男の一人旅 島根・松江🇯🇵編
このシリーズもニューヨーク、ハノイ、チェンマイ、バンコクとここまで訪れてきたが、次は趣向を変えての舞台は日本である。
そして、今回の目的地は島根県の松江と出雲である。
なぜ、島根県なのか。それは、タイ訪問中にふと思いついたことに遡る。
タイでは色々なマーケットを見て回ったが、何か心から惹かれるようなアイテムを見つけることができなかったという事実がある。これは、おそらく僕とタイの製品間の距離が遠い(接点が薄い)ということに起因しているのではないかと思った。
洋服を例に取ってみると、ただ眺めているだけでは本当に自分が欲しいのか分からないことがある。しかし、実際に手で触れて素材を確かめたり、鏡の前でサイズや雰囲気を感じ取ると、不思議と「欲しいかもしれない」という気持ちが湧き上がってくる。
話を再びタイの製品へ戻すと、僕とタイの製品の距離は、洋服のそれよりもはるかに遠い。それは接点が全くないに等しいと言い換えることができる。
つまりは、接点を作りさえすれば、興味を持てるのではないかと考えていた。
以前、知人から「チェンマイ」という輸入雑貨店が松江にあることを聞いていた。正直、僕はタイに行く前は距離的にもあまり行く気になれなかったのだが、タイへ旅して以来、タイという国への興味が芽生え、「そうだ、チェンマイからチェンマイへ!」と思いついてしまったのである。
そういうわけで、松江行きを決意したのだが、せっかく島根県に行くならということで、出雲にも足を運ぶことにした。
今回の旅は1泊2日の小旅行ではあるが、記録としてまとめたい。
移動:JR バス(グラン昼特急出雲1号)
なるべく節約しつつ、日本国内を移動するにはバスがいい。
学生時代はアイドルを追っかけて、全国各地に飛び回っていたので、昼行夜行バスに乗るのは大の得意である。
今回は JR バスを利用したのだが、嬉しいことに3列座席だった。3列だと一般的に価格が高くなるのだが、平日の昼間ということもあってか大阪〜松江間が4500円だった。
距離にして283kmあるが、途中休憩を2〜3回挟むので、約5時間くらいの旅となる。
座席は空席が目立ち、半分くらいしか埋まっていないようだった。
バスに乗っていると、些細だが嬉しいことに気づいた。それは、窓がとても清潔だったことだ。そのおかげで、綺麗な淀川の景色が見れた。
この手のバスは、窓が汚いことが多いのだが、清掃してくれた運転手さんには感謝である。ありがとう。
旅のお供:「あいだ」の思想 セパレーションからリレーションへ/高橋源一郎+辻信一
今回の旅のお供は、「あいだ」の思想 セパレーションからリレーションという本である。
この本は、弱さの思想、「雑」の思想に続く三作目となっており、高橋源一郎さんと辻信一さんが他者の引用を交えながら対談形式でそのテーマについて語り合い、それを文書化したものである。
詳細は差し控えるが、「弱さ」「雑」「あいだ」という着眼点にまず驚くが、彼らの対話を通して、読者がそれらの観念や認識を深く掘り下げることができる本となっているように思う。個人的にもおすすめだ。
松江駅
松江駅に到着すると、「ここに来たことあるな。」と思うと同時に、沈んでいた記憶が表層に浮かび上がってくる。
そういえば、僕は大学院生の時に日本農薬学会に参加するため、島根県立大学に来たことがあった。
調べたところ、2016年3月19日(土)に発表している。
つまり、8年ぶりの訪問のようだった。
当時の記憶を思い出すと、松江駅前からバスに乗って島根県立大学に向かったこと、先生とその知人を交えて4人で会食をしたことなど断片的に覚えている。
「松江駅」という今もそこにある場所を起点に、色々と関連づけられた記憶を思い出す。これは地味に凄いことではないだろうか。
僕は、人生を豊かにするのは過去の記憶の積算であると仮説している。過去は現在から過ぎ去っていくが、その時間は積み上がっていく。なんとなくではあるが、ただ積み上げればいいのではなく、良いことも悪いこともどちらもある振れ幅が大切な気がしている。
そのように考えると、記憶を蘇らせるような起点を伏線として張っておくのがいいのではないか?とそんなことを考えたが、ちょっと打算すぎかもしれない。偶然性に間口を開けておきたい。
昼食:手打ちそば 東風
