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もしも、太川・蛭子のバス旅を村上春樹が書いたなら。

課題図書「海辺のカフカ」村上春樹(新潮文庫)

 ハードカバーで出版されたのは、2002年だったはず(記憶の中では)。当時専門学校1年生で、夏休み中にファストフード店でコーヒーを飲みながら読んでいた自分をなぜか鮮明に覚えている。

 だが、本の内容は完全に忘れていた。ただ覚えていたのは、田村カフカ君が家出をしたのと、カフカ君が夜行バスでであった女性の滞在先に宿泊した際に、手コキで抜かれたこと(もちろん後者の方が記憶に残っている)だけだったかな。スケベな自分に反省するのみ。

 そのとおり、村上春樹作品は過度な下ネタ要素が沢山出てくる。彼はどこから、その時代の性文化を入手し、アップデートするのであろうか。それは、彼のどの作品を読んでもそう思ってしまう。

 今作品も、同時並行で違う話が進んでいくのだが、クライマックスに向けて、その物語が関連性があったと気がつく点では、青豆と天吾の物語がパラレルで続く「1Q84」に似た構成となっている。今作品は、

①田村カフカ君の家出の模様のドキュメント。
②猫と話すことが出来るおじさんと、途中で出会った青年との珍道中。

 特に、②に関しては、個人的には、「太川陽介と蛭子能収の路線バスの旅」を彷彿とさせるような、おじさんと青年の、滑稽な旅の道中で、そんな感じが伝わり、ツボにはまってしまう。

 クライマックスに関しては、村上作品にしては、さっぱりと明瞭に物語の終わりが分かる。これは、再読してみて気がついた。彼の長編作品の中では、村上春樹作品はどれから読むべきか、と彼の作品を知らない人には、この作品を推したい。

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