~2年見据えて広めのオフィスを借りなくてはならなかったり、離職があってもコストは下がらなかったりと、オフィスを賃貸するのはBurnコントロールに不利です。特にコロナ禍以降、働き方が多様化し、オフィスの必要性も問い直されています。

1ヶ月単位での契約なので、困ったらとりあえず一回解約することもできるので、そこはすごく魅力的です。
不測の事態にも対応できる。SPROUNDがあるからオンライン前提のメンバーも日によってオフラインで集めることもできる。さらにランニングコストも安く、大きなメリットですね。
株式会社Hubble CEO 早川晋平さん

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大企業もスタートアップ企業も外部環境が不透明な中でどれくらい自分たちの事業が成長し、どれぐらい人員が増減するのか把握できません。その状態でのオフィスに対する投資にはかなり躊躇します。サブスクモデルを活用しながら柔軟に内装を変更させられる点は、企業成長に応じたレイアウト変更にも対応できるとともに、自分の企業価値を感じれられる事にもつながり、より良いオフィスを提供できる
株式会社ヤモリ 代表取締役 藤澤正太郎さん

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事業計画はあっても、実際の成長速度には高い不確実性が伴います。だからこそ、入居当初は1人だったチームが、4人個室、8人個室、10人個室と拡張を続け、最終的には個室から染み出してオープンエリアを併用する様子が見られます。このようなフレキシブルな人数増に対応する設計は、スタートアップ企業から好評を博しているポイントです。卒業後に引き続きシェアオフィスを利用している企業が多いのも、このポイントが大きく影響しています。

4.コーポレート(セキュリティ・オフィス移転)の負担軽減

オフィスには様々な機能が求められます。これを自前で用意しなくていいのもまた、リソースが少ないスタートアップにおいては非常に魅力的な点です。非常に当たり前ですが、案外喜ばれているのが以下になります。

  • オフィスやトイレの清掃

  • Wi-Fiの整備や管理

  • 受付機能(来客や飛び込み営業などの対応含む)

  • セキュリティ対策

    • 施設セキュリティ

    • 情報管理・認証取得(ISMSほか)

  • 登記手続き

  • 郵便・配送物の受け取り

  • 飲み物やコーヒーの提供

5.開放感がある快適なオフィスは、採用にもプラス

オフィスは、1日の大半の時間を過ごす場所。経営者からすると、従業員の皆さんが快適に仕事をできる環境を提供できることも、採用における候補者への魅力付けや従業員満足度向上の観点からも大切なポイントとなります。また、オフィスコストを抑えようとすると窓がなくて光が入らなかったり築年数が古いなど、条件が悪くなることもしばしば。シェアオフィスの良さは、複数社でシェアするからこそ、好立地・良環境を享受できることではないでしょうか。大企業からの転職者も、働く環境グレードを下げずに続けられると転職を前向きに考えてくれるかもしれません。

想像以上に良かったところが「景色」。めちゃくちゃ綺麗で。こんな見晴らしが良くて東京タワーもレインボーブリッジも見れてというオフィスはなかなかありません。
株式会社ナレッジワーク 代表取締役 麻野耕司さん

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スタートアップの学びを得る

6.先々を見据えた学びを得られるコンテンツ

スタートアップは全社が順調に成長していけるわけではありません。日本だけでなく、世界的にもシードからシリーズA、そしてシリーズAからシリーズBへ進む段階で多くの試練が待ち受けています。特にシードからシリーズAへの段階での脱落は非常に多いと言われています。インキュベーションオフィスを謳う施設では、そうした試練を乗り越え「成長」するための支援として、さまざまな勉強会やプロフェッショナルへの相談ができる環境が整っており、スタートアップがインキュベーションオフィスを選ぶ大きな理由の一つとなっています。

この点については、どこまで施設側がコンテンツを準備するのか、どこまで経営に近いテーマを取り扱うのか、交流要素の強いイベント企画が多いのか、はたまたVCがどこまで深く関わっているかなど、各施設それぞれに内容や趣向の異なるポイントと見受けられます。以下、これまで3年間SPROUNDでどのような「学び」を提供し、スタートアップに喜ばれたのはどういったものか、ご紹介します。