ちょうどお昼どきに到着したので、松江駅近辺で昼食にすることにした。島根といえば、「そば」というイメージがあったので、松江駅から南へ歩いて15分くらいのところにある手打ちそば 東風さんに入った。
12時前くらいにお店に入店したのだが、すでに席は満席で、地元の人にも愛されている人気店のようだった。
一人だったため、すぐにカウンターの席が空き、席についた。
天ぷら割子そば(十割)とハートランド小を注文した。
写真にも少し映っているが、紫陽花が生けられており、とても綺麗だった。
何気に十割そばを初めて食べたので分からなかったのだが、意外とそばの風味はあまりしなかった。その代わり、のどごしが良い気がした。言葉で表現できないが、何か不思議な美味しさだった。
また、天ぷらがめちゃくちゃ美味しい。食材自体も美味しいのだが、衣、塩まで美味しい。
最後は、蕎麦湯で締めて大満足だった。
街並み
昼食後、手打ちそば 東風さんから北へ歩いて、チェンマイへ向かった。
どうやら、僕は川が好きらしい。
チェンマイ
2.6km の道のりを約40分かけて歩き、汗だくでようやくチェンマイに到着した。
まず驚いたのは、店構えが強烈な異彩を放っている。
おそらく、初見の人は入ろうという勇気すら湧いてこないかもしれない。
僕は勝手に「これは試されているな...」と感じた。
店主に「中に入ってくる勇気があるなら、来てみさない。」と。
ある意味、本当に知りたいという好奇心とそれ相応の覚悟がないと入れない、言わば敷居を設けているのではないか。そう勝手に思った。
店内に入るとカランカランと鈴がなり、誰かが入ってきたことは分かるようだったが、目の前に広がる光景に圧倒され、しばらく奥に進めなかった。
店自体は奥行きもあり、そんなに小さいというわけではなさそうなのだが、とてつもない量の商品が置いてあり、気をつけないと壊してしまいかねない圧迫感なので、注意されたい。
奥に進むと、店主のおっちゃんと挨拶を交わす。
と同時に、僕が背負っていたリュックを置くように促された。
(リアルにリュックは降ろしましょう笑)
その後、僕は店内を2周ほどグルッと周るのだが、その間無言の時間が過ぎる。
すると、僕は店の一角にあった お香コーナーが気になった。箱の上から匂いを嗅ぐと、かすかに匂いがして、仏壇に供える日本の線香と似て非なるものを感じた。
でもなぜ、お香が気になったかのだろうか。
後付けになるかもしれないが、再び大学院生時代の話である。
当時、所属していた研究室には担当の先生とは別にもう一人教授が在籍していたのだが、その先生が集中モードに入ると、お香を焚き、教授の居室から廊下に匂いが漏れ出すのが有名だった。
お香といえば、このエピソードくらいしかないので、何かそういう取っ掛かりが土台としてあったのかもしれない。
話を戻して、お香については全く知識がないので、店主のおっちゃんにあれこれ質問してみた。
「コーンタイプとスティックタイプの違いは何か?」
「どのような道具が必要か?」
「どの匂いがおすすめか?」
などなど。
すると、とても親切に「最初はこれがいい」とか、「売れ筋はこれだ」とか教えてくれた。最初はちょっと怖かったが、話してみるとめちゃくちゃ優しかった。
僕は、結局お香を焚くための木箱と、コーンタイプとスティックタイプのお香を2種類ずつ購入した。
会計する段になり、「実は...」とここに来た経緯を伝えると、そこから話のトーンが一気に上がった。
ここでは詳細なことは秘密にするが、最後に「来てくれて、ありがとうね〜」と言われた。それだけで、こちらも来て良かったと思えた。
話の中で印象的だったのは、このお店が今年で36年目ということ。この36年という長い月日の中で、誰かと出会い、この場所が今も誰かの居場所になっていると感じた。
誰かの記憶とともに、お店が長く続くことで居場所(思い出)にもなりうる。そういう場所があるのは、素敵だなと思った。
また、このお店があったことで、めぐりめぐって僕に影響が及んでいる。
これは本当に凄いことである。
僕もそういう場所を作りたいなと感じたのである。
その後、おっちゃんから「日御碕がお勧めの観光スポットだ」と教えてもらったのだが、現在地盤が崩落しているとかで通行止めになっているらしく、今回は断念することにした。
P.S.
