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すれ違い【リコ】

見える人、見えない人。
※よくできたホラーです。
劇場版→→→https://www.youtube.com/watch?v=4InC1evVQx0

甚兵衛を着こなした男が小綺麗な縁側で一人
退屈そうに座っていた。
彼の名はたいちゃん。小顔のサッパリとした青年だ。

バハマ  「たぁーだいまぁ」

そこへスーツを着た男が軽快にやってきた。
彼の名はバハマ。大柄で天然パーマの男だ。

二人はルームメイトでずいぶん長い間生活を共にしている。
この家のルームメイトは3人で、もう一人はハルという小柄の女性だ。


たいちゃん「あら!はじめましてぇ〜」
バハマ  「はじめましてぇ〜、バハマです〜」
たいちゃん「たいちゃんです〜よろしくです〜」
バハマ  「よろしくです〜」
たいちゃん「知っとるわい!」
バハマ  「クソ面白くなくて鳥肌立ったわ」

毎日くだらない冗談を話しているが、今日は一段とつまらない。

          いつも通りの縁側である。

            ~すれ違い~


たいちゃんとバハマは縁側に座ってだべっていた。


たいちゃん「あれぇ?なんか可愛くない?」
バハマ  「そうでしょ?!前髪降ろすと意外とかわいいの俺。...あ!」


その時、バハマが何かに気づいたように眉をひそめ、ポケットの中を探り始めた。


バハマ  「スマホ忘れた!落とした?!」
たいちゃん「どこに?」
バハマ  「あ!駅前の女子トイレか!」
たいちゃん「女子トイレ?!」
バハマ  「男子トイレが空いてなくて.......」

苦い顔をするバハマ。


バハマ  「...我慢できなかったんです」
たいちゃん「我慢しろよ」
バハマ  「無理だわ!外でしちゃうわ!」
たいちゃん「外でしてもいいけど写真撮っていい?」
バハマ  「はぁ〜?!?!」
たいちゃん「ごめんなさい...」

バハマは困惑していた。まさかたいちゃんにうんこしてるときの写真がほしいなんて言われるとは。そういう趣味があるのか?男子トイレが空いてなくてしかたなく女子トイレで用を済ませた話から、そんな秘密を聞くことになるなんて。いや、まだこれは自分の想像の話だ。ちゃんと確かめねば。


バハマ  「...そういう趣味があんのか?」
たいちゃん「そういうことだ」
バハマ  「えぇえ!!!!!」
たいちゃん「なんだよ!?」
バハマ  「...そうなのか?」
たいちゃん「そうだって言ってるだろ?」

想像が確信に変わった。簡単なことでは引かないバハマだが、今回ばかりは引いてしまった。しかしたいちゃんは親友だ。もしかしたら、たいちゃんもそういう趣味があることを伝えるため、勇気をもって打ち明けてくれたのかもしれない。いや、それは考えすぎか?いや、でも、、、。