①勉強会
SPROUNDでは、SPROUND Workshopと名付けたシード期の悩みに合わせた勉強会やシリーズAの資金調達ストーリー(対談イベント)を開催しているほか、DNX主催によるSansanやアンドパッドなどが参加するSaaS部なども開催され、シード期から非常にハイレベルな学びを提供しています。

さらに、スタートアップの支援に特化した専門家からの支援も受けられます。

②オフレコトーク
ここでしか聞けないオフレコセッションがもう1つの人気コンテンツです。日常で築いた信頼関係の中で行われるこのセッションでは、DNXが先輩経営者を招いて、実際の経営における困難なエピソード"Hard Things Story"を語っていただきます。成功談は多く聞くことができますが、失敗談やリアルな側面を聞けるのは非常に貴重であり、参加者から喜ばれています。さらに、他社からのナレッジシェアは自社の成長に不可欠であり、参加者を奮起させるものとなっています。

UPWARD株式会社 CEO金木さんとDNX倉林さんの対談セッション

③1人目職種を支える座談会
シードからシリーズAは、セールスやマーケ、広報や人事など初の専任担当者が入社する時期です。一方で各社現場担当者のレベルアップを図る機会、実務レベルで相談できる機会は足りていません。そこで、SPROUNDではテーマや職種ごとに少人数で集まって情報交換を行う座談会が行われています。これらの座談会では、参加者同士が双方向で知識を交換し、相互に学び合う機会が提供されています。

7.VCに気軽に相談

SPROUNDには、DNX Venturesもオフィスを構えています。ベンチャーキャピタルが同居し、日頃からコミュニケーションできる環境、投資家との距離感については、過去の利用者インタビューでもSPROUNDの魅力として多くコメントをいただいています。投資家と同じ空間で仕事をすることで距離感が近くなり、気軽に相談できる関係性が築かれます。

DNXの投資家ともミーティングしたい時にここですぐにできるのも魅力です。SPROUNDの隣に、DNXのオフィスが同居しているのは、最高ですよね。
株式会社エアドア CEO 鬼頭史到さん

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隣にDNXのオフィスがあるのもSPROUNDの良さです。
SPROUNDにいると、投資家がどういう人なのか、どういうマインドセットでバックアップしてくれているのかを、すぐそこで直接話をして知ることができる。
株式会社ROMS 代表取締役 前野洋介さん

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DNXさんのオフィスが隣接しているので、担当の投資家の方をいきなり呼び出して相談できたり、重要な採用面談にも同席してもらうなどの連携もできて、大変助かっています。
株式会社Resilire 津田 裕大さん

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最後に

いかがだったでしょうか?今回は、SPROUNDを3年強運営してきて蓄積されてきた「知」を共有させていただきました。インキュベーションオフィスの魅力が、少しでも記事を読んでくださった皆様に伝わっていれば幸いです。

少なくともSPROUNDのコミュニティは、横で繋がり仲良くなろうという「コミュニティ」という言葉から想像する和気藹々とした仲良し集団とは少し違っています。各社のカルチャーが併存し、SPROUNDERである前に各社のメンバーであるという強いアイデンティティが存在する。そして本業が優先なので必要以上の時間拘束やイベント、干渉はしない。あくまでも、各社の事業や組織が最優先というスタンスがあるコミュニティです。ところが、それだけ各々に独立していても、同じくらい尖った挑戦と高い志、SPROUNDの場合はB2Bソリューションかつシード・アーリー期であるという共通点によって、困った時に相談をしたり、お互いから随所に学びとる。その適度な距離感が、「オフィス以上」の価値をもたらし、スタートアップに喜ばれているのではないかと思います。

また、SPROUNDではこのコミュニティにジョインしてくださるB2Bシードスタートアップも随時募集しています。DNXの投資先でなくてもWelcomeです。審査制にはなりますが、ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

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(制作:上野なつみ(DNX Ventures) / 丸山裕子(SPROUND Community Manager) / 國分輝歩(SPROUND Community Manager))

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