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【ゲームブック小説】眼球の点滅

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ゲームブック的な小説です。主人公の山崎茜はふたりの男性から告白され、どちらかを選ばなければいけません。どちらを選ぶか、それで物語が分岐します。
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【ゲームブック小説】眼球の点滅①

  予言

 ――退屈すぎて死にそうですというような顔をよく見かける。そういう死にかけている人たちのために、僕は、ちょっとした救いのゲームをつくった。このゲームを始める前に、ひとつだけ、予言しておきたいことがある。それは、このゲームでの読者の勝率は20%以下になるだろうということだ。ゲームの結果は全部で四つあるから、単純な推計では25%になるはずだけど、そうはならないだろうというのが僕のずいぶん大

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【ゲームブック小説】眼球の点滅②-A

あなたは佐々木ミツルを選択しました。

   二のA

 ついに決断した茜は、その翌朝、美術館に出勤してからすぐに佐々木ミツルのもとへ向かった。昨日と同じように館内の奥の通路――そこにある地下室へとつながる扉の前に行き、インターホンのボタンを押しこむ。佐々木ミツルはアトリエで生活を送っているので、大概の場合、アトリエに行けば会えるのだった。
『あ、山崎さん、おはよう』と返事があった。間もなくして扉

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【ゲームブック小説】眼球の点滅②-B

 あなたは神崎明人を選択しました。

   二のB

 茜はついに決断した。木々の影がだんだんと濃くなっていくこの時間帯に、むしろ、長い夜を越えたような明るい気持ちだった。フロントガラス越しに見つめていると、山道のむこうにある木々の陰を狐が素早く駆けていくのが見えた。
 もう、悩みはない。
 一度、決断すれば、その選択しかなかったように感じる。
 がたがたと揺れる車の中で、ラジオが悲惨なニュースを

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【ゲームブック小説】眼球の点滅③-A

 あなたは佐々木ミツルを選択しました。

   三のA

 茜はついに決断し、研究室を出た。向かった先は、神崎明人が待つホールではなく、美術館の奥だった。その奥にある地下室のアトリエでは、佐々木ミツルが待っている。
 腕時計を確認すると、もはや、十時三十分になろうかというときだった。茜は足早に進んでいって、アトリエへとつながる白く重厚な扉の前で足を止めた。
 不意に、既視感が押し寄せてきた。今朝も

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【ゲームブック小説】眼球の点滅③-B

 あなたは神崎明人を選択しました。

   三のB

 茜は決断した。スマホをポッケに仕舞い、研究室を出る。そのときには、すでに佐々木ミツルが提示した制限時間を超過していた。向かった先は佐々木ミツルのアトリエではなく、神崎明人が待つホールだった。
 廊下を進んでホールに出ると、円を描くように並べられたそれぞれのテーブルの横に、金沢たちが佇んでいた。会話が弾んでいるわけでもなく、空気は淀んでいる。四

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【ゲームブック小説】眼球の点滅③-C

 あなたは神崎明人を選択しました。

   三のC

 茜は涙を拭い、ついに決断した。すぐ傍にあったコンビニの駐車場に車を停めると、スマホを手に取り、佐々木ミツルにメッセージを送信する。
『ごめんなさい。私たちの関係はまだ終わっていません』
 茜は、車を出すと、やってきた方向へと戻っていった。向かう先は、いまさっきまで神崎明人と一緒にいたカフェだ。
 頭の中に騒がしく浮かんでくるのは、神崎明人の声

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【ゲームブック小説】眼球の点滅③-D

 あなたは佐々木ミツルを選択しました。

   三のD

 神崎明人と喧嘩別れしたあの日から、すでに一年の時が流れた。あの日、もしも神崎明人のもとに戻っていたのならば、どんな運命が待ち受けていたのだろう、と考えると、ぞっとするでは言い足りない。
 茜は、小さな法廷の傍聴席に座っていた。隣には、天才芸術家である佐々木ミツルが座っている。いつものようにサングラスを装着している。
「怖くなったら、いつで

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