バハマは静かに、縁側を後にした。
縁側に一人残されたたいちゃん。

たいちゃん「あいつどこいったんだ?」

沈黙。

たいちゃん「ふ~ん。あのさ、あいつバカだけどいいやつだからさ
      これからもよろしく頼むよ。」

沈黙。

たいちゃん「何が?」

沈黙。

たいちゃん「なんで?」

立ち上がるたいちゃん。
そのとき3人目のルームメイトであるハルが、お茶もって縁側に近寄ってきた。たいちゃんは気づいていないようだ。

たいちゃん「ダメダメダメダメ!あいつに頼めよ!」

ハルはたいちゃんが話しかけている方向を見て、何か考えている様子だ。

たいちゃん「...少しだけなら」

たいちゃんが何もない縁側の真ん中で、【何もない】にハグをした。

たいちゃん「...俺に惚れてんのか?」

ふと横を見るたいちゃん。ハルの存在に気が付いた。
ハルは【何もない】を睨み付けて、颯爽と縁側を後にした。

たいちゃん「あ!ハル!まってくれ!バハマには言わないでくれ!」

ハルを追おうとするが、突然、何もない縁側へ振り返るたいちゃん。

たいちゃん「ちょっと!まってくれ!」

誰もいない縁側に発した声が虚しく響く。
たいちゃんは今度はハルではなく、何かを追おうとした。

たいちゃんが縁側をでようした時、ちょうど縁側に来たバハマと衝突した。

たいちゃん「バハマ!!!ごめん!!!おれ!」
バハマ  「たいちゃん!!お前がそんなでも!別に普通に友達だから!
      何も変わんねぇから!!」

バハマが一枚の写真をたいちゃんに渡し、
恥ずかしそうに縁側を去っていった。

写真をみて眉をひそめるたいちゃん。

その時、ハルと神主が縁側へやってきた。
ハルが神主を呼びに行ってたのだろう。

ハル   「あれ??」
神主   「...誰を探してますか?」
ハル   「...何でもないです...」


           【5分前】


甚兵衛を着こなした男が小綺麗な縁側で一人
退屈そうに座っていた。
彼の名はたいちゃん。小顔のサッパリとした青年だ。

バハマ  「たぁーだいまぁ」
謎の女  「ただいま~」

そこへスーツを着た男と、女性が軽快にやってきた。
彼の名はバハマ。大柄で天然パーマの男だ。
なんとめずらしい、今日は背の高い美人を連れていた。

バハマとたいちゃんはルームメイトでずいぶん長い間生活を共にしている。
この家のルームメイトは3人で、もう一人はハルという小柄の女性だ。


たいちゃん「あら!はじめましてぇ〜」
謎の女  「はじめまして、リコです」

この綺麗な女性はリコというらしい、名前も可愛らしい。


バハマ  「はじめましてぇ〜、バハマです〜」
たいちゃん「たいちゃんです〜よろしくです〜」
バハマ  「よろしくです〜」
リコ   「よろしくです~」

たいちゃんはバハマを軽く睨み付けた。

たいちゃん「知っとるわい!」
バハマ  「クソ面白くなくて鳥肌立ったわ」

         

            ~リコ~



たいちゃんとバハマとリコが3人で縁側に座ってだべっていた。


たいちゃん「あれぇ?なんか可愛くない?」
リコ   「ありがと」
バハマ  「そうでしょ?!前髪降ろすと意外とかわいいの俺。...あ!」
リコ   「お前じゃねぇよ」


その時、バハマが何かに気づいたように眉をひそめ、ポケットの中を探り始めた。


バハマ  「スマホ忘れた!落とした?!」
たいちゃん「どこに?」
リコ   「あ、女子トイレのの横の棚に置いてなかった?ズボン脱ぐ前」
バハマ  「あ!駅前の女子トイレか!」
たいちゃん「女子トイレ?!」
バハマ  「男子トイレが空いてなくて.......」

苦い顔をするバハマ。

リコ   「仕方なく女子トイレよ。私にとっては、普段いかない男子トイ
      レのほうが刺激的なのにぃ」

とてもエッチである。

バハマ  「...我慢できなかったんです」
たいちゃん「我慢しろよ」

たいちゃんはそんなシチュエーションに少々ジェラシーを感じた。

バハマ  「無理だわ!外でしちゃうわ!」

外?!たいちゃんはなんだか高揚した。

たいちゃん「外でしてもいいけど写真撮っていい?」
バハマ  「はぁ〜?!?!」
たいちゃん「ごめんなさい...」

バハマは別にいいけど、リコちゃんに嫌われたかな?それはやだなぁ
と思いつつ、まだ変な想像を膨らませるたいちゃんであった。

バハマ  「...そういう趣味があんのか?」
リコ   「趣味じゃないでしょ、好奇心ってやつよ。普通に冗談だよ」
たいちゃん「そういうことだ」
バハマ  「えぇえ!!!!!」
たいちゃん「なんだよ!?」
バハマ  「...そうなのか?」
たいちゃん「そうだって言ってるだろ?」

静かに縁側を後にするバハマ。
たいちゃんは険しい顔をしていたバハマに、何か変なこと言ったかな?
まぁ、言ったか。などなど。いつもの調子じゃないバハマを不思議がっていた。


縁側に取り残されたたいちゃんとリコ。

たいちゃん「あいつどこいったんだ?」

リコ   「家の中にいるでしょ。私もいるし」

たいちゃん「ふ~ん。あのさ、あいつバカだけどいいやつだからさ
      これからもよろしく頼むよ。」

たいちゃんは自分の言ったことに少し恥ずかしさを覚えた。
なんで俺がこんなことを言うんだ?と。
しかし、バハマは親友である。
思いもよらず本音を話してしまうのって、こんな感じなのかなぁ。と
一人納得したたいちゃんであった。


リコ   「...なんだか、バカらしくなっちゃった...」

たいちゃん「何が?」

リコ   「彼は私より、あなたといる方がいいわ、きっと...」

眉をひそめるたいちゃん。リコの話していることが全く分からなかった。

リコ   「立って」

たいちゃん「なんで?」

立ち上がるたいちゃん。
そのとき3人目のルームメイトであるハルが、お茶もって縁側に近寄ってきた。たいちゃんは気づいていないようだ。

リコ   「ハグしてくれない?」

たいちゃん「ダメダメダメダメ!あいつに頼めよ!」

ハルはリコを見て、何か考えている様子だ。

リコ   「彼にはできないの。お願い。少しだけ」

たいちゃん「...少しだけなら」

たいちゃんが縁側の真ん中で、リコにハグをした。

たいちゃん「...俺に惚れてんのか?」

ふと横を見るたいちゃん。ハルの存在に気が付いた。
ハルはリコを睨み付けて、颯爽と縁側を後にした。

たいちゃん「あ!ハル!まってくれ!バハマには言わないでくれ!」

ハルを追おうとするたいちゃん。

リコ   「ありがとう。バイバイ」

縁側を後にするリコ。

たいちゃん「ちょっと!まってくれ!」

たいちゃんは身をひるがえし、今度はリコを追おうとした。

たいちゃんが縁側をでようした時、ちょうど縁側に来たバハマと衝突した。

たいちゃん「バハマ!!!ごめん!!!おれ!」
バハマ  「たいちゃん!!お前がそんなでも!別に普通に友達だから!
      何も変わんねぇから!!」

バハマが一枚の写真をたいちゃんに渡し、
恥ずかしそうに縁側を去っていった。

写真をみて眉をひそめるたいちゃん。

その時、ハルと神主が縁側へやってきた。
ハルが神主を呼びに行ってたのだろう。

ハル   「あれ??」
神主   「...誰を探してますか?」
ハル   「...何でもないです...」

神主はリコと対峙していないが、間違いなく、リコが出て行った方向を睨み
真剣な顔をしていた。


              【次の日】


朝。
縁側で一人ラジオ体操してるバハマ。
そこへたいちゃんが煙草をもってやってきた。

たいちゃん「おはよう!元気そうだな笑」
バハマ  「おう!なんか体がすげぇ軽いんだ!今日は大丈夫そうだなぁ」
たいちゃん「今日は大丈夫そう?」

たいちゃんは言葉の意味が分からなかった。


バハマ  「いや実はな、ここんとこずっと不運だったのよ、トラックに轢
      かれそうになったり、電車のホームに吸い込まれそうになった
      り、うんこ漏らしそうになったりよ!」
たいちゃん「最後軽いな笑」
バハマ  「それな笑」

たいちゃんは昨日のことをまだ気にしていた。リコちゃんほどの美人とハグしたのだ。しかもおふざけではない、真剣な空気が流れていた。
きっとリコとバハマは付き合っているんだろう。しかし、もし、バハマよりも自分のことが好きなのだとしたら。そんなことを考えているうちに、
リコへの気持ちが大きく膨れていくたいちゃん。


たいちゃん「...俺さぁ」
バハマ  「おう」
たいちゃん「...リコちゃんの事がさぁ...」
バハマ  「ん?なんだって?」

たいちゃんは一瞬言葉に詰まった。確かに、この気持ちは間違いなく恋だ。
しかしリコには彼氏がいる。その彼はバハマだ。親友のバハマだ。
諦めたくはない。諦めたくはないが、、、、


たいちゃん「...いや、なんでもない」
バハマ  「なんだよ!どーした?」
たいちゃん「いや、なんでもないんだ。
      うまくやれよ!」
バハマ  「おうよ!今日も頑張るぜ!」

どーせこいつは俺の苦悩もなにもわかってねぇんだろうな。
と、たいちゃんは思いながら煙草を蒸かし、涼しげな顔をしていた。


バハマ  「あ!昨日の写真」
たいちゃん「見てない!!!!!!!」

バハマはそのまま出社していった。
昨日の写真には、トイレで必死に踏ん張ってうんこをしているバハマ。
かなり急いでいたのか、ドアが開きっぱなしのトイレ。
その鏡には、まさに縁側を後にした瞬間のリコが写っていたが、
その体は薄く、眩く、消えかかっているようにみえた。

END
劇場版→→→https://www.youtube.com/watch?v=4InC1evVQx0

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