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星に願いを、そして手を。

今日は久しぶりに最近読んだ小説について書きたいと思う。

青羽悠さんの「星に願いを、そして手を。」

青羽悠さんは僕の3つ上で2000年生まれの22歳。

6年前にこの小説で「第29回小説すばる新人賞」を受賞した若手の小説家だ。同賞の受賞で彼が歴代最年少記録を更新した。

あらすじは以下の通り。

中学三年の祐人は、いつも薫、理奈、春樹とプラネタリウムのある科学館で過ごしていた。宇宙に憧れる四人は似た夢を持ち、同じ高校に進む。だが、月日が経ち、祐人は逃げた。夢を諦めて町役場で働く彼は科学館を避け、幼馴染の三人をも避け続ける。ところが、館長の訃報を受けて三人に会うことに。そこで科学館の閉鎖を知り……。瑞々しい筆致で描かれる青春群像劇。

星に願いを、そして手を。/青羽悠/2019年02月/集英社文庫

まず青羽さんが高校生の時に書いたというのに驚く。

人の生き方に正解がないからこそ、それぞれの立場で、それぞれのタイミングでやり直せるし、また前を向いて進める。そんな青春時代と社会人になってからの登場人物たちの成長と変化を物語を通して読み取ることができた。

ずっと同じ登場人物の視点で描かれていないところがまた面白い。各章の中でそれぞれ別の語り手がいる。祐人、薫、理奈、春樹をはじめ登場人物たちのそれぞれの視点で心情が語られるのでそこも魅力の1つだと思う。さらに現在と過去を行き来する点も印象に残った。

宇宙、星という大きなテーマが科学館を通して描かれているので少し僕には読み取りが難しい部分もあった。それだけ青羽さん自身の幅広い知識と経験が積み込まれているのかなと感じる。「夢」を描き、追うかどうか悩む。そして追い続けた人間と諦めてしまった人間が集まる。互いに認め合い、分かり合える仲間ってやっぱり必要だなと思うストーリーだった。

最後に印象に残った部分を引用したいと思う。

目の前を人々が通り過ぎていく。そこには、やはり様々な分岐があり、選択があり、そしてその末の姿がある。一体どんな大人になるのだろう、そんな期待と不安を胸に秘める子供たち。子供の頃に想像していた将来の自分の姿とは、何だか違うみたいだと思う大人たち。誰しもが、知らず知らずのうちに何かを選び、何かを諦めていた。それでも僕は敢えて言おう。僕らは、僕らの道を、どこかで信じて進んでいるのだ。

星に願いを、そして手を。/青羽悠/ (p157)

今年も残すところあと2日。2023年が近づいている。

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