【小説】幕間Ⅵ|百合カップルを眺めるモブになりたかっただけなのに。
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本編
視察
「へぇ……ここかぁ、“思い出の公園”っていうのは」
正直言って最初の印象は「地味」だった。まあでも、そんなもんだよね、思い出って。何の変哲もない公園とか、お店が、そこで体験したこと次第でいくらでもその趣を変えるんだ。そう、思い出の場所になったり、
トラウマの場所になったり、ね。
「にしても不思議なもんだなぁ……途中で設定弄ったせいなのかな?それにしてもこんなに綺麗に一緒の場所になるなんてことがあるんだね」
そう。あの男は最初の時点で、設定を弄らせた。
結果として、隣に住んでいる幼馴染と一緒に登校するっていう設定はなくなって、代わりに九条虎子と牛島美咲っていう幼馴染が出来た。
いや、違うな。それだとちょっと間違ってる。
より正確には“そういう世界に移動した”んだ。
その影響かは分からないけど、結果としてこのなんでもない公園は、虎子と美咲の思い出の場所になったってこと。
「ここ。その公園って言うのは」
「へぇ…………」
ん?
聞き覚えのある声だ。誰だろう。
「地味でしょ?華ちゃん」
「え?いや、そんなことは…………はい」
お。
これはこれは。主人公のお出ましじゃないか。
ここに連れてこられるなんて、きっと凄く信頼されてるんだろう。でも、そうなると、やっぱりそれは、
壊したく、なっちゃうよね。
「ふふっ……」
まあ、いいや。見るものは見たし、帰ろう。後は、もうちょっと今の感じに慣れないとな。あの子はしょっちゅう観察しにいってるから慣れてるみたいだけど、私はそういうことしないしね。そもそもそれは私たちの管轄じゃないし。
「…………?」
おっと。華がこっちを見てるじゃないか。なかなかに目ざといね。これでも大分“存在感は落とした”つもりなんだけど。
ま、だからって何が起きるわけじゃないんだけどね。その証拠に、ほら。すぐにお友達の方に集中しちゃった。そうだ。それでいいんだ。今はそうやって楽しい日々を送っているといいよ。まあ、それも束の間の幸せなんだけどね。
「人間には試練が必要。だよね?」
そう。
人間にはもっと試練が必要だ。
そうじゃなきゃいけないんだ。私は正しくて、あの子は間違ってるんだ。そうでないとおかしいんだ。
「今に分からせあげるからね♡」
くふふっ。
さあ、今度はどんなことをしてあげようかな、楽しみだ。
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