おっちゃんの言葉が「ちょる」で終わるので、島根にも方言があるんだなと知った。
松江城
おっちゃんから親切に道まで教えてもらい、次に松江城を目指した。
僕は静岡県に住んでいた際に、山城を攻めまくっていた時期がある。なので、城に関しては若干の知識がある。
松江城といえば、日本でも数少ない「現存天守」である。だからこそ、一度は見てみたいなと思っていたのだが、満を持して機会に恵まれた。
松江城の天守閣は、異様なオーラを纏っている雰囲気を感じた。それは、おそらく他の城とは異なり、年数の経た時代を超えた木を使っていることに由来するのではないだろうか。
また、城内も必要最低限の展示品に留められており、当時の城の遺構を楽しめる造りになっているのが良かった。
島根県立美術館
松江城を堪能し、南へ下り島根県立美術館を目指した。
この日は、生憎の天気で曇り時々雨だった。どうも、宍道湖の夕陽が綺麗なようだったので海岸沿いを歩いてみたが、時間的にも天気的にも夕日は見れなかった。ただ、宍道湖は綺麗だった。
Google マップには Open と表示されていたが、到着してみると休館日だった。Oh my gosh...
気を取り直して、宿泊予定の玉造温泉まで移動することにした。
玉造温泉
翌日は出雲へ行くので、松江の途中にある玉造温泉街に宿泊することにした。松江からだと JR で10〜15分くらいで移動できた。
駅からはバスが出ていそうな雰囲気はあったが、待つのも面倒くさかったので、再び25分くらいかけて歩いた。
道中、川が流れており、川沿いもおじさんたちが雑草を刈っており、綺麗に整備されていた。また、温泉街では足湯できる場所も設営されており、平日ということもあってか、のどかな場所だった。
宿:温泉ゲストハウス 翠鳩の巣
今回の宿は節約も兼ねて、ゲストハウスに泊まることにした。名前はゲストハウスと付いているが、ガチゲストハウスではなく、セミゲストハウスくらいの感覚だった。
玄関のところで若い女性スタッフの方と出くわし、そのまま受付してもらった。若干だが、モモコグミカンパニーさんに似ているなと思った。
説明を受けていると、館内はお茶、水が飲み放題。コーヒーだけ1杯100円という仕組みだった。周りにはコンビニは全くないので、とても助かった。
トイレは1階に1つしかなかったが、この日は宿泊者が少ないとのことで全く問題なかった。お風呂も同様に4名までの人数制限があったが、僕が入浴する時は貸切状態だった。
部屋は今回ドミトリータイプを選択したので、ベッドがドカンと1台置いてあるのみだった。これで十分である。
温泉
宿に到着したのは夕方だったが、猛暑の中を歩き回ったので、早速温泉に浸かることにした。
温泉は4名制限なので、最低限の大きさしかなかったが、僕にとっては十分な大きさだった。外の景色は見られないので、どうしても見たいという方は別の旅館へ。
温泉に浸かると、表記にもあるように肌がすべすべになった。お湯の温度は肌感覚で42〜43℃と少し熱めだった。
また、温泉に浸かると腸内環境が改善するという論文も出ているそうだが、豊富な種類のミネラルが肌の内部に浸透し、腸内細菌の活動に必要なタンパク質の補因子として働くのかな?と化学的考察をしてしまった。
夕食:若竹寿司
温泉街には何ヶ所か夕食を食べれるところがあるようだったが、僕はお寿司の気分だった。それは、「すし」の看板を見つけてしまったからだ。
宿から5分ほど歩いたところで発見し、ガラガラタイプのドアから入店した。そして、カウンターに座り、上にぎりとビール中瓶を注文した。
店内を見回すと、西田敏行さんだったり著名な芸能人の色紙が数枚飾られていた。お寿司の味については、画像の通りで文句なしだった。
写真に収め忘れたが、しじみの味噌汁と玉子2巻も平らげた。
その後、宿に戻り、再び温泉に入り贅沢な1日を終えた。
To be continued...
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