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【小説】0.プロローグ|百合カップルを眺めるモブになりたかっただけなのに。

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本編

0.突然の死

 走馬灯って本当にあるんだ。

 死の間際、佐々木ささき小太郎こたろうはそんな身も蓋もない感想を抱いた。
 決して長い人生ではなかったし、特筆するようなことは何一つしてないけれども、それでも人並に思い出くらいはある。

 中学生の頃、漫画をよく読むようになった。高校生にもなると、百合という一大ジャンルが存在していることに気が付いた。そして、大学生にもなると、ちょっとした「百合オタク」と化していた。

 毎月のように発売される漫画やライトノベル。更にはゲームにアニメ。果ては小説にまでも手を広げて、ちょっとでもそういう描写を見つけては妄想を膨らませる毎日だった。

 だから未練と言えば来月発売の「あの約束を永遠に」をプレイできないことくらいだろうか。あんなに力の入った作品は久しぶりに見たし、きっとそれはそれは素晴らしい出来だったんだろう。ああ、惜しかった。でも、死んでしまったならしょうがない。輪廻転生なんて概念は全く信じていないけれど、願う事ならば来世でも百合というジャンルが存在する世界に生まれ変わりたいものだ。

 別に人間である必要はない。なんだったらカップルの間に存在する空気でもいい。いやむしろ空気がいい。空気しか勝たん。うん。そうだ。空気がいい。神様がいるのかは分かりませんが、どうかお願いします。百合ップルの間に漂う空気に生まれ変わらせてください!パンパン!

 なんてことを考えていたらいよいよ意識が遠くなってきた。トラックに轢かれたというのに随分としぶといもんだが、人間と言うのは案外そういうものなのかもしれない。

 痛みも感じないけど、まあそんなこともあるだろう。もしかしたら、あの世とこの世の境目なのかもしれない。うん。きっとそうだ。それでは皆さん、また来世。

 暗転。

 この番組は一迅○の提供でお送りしました。